プロローグ2 教えて! Google先生―主人公視点

 貸金業務取扱主任者


 あまり聞いたことがない資格だった。

 いや、世の中には国家資格なんて沢山ある。

 多分、オレが知らないだけだ。


「教えて! google先生」


 貸金業務取扱主任者で検索してみた。


 すると、検索上位に『貸金業協会』なる団体のページを見つけた。

 クリックしてみる。


『はじめに 日本貸金業協会は、貸金業務取扱主任者資格試験の実施に関する業務を行う指定機関として、内閣総理大臣の指定を受け(平成21年6月)、これまでに15回の試験を実施いたしました……』(貸金業協会『貸金業務取扱主任者専用サイト』http://www.j-fsa.or.jp)


「………」


 そして、『これから受験をされる方』とあるところに貸金業務取扱主任者制度とは』『試験実施要領』『受験申込について』『これまでの試験の結果』『過去の資格試験問題』『資格試験に関するQ&A』という6つの項目が表示されていた(以上PC版。スマホ版は『これから受験をされる方』とあるところをタップすると、上記6つの項目が現れる)。


「まずは貸金業務取扱主任者制度について、みてみるか……」


『貸金業務取扱主任者は、「当該営業所又は事務所において、貸金業の業務に従事する使用人その他の従業者に、貸金業に関する法令の規定を遵守して、貸金業の業務を適正に実施するために必要なものを行わせるための助言又は指導を行う」とその役割が定義されています。(貸金業法第12条の3第1項)』(貸金業協会『貸金業務取扱主任者専用サイト』https://www.j-fsa.or.jp/chief/howto/)


(……法律の規定だけ載せられてもなぁ。具体的にどんな仕事するのか、よくわかんねーよ)


「まぁ、いいや。追々分かるだろ」


 すぐに思考を放棄した。

 だって、就職活動に失敗し正社員として働いたことがないフリーターのオレが、いくら考えたって答えなんか出ない。


 つぎに、上に表示されている『資格試験の受験』をクリックした。


 『試験日程』『試験の実施方法』『出題科目及び出題範囲』『貸金業務取扱主任者資格試験問題』……といった項目が並んでいる。


 まぁ、いろいろ書かれているが、ざっくりいうと、こんなカンジだ。


 ①受験資格 特になし。

 ②試験方法 筆記試験、4肢択一式のマークシート方式。

 ③試験問題数 50問

 ④試験時間 2時間

 ⑤受験手数料 8500円(高っ!)

 ⑥受験申込は個人の場合、日本貸金業協会のHPからするようだ。


「で、50問中、何点取れば合格するんだろ?」


 ここは、オレにとってかなり重要なポイントだ。

 合格基準が8割とかだと、かなり萎える。

 まぁ、だいたい7割程度が相場なんだが。


 『試験の結果について』という項目をクリックする。

 過去の試験結果が掲載されていた。

 前回の結果を見ることにした。


 受験者数は、10533人

 合格者数は、3567人

 合格率は、33.9%

 合格基準点は、50問中33問正解

(貸金業協会『貸金業務取扱主任者専用サイト』https://www.j-fsa.or.jp/chief/qualifying_exam/exam_result/15th/announce1.php参照)


「合格率33.9%って、結構、多くね?宅建士は、もっと少なかった気が…」


 オレの曖昧な記憶では、宅建士の合格率は16%~20%くらいだった。


 合格基準点33点は、まぁ、普通だろう。

 問題を見ないと分からないけど、とりわけ高くも低くもない。

 でも、合格率は割と高めだ。


「むぅ、問題をみてみるか……」


『資格試験の受験』の画面から『貸金業務取扱主任者資格試験問題』の項目をクリック。


 過去問を掲載している画面があらわれた。


「まずは、前回の試験問題をみてみよう。」


 試験問題と正答が、PDFでアップされている。

 貸金業法関係の問題は、まだ、さっぱりわからない。

 とりあえず、宅建士でも勉強したことのある「民法」で、サクッと解けそうな問題をやってみる。


『【問題 28】

 意思能力及び行為能力に関する次の①〜④の記述のうち、民法上、その内容が適切なものをつだけ選び、解答欄にその番号をマークしなさい。

 ① 成年被後見人の法律行為は、その成年後見人の同意を得て行われたときは、取り消すことができない。

 ② 制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、当該制限行為能力者の法定代理人はその行為を取り消すことができるが、当該制限行為能力者はその行為を取り消すことができない。

 ③ 未成年者は、一種又は数種の営業を許されたときは、これによって成年に達したものとみなされる。

 ④ 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。』

(令和2年度『貸金業務取扱主任者資格試験問題』問題28)


 ええと…、確か、成年被後見人せいねんひこうけんにんのした法律行為ほうりつこういは日常生活に関係するヤツ以外は、取り消すことができる、じゃね?

 ①は、アウトォ!

 ②は、そもそも取り消すことができなくね?

 ②も、サヨウナラ~。

 ③は、その営業に関して成年者と同一に扱われるだけで、成年に達したとはならなかったような……。

 はい、③消えた!

 ④は、……2020年4月から施行された改正民法3条の2の規定まんまのヤツか?


 ……とすると、正しいのは④じゃね?


 どやっ?


 解答をみた。


 正解は、……④だった。


「おしっ! もしかして、これイケるんじゃね?」


 首をコキコキと鳴らしながらPCをシャットダウンしたオレは、ベッドにダイブした。


 くるりと身体を回転させて、天井を見た。


「……やってみるか」


 たった1問だけ正解しただけなのに、すっかり気をよくしたオレは、この段階で受験を決意した。


 すでに、過ちも犯していることに気付かずに……。

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