捨て猫物語

@N_Y_P_D

第1話

【AD1100年、曙光都市エルジオン・エアポート】

 

山積みのコンテナを前に、探し物をするエイミ。


エルジオンでの用事を済ますついでにイシャール堂へ立ち寄ったアルドとエイミ、サイラスの3人は、

店主であるザオルから彼の発注した品物の回収と、新しく作る武具の作成に必要な素材収集を頼まれていた。


エイミ

「まったく…久しぶりに家に寄った途端、こんな雑用押し付けるなんて……人使いの荒い親父なんだからもう……。」


エイミ

「えっと…ザオル宛の物は……あった、これね。」


 届け物の詳細を見てみる。


エイミ

「ふぅん…?一般的なドローンの耐久強化用パーツが主みたいだけど、何か妙な物まで混じってるわね……。」


エイミ

「こ、これって“トト・ドリームランド”で暴走した機械が付けてたやつ…!?まあ、私たちも素材として使ってはいたけど……あの親父、また変な物作る気じゃないでしょうね……。」


エイミ

「前はカニみたいな形のグローブ作ってたし…勘弁してほしいわね……どんなに強力でも、あんなの恥ずかしくって付けてらんないわよ……。」


エイミ

「まあいいわ、とりあえず持って帰ってやらないとね。」


エイミが1つため息をつくと、近くから男の声が聞こえてきた。


???

「おーいエイミ!こっちは全部集まったぞ!」


エイミ

「アルド!早かったわね。こっちも今荷物を見つけた所よ。」


アルド

「よし、じゃあザオルの親父さんの所へ戻ろうか。」


エイミ

「ええ。」


エルジオン・エントランス行きのカーゴシップへと歩き出す2人。


「……ミャ~…………。」


エイミがふと立ち止まる。


アルド

「どうしたエイミ?」


エイミ

「今、何か聞こえなかった?」


アルド

「う~ん……どうかな。」


エイミ

「鳴き声みたいな……」


「…ミャ~…………。」


アルド「あ!」


エイミ「やっぱり!こっちの方だわ!」


先ほど荷物を探していたコンテナの方に急いで戻る2人。

辺りを調べるとそこには…


エイミ

「こんなところに……猫…?」


アルド

「猫だな…。かわいそうに…こんな小さい箱に入れられて……。誰がこんな事を…。」


エイミ

「でも首輪を付けてるわね。……待って、首輪に何か書いてあるわ。」


《ミロ》 《拾ってあげて下さい》


アルド

「この猫…捨てられちゃったのか……ミロって、この猫の名前かな。」


エイミ

「しかも拾って下さいって…まるで他人事じゃない!…許せないわ!」


アルド

「ああ…でも、どうする?この猫、ここに置いておくわけにもいかないし…。何なら、後でバルオキーに連れ帰って…」


エイミ

「決まってるでしょ!元の飼い主を探し出して、ちゃんと最後まで面倒見なさいって説教して猫を返してやるのよ!」


アルド

「え、ええ!?まあ、それは正しい行いだとは思うけど…見つかるかな?」


エイミ

「見つけるの!きっとエルジオンの住民がここまで来て捨てて行ったに違いないわ!さあ、戻るわよ!」


猫を抱え走り出すエイミ。


アルド

「わっ、ちょっと待てってエイミ!親父さんの荷物は!?」


エイミ

「そんなの後、後!」


アルド

「いや持って行かないと!…………うわっ、この荷物結構重いな…俺が運ぶ分もあるのに……」


アルド

「エイミ!待てって!とりあえず先にこの荷物を親父さんの所に持って行こうってば!」


アルドの呼び掛けも虚しく、エイミは1人先にエントランス行きのカーゴシップに乗って行ってしまった。


アルド

「エイミまさか……これを持って行きたくないだけなんじゃ……。仕方ない、俺1人で何とかして持っていくか…。」


アルドもエイミを追いかけ、イシャール堂へ戻るためカーゴシップに乗った。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る