第30話 拳闘王への仕返し①
自然公園ーーユウトが暮す場所であり、様々な理由から故郷を終われた人達が、新たな生活する場所として移住者に人気があった。
しかし数年の時を経て、年々拳闘王国とサマーソルト王国の領土侵略は進み続けており、自然公園にもその魔の手が伸びようとしていた。
最古参の守り手ユウトーー自然公園の村での厄介事や害獣退治などを引き受けている、顔役兼用心棒のような存在である。
村長の家で村人達が集まり協議をしていた。なぜなら、拳闘王国からもサマーソルト王国からも自国に組みせよと手紙が届いたからだ。近々両国で戦いがあるのだろう。
どうすれば良いのだろう。
重苦しい雰囲気の中で、ユウトは意見を言う。
「まず第一に国力、人員全てにおいて我々は両国に負けています。最善策は、どちらかの陣営に着くことでありますが、そうすると、問題が一つあります。髪型統一制度がある為に好きな髪型に出来なくなります」
拳闘王国では男性は基本坊主である。
男子たるもの全て拳闘士になるべく、坊主にされている。
一方のサマーソルト王国では男性は基本前髪を揃えた、黒髪のサラサラロン毛ヘアーである。
男子たるもの全てサマーソルト士になるべく、統一の髪型を推奨されている。
『変な髪型の強制は嫌だ』
村人達は皆顔を顰めて、反対する。
髪型かよ!!
もちろんユウトもその意見に賛成である。
実はユウトには、拳闘王より直接密書まで届いていた。
「元拳闘王国出身のユウトよ! 賞金首をやめて欲しくば、我が陣営に付き、村人を扇動しろ」
ふざけている! 何が我が陣営に付けだと? お前には追放された挙句に、賞金首に勝手にされて命を何度も何度も狙われている恨みがあるんだぞ!
様々な意見が出揃う中で村長のエドガーさんが口を開く。
「両陣営のどちらにも付きたくないという皆の意見はよく分かった。しかし我々の中で戦える者は僅かしかおらぬ。戦闘のスペシャリストであるユウト殿の案をまず聞きたいと思う」
皆の視線がユウトに集まる。
「まず初めに、一番最悪なパターンは拳闘王国とサマーソルト王国それぞれが個別に、自然公園に進軍してくるケースであります。絶対に両国を戦争をさせる為に我々は...」
ユウトの作戦を聞いた村人達は、どうやらユウトの作戦に従うようである。
こちらも、戦争経験のある者を一定数揃えて準備をはじめる。
二ヶ月後、自然公園から約一キロ離れた草原に、大軍が集結した。西に陣を置いたのはサマーソルト王国軍約八千に対して、東に陣を置いたのは拳闘王国軍約一万余りである。
ユウトは拳闘王に対して、返信の密書を送っていた。
「今更拳闘王国の陣営につけだと? 頭おかしいだろ貴様! まずは戦場でたっぷりと復讐をさせて貰おう。首を洗って待っていろ」
そして、ユウトはサマーソルト王に味方に付く旨ね返信を出した。
自然公園村軍約二百名と魔法王国軍二万(すべて魔法士)が南の丘に陣取る。
何故魔法王国軍がいるかって?
