第3話

隣のおばさんの姿を見なくなってから

随分と日が経った



本人は否定したが

どうやら今流行りの病に罹ったようで

数ヶ月間入院していたという噂が流れた



久しぶりに見かけたおばさんは変わり果てた姿をしていた

痩せ細り杖をついてよろよろと歩いていた



悪趣味な近所偵察もできないくらい元気もなくなり

表で姿を見ることもなく

ほとんど声も聞かなくなった



久しぶりに顔を合わせた時に

「お久しぶりです

こんにちは」

と笑顔で挨拶した



おばさんもニコニコしていた



とにかく

笑顔を見せておかないと

嫌われようにしないと



土地が手に入りやすいように

仲良くしておく必要がある



私には隣の古ぼけた家屋はもう見えていない

瑞々しく樹々がしげりカラフルな花々が咲く

素晴らしい庭とガレージが透けて見えているのだ



あの杖が使えなくなるまで

もう少し

歩けなくなるまで

もう少し



そう思いながら暮らす日々に懺悔する良心は全く無い

心は無である















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