深き眠りの果てに・・・

オレッち

scene 1

1話 目覚め

「……ん」


 ゆっくりと少年のまぶたが開く。


 目を開くと明かりが指すのかと思いきや、開かれた視界も薄暗い。


「んぁ‥‥一体……」


 何故目を閉じたのかも、真っ暗な部屋にいるのかも分からない。


 ただ分かるのは、自分がさっきまでいた“教室”は電気は点いており窓から外を見ればシャワシャワとセミが鳴く真夏の風景が広がっていた事だ。


「なんで俺寝てたんだ……?」


 そう呟きながら起き上がろうとする少年。


 だが、起き上がろうと手に力を入れた少年には何か不可解な感触が手から脳まで伝わった。


「は?何この滑り‥」


 誰かが教室の床に何かこぼしたのか・・・・。


 そんな考えを頭の中で巡らせながら、まだボヤけ霞む視界の中ジッと手に伝わった感触の正体を暴こうと目を細めながら見つめる。


「……え?」


 その“滑り”は手だけでは無く、彼の制服にも点いていた。


 しかも寝ぼけていたのか、さっきまでは気づかなかった異様な嫌悪感を誘う鉄臭さが鼻をツンと刺激する。


「なんっだコレ……」


 制服にも点いた滑りのある液体に慌てながら少年は慣れてきたのか暗闇の空間をぼんやりと見えてきた。


 そしてすぐに自分の手や制服に点いた液体が何であるかが分かる。


「は?血?」


 手や制服にベッタリと付着していた液体の正体は赤黒く染まった“血”。

 しかもそれは自分の周りの床にも広がっていたのがわかった。



 最初に自分の身体のどこか怪我をしたのかと思い身体中くまなく触ったりして確認をしてみるが、どこにも異常は見られない。


 むしろちょっとした擦り傷程度で無傷に等しい程だ。


「俺じゃない。じゃあ一体誰……が……あ」


 視線を自分の身体から上げて行き前を向くと、其処には何かがあった。


 其処には何かが置いてあり、少年が目を凝らしながら見る。


 海の様に広がる血。


 そして、その広がる血に転がる様に物体に目が行くと少年の目が見開くと身体全身から血の気が引いた。


「あ、あぁ……あぁぁぁぁ!!」


 転がっていた物体は人間。


 正確に言えば人間“だった”モノだった。


 その顔には見覚えがあった。


 ついさっきまで夏休みの話をしていた友人の顔。


 だがその友人の口や鼻、また目からは血が流れ出ており既に息絶えている事が分かる。


「な、なん、で……!!?」


 ガチガチと歯を震えさせながら言葉を漏らす少年はもっと周りを見渡し視界を広げてみると、その友人には本来あるはずの両腕や両足が無かった。


 そして友人だけでなく、そこにはクラスメイトだったであろう生徒の身体の一部や臓物ぞうもつなどが散乱していたのだ。


「う……うぷっ……!」


 その瞬間、少年の体内の底から耐えきれずこみ上げてくるモノが口から吐き出された。


「おぇっ……おぇぇ……がはっ‥‥かはっ‥‥」


 胃の中の物を全て吐き出した少年の目には涙が浮かび、この現状に頭の中は混乱を巻き起こしていた。


(なんだ、この異様な空間は どうして、こうなったんだ……)


 この狂った空間は夢なのか、なんなのか。


 もし夢であるなら覚めてほしい。


 だがこれは“現実”だった。


 そしてこの空間に残された少年、成神海斗なるがみかいとが考えたのはただ1つだった。


(この空間から出る)

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