ユウトは魔法王に泣きついたのである。
すると、魔法王も、昨今の拳闘王国とサマーソルト王国の動きに警戒しており、二つ返事で大軍が集結したのだ。
『魔法王より受けた任務はただ一つ...』
ユウトの拳闘王国への侮辱した返信で、
拳闘王国軍はサマーソルト王国軍よりも多くの兵士を用意した様だ。
東側の陣の拳闘王国軍は、十×五十の連隊を二十隊作り、鶴翼の陣形をとる。
それに対して、西側のサマーソルト王国軍は魚鱗の陣形をとった。
軍勢を広げて、包囲殲滅を図りたい拳闘王国軍に対して、援軍を信じて中央突破を図るサマーソルト王国軍である。
「ブォ〜」
戦いの火蓋は切って落とされた。
拳闘王国軍は、左から奇数番目の兵士が一歩下がる。つまりこんな感じである。
○ ○ ○ ○
○ ○ ○ ○ ○
これにより、兵士は前後左右にゆとりが出来る。何故そんな必要があるかというと、拳闘士は殴るだけでは無くて、投げ技や掌底技などもあり、味方と距離が空かなければ、同士討ちになるからだ。
拳闘王国軍は、正拳突きをしながら前進するーー太腿辛そうである。
それに対して、サマーソルト王国軍は
最前列が空中回し蹴りを叩きこむ。
ユウトは南からその様子を見ていたが、
武器を使ってないあたり、何かの武闘会の劇にしか見えない。
どうやら陣形の違いと返し技に長けている、拳闘王国軍が優勢の様である。
ユウトはジジとバニラを伴い、拳闘王国軍の横から三名で突撃を試みる。
ユウトは、まず吟遊詩人のままバフとHP徐々に回復の曲を味方にかける。
そして、ロックスターにジョブチェンジである。
金髪チャラ男は銀髪ロッカーに変わる。
「俺の歌を聞け〜」
ユウトがギターを弾きながら、仕込み刀を振るえば、拳闘士がバタバタ斬られていく。
レベル差が圧倒的に違うのである。
更にジジが闇魔法ダークファイアを連発して、闇の炎が拳闘士を消し炭にする。
バニラは味方のHPの調整に回った。
ユウト達は何度も何度も拳闘王国軍を殺しながら、横断していく。拳闘王国軍の精鋭が対処に来ようが、関係ない。
レベル差は実に三倍あるのだからーーつまり駆け抜けながら斬りつければ、敵は必ずバタバタ倒れていく。スピードの桁が違った。
「戦ってみた感じこの程度なら...」
ユウト達は拳闘王国軍が劣勢になると、南の本陣へ戻り、戦争をまた見守る。
何故なら、ある理由により、サマーソルト王国軍が勝ちすぎるのも駄目だからである。
ユウトが居なくなり、数刻時が経つと、
再び拳闘王国軍が息を吹き返す。
またサマーソルト王国軍が劣勢になる。
ユウトは、今度は村人と魔法王国軍に指示を出して、弓と魔法を放たせる。正直、前衛をユウトが受け持てば、楽勝の戦いである。
ユウトとジジとバニラはこちらに向かってくる拳闘士達を迎撃しつつ、弓と魔法を放たさせながら前進した。
拳闘王国軍は、サマーソルト王国軍とユウト率いる自然公園軍と魔法王国軍の兵力に挟み撃ちにされて、徐々に後退していく。
そろそろ両国は死傷者が四割を超えてきた。戦争も潮時である。サマーソルト王国の勝ちが確定した。
すると、ユウトは魔法王国の魔法士達に命令して、拳闘王国軍とサマーソルト王国軍の両方に魔法を放たせる。
『ファイアーアロー』
ファイアアローそれは確かに初級の炎の矢で威力は小さい。
しかし、二万もの魔法士から一斉に放たれ、連射されたら、それは凄まじい威力になるーー草原は火の海と化して、拳闘王国軍もサマーソルト王国軍も壊滅状態になり、尻に火が付いた状態で敗走した。
魔法王の依頼ーー拳闘王国軍もサマーソルト王国軍も壊滅させろである。
自然公園と魔法王国軍の漁夫の利作戦で、
我が軍は大勝利に終わった。
「はっはっは!ざまぁねぇなぁくそ共...」
はい! 一個目のざまぁ完了である。
やられたらざまぁ仕返す! 千倍返しだ!
「てめぇら自国に戻ったら伝えておけ、
自然公園はてめぇらの好きにはさせねぇ!
それから、拳闘王! 貴様だけは許さねぇ! いつか暗殺してやるからなと」
生き残った無残な敗残兵共はおめおめと祖国へ帰っていったのであった。
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