雪の影
カワベ
第1話 雪の季節
初めて見つけたそれは、濃い緑というか、淡い黒というか、こうなんと言うのか分からないけれど、人間に配慮の欠けたような色をしていて、侮辱するかの如く、堂々と立派に5歳になる私の背丈ぐらいの高さまで生えている草が祖父母の家の裏庭に生えていました。
今まで私は、道や公園に生えている草や花を度々、口に入れては父と母を困らせていました。けれど、そこに生えているものを口に入れる気持ちになれないのは、私が草花を美味しくないと経験から理解した訳でもなく(味を楽しむために元々食べていない)、こころが成長して、草花に興味を失った訳ではありません。ただなんとなく、口に入れるのを躊躇いました。だけれど私の好奇心を抑えることが出来ずにその草を毟りとり、最近産まれたばかりの妹の「アヤコ」に食べさせてあげることにしました。、父と母は、外出しており、祖父母しかいなかったため、アヤコに草を食べさせてあげることは容易でした。祖父母はきまって昼寝をすることを知っていた私はそのときが来るまで、コタツの中で草を握りしめ、じっと待ち続けました。高ぶる気持ちを秘めたまま行う塗り絵に、色の配色など考える余裕などはなく、紙の中のシンデレラが悲しそうに踊っているのを私は見ないふりをしていると、ようやく2人とも眠ったことを静かに確認をして、アヤちゃんの口の中に草を入れました。
私はアヤちゃんが泣き虫だと知っていたから、泣かないか心配だったけれど、とってもかわいく笑ってくれました。でもなんだか食べづらそうだったのでちっちゃくちぎってあげました。そうすると、飲み込んでくれました。私の気持ちはもう収まったので、塗り絵の続きをまた、始めて、いつの間にか私も眠っていました。
あれから5年が経ちました。雪が降り出すとこのことを鮮明に思い出すので、毎年毎年アヤちゃんに尋ねます。
「アヤちゃん、草食べたとき、どうだ?」
だけどいつも惚けた顔をして
「覚えてない」という期待外れな返事しか、してくれません。
去年は「さっさと思い出せよ」と怒鳴ってしまって泣かせてしまったので、今年は笑って誤魔化しときました。
雪の影 カワベ @pirorinko
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