第15話 ファーガソン君に会いに行こう?

 翌朝、ユウトは教会のベッドで目を覚ました。

机には聖書が置かれていた。

俺は無神論者であるーーアイリス貴様の目論見には乗らないからな!


 聖書を開いてみる。何じゃこりゃ?

一ページ毎に銀貨が貼り付いていた。


 アイリス貴様聖職者の癖に金の力でとは卑怯なり。しかも銀貨を抜き取るのに、

聖書の中身を見なくてはならない。


 聖職者の癖に金を使い洗礼させようとは...

とりあえずこの素晴らし、

けしからん聖書は貰っておこう。


 わ〜い神様ありがとう!

ーーユウトは無事に聖教徒になった。

意外にチョロいなと自分でも思う。



 ユウトは旅の準備を終えて、

馬車に乗り込む。

アイリスとユリウスは見送りに来てくれた。


「どこにいても俺達は友達だからな」


「あーユリウスもちろんだよ」


「ユウト! また遊びに来なさいよ」


「あーアイリス聖書ありがとな」



 三人で握手をして別れた。





 ユウトは馬車を走らせる。

向かう先はファーガソン君のいる花畑王国である。

ハープを弾きながら、花々のもてなしに答える。


 えっ? 

花々はユウトを迎え入れてないって?

そんな訳がない。

ちゃんと花に因んだ歌を歌えそうだ!



 五年もの月日を 魔王に奪われ♪

魔王を倒したが褒美がない♪

ハニーは怒り出す♪ 暗殺者も出てくるよ♪

仲間は幸せだ♪ 俺は無職だけど♪


 ほら見てみろ!

見事な呪いのワルツの出来上がりである。


 えっ? 花が入ってないって! 

しかも風流もない?

そこはファーガソン君にアレンジして貰おう。会いに行く楽しみが増えたよ。


 ユウトは魔法士ファーガソンとは、

そんなに絡みが無かった。


 勇者アダムとは気があったみたいだが、

酒も女もバクチもタバコもやらない優等生君とは、なかなか話が続かない。


 しかし、彼は歌が大好きで、

魔法王国で流行りの歌をよく口づさんでいた。


 俺のロックな歌を歌う事で、

現状報告が出来て、

尚且つ流行りの歌にアレンジして貰える。


 どうだい? この一石二鳥の発想は!

ファーガソン君!君に作詞は任せよう。


 というかここはどこなのだろう。

数日北北東に進めど、花畑しかない。

人もいない。幻の王国か?


 ユウトは花畑王国へは、転移を使い、

パレードで一度連れて行って貰っただげだった為に迷っていた。


 迷いすぎて、懐かしの自然公園まで来てしまった。

自然公園ーー魔王討伐時レベル上げをよくやった場所である。

今も住居跡が残るーーこれなら住めそうだ。


 ユウトはもう一度南へ戻って南進する。

今度はハープを弾かずに、気配を探る。


 ガタゴトガタゴト!

しかし行けども行けども花畑しかないーー何か死後の世界に迷い込んだ様な雰囲気だ。


 遂には、花畑王国の下の、

料理王国に着いてしまった。

旅にもやはり食糧の備蓄が大事である。


 仕方ないので、花畑王国の情報収集と買い物の為、市場を散策した。


「兄ちゃん花畑王国に行きたいのか?

あそこは秘境らしい。

太古の昔に隣国に攻められたせいで、

街が隠れ里の様になってるから、

普通には行けないよ」


 マジか! 私の知り得ない魔法を使い、

結界なんかで覆われているのかもしれないーーファーガソン君の捜索はこの状況下可能なのか?


 魔法王国に行って王宮から、

転移させて貰えるか?

花畑王国ーー魔王討伐で唯一、

直接人員を派遣しなかった国である。


 花畑王国は調べれば調べれる程謎に包まれた国だ。

こんなに探し難いのに、

三大のどか王国の一つなのかは不思議である。


 仕方ないので、

料理王国名物の料理対決を見る事にした。

温野菜王国でもやっていただろって?


 料理王国も世界一の料理職人を決めるのが大好きでよく大会を開いている。

今日の対決は海鮮料理らしい。


 海鮮料理で何故に温野菜王国の料理人も参加しているのかは謎だが折角なので、

温野菜王国の料理を見てみよう。


 海鮮料理対決で温野菜王国の料理人が、

どれだけやれるのか見ものである。


 ☆前菜

〜温野菜のオマール海老ソース添え〜


 色取り取りの温野菜にオマール海老ソースが乗っかり、表面が炙られている。

オマール海老の味噌の風味を引き立たせたい様だ。温野菜メインだからokだな。


 ☆麺料理

〜温トマト入り魚介のトマトスープパスタ〜


 魚介のトマトスープパスタの上に丸ごとトマトが鎮座している。ユウトは温野菜の意地をこの料理に感じた。


 ☆メイン料理


〜丸ごと渡り蟹の温野菜ゴロゴログラタン〜


 渡り蟹の甲羅を器にして、カニと温野菜のグラタンを作り上げている。

これには抗議したい。温野菜メインではないぞと


「温野菜王国の意地はどうした? 温野菜メインじゃないぞー」


 ヤジを飛ばす。温野菜の料理人は素知らぬ顔だ。



 ☆デザート

〜魚型季節の温野菜の七色シャーベット〜


 料理自体は綺麗なシャーベットである。

しかし私は二点ツッコミたい。


「それだと、冷製野菜じゃねーか! しかも海鮮使ってねーぞ」


「やかましいわ! 俺が温野菜料理といったら温野菜料理なんじゃい」


 海鮮料理ではないと認めた〜!?

温野菜王国の料理人は大層お怒りであった。

案の定一回戦敗退だ。ざまぁ!


 満足したユウトは料理王国を後にして、

自然公園を目指す。


 やはり俺には墓地もある、自然公園が住みやすい。

俺は自分の為に強くなる修行をしようと、

心に決めたのであった。


 何か旅の目的を一つ忘れている様に感じたが、

多分美味いモノや素材の買い物とかだよ。きっと!


 ユウトはファーガソン君を忘れて、

買い物を済ませると、

料理王国を後にした。


〜第一部完

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