第7話 隣に鬼化した佐奈がいる件
何でよりにもよって、変な所でモテ期が来るのか。
昼休み。年下彼女がいると伝えているにもかかわらず、同じクラスの強引女子たちに引っ張られ学食に向かっている。
そんな俺たちのすぐ真横を歩いているのは、冷笑する佐奈と驚いている後輩女子たちの姿。
もしかして俺は、今日中に寿命が切れるんだろうか。
学食に着くまで針の
そして、数秒後さらに戦慄の瞬間が訪れる。まさかの隣のテーブル席から佐奈の声が聞こえて来たからだ。
「あっ! しゅんぺー――ちっ……」
それと同時に、妹の舌打ちが俺の耳に届けられた。
絶対モテ期には思われないほどの女子の固まりの中心に俺があって、佐奈はともかく、周りの後輩は誰も目を合わせていない。
そんな女子たちは、よりにもよって佐奈が座っているテーブル席の隣に陣取った。
俺は呆然としながら、席に座ることがなかなか出来ないでいる。
「琴平。いつまでもそこに突っ立ってないで、ここ座りなよ!」
「え、で、でも……」
「大事な話があるし、あるから誘ってるわけだし?」
「そうそう、この期に及んで女々しくない?」
「ウチら端に座るから、琴平は真ん中ね!」
「「うんうん、そうしよ!」」
未だ自己紹介すらされていない強引女子たちに促され、俺は言う通りにする。
真ん中の席に座ると見事に女子の壁が出来ていて、佐奈の姿がまるで見えない。
――というか、『君付け』から『呼び捨て』に格下げされてるんだが。
俺の扱いはそんなもんか。
「琴平。フリーならさ、ウチらとお試し期間設けてみない?」
「……何が?」
「にっぶい!! だからぁ、ウチらフリーなわけ。で、琴平もフリー。本気にならなくていいし、むしろなられても困るんだけど……付き合ってみないかって意味!」
「な!? どういう――」
俺が動揺するよりも先に、隣から『ガタン』という危険な音が聞こえて来た。
これは恐らく、驚いた佐奈がコップを倒した音に違いない。
頼むからこれ以上佐奈を刺激しないで欲しいものだ。
しかしどうやらこれは、モテ期でも何でも無いことが分かった。
元々その気も無い俺だが、むしろこの、人の話を聞かない女子たちに佐奈との仲を見せつけてやるのもありかもしれない。
そう思って立ち上がろうとすると、先手を取られた。
「すみません。隣のセンパイたち、声大きくないですか? 正直、迷惑なんですけど? それと、真ん中の男の子いじめてるんじゃないんですか?」
おおぅ。俺を助けてくれるのか。
兄で年上なのに、男の子呼ばわりされるのは微妙ではあるが、成り行きを任せてみるのもいいかもしれない。
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