第57話厄介
「な、え……Sランク?!」
「あぁSランクハンターだ。所でここで何が?どこからこのモンスターが?」
推定Cランクハンターに歩み寄ると足元のモンスターを小突きながら聞く。
最初は少し動揺していたが次第に落ち着くと真の質問に答えた。
「分かりません。突如の人混みの中に現れたんです」
「突如……」
「戦っている最中にちらりと見えたのですが何が魔石よような物な割れていました」
「出現場所はどこに?」
「あそこです」
Cランクハンターの指差した方向へ歩くと拳大程のかなり大きい魔石が割れて転がっていた。
手に取ると驚く。
(軽すぎる?!まるで中身に入っていた物が全部抜けたみたいじゃないか!!)
自分達が普段取り扱う魔石とは全く違う感覚に戸惑いを隠せなかった。
魔石とは呼んで字の如く魔力を込められた石、見た目は水晶のような見た目だったりする。
そして見た目に反して
しかし今手に持っている魔石は普通の石と比べても遥かに軽い。
「……この件は俺が預かる。貴方にそのモンスターの経験値をプレゼントします」
「え?!いいんですか?!少なくともBランクに相当する強さのモンスターでしたよ!」
「Sランクのハンターが今更Bランクモンスター1匹にごちゃごちゃ言いませんよ、どうぞ。僕は知り合いにこの件を持っていきます。ゲート」
自分がスキルとしてゲットしたゲートを開きデルガ達の元へ帰る。
バチバチバチィ
「あ、主様!如何でしたか?!」
「とんでもねぇ物拾ったかも」
しまった魔石をアイテムボックスから取り出し見せる。
その瞬間デルガとアグリードが血相を変える。
「主様これはどこで?!」
「何故こんな物が!!」
突然取り乱す2人に響、紅葉、芥、鹿島の4人はびくりと肩を震わせる。
4人が2人を見ると自身が取り乱した事を恥て咳払いをする。
「デルガこれについての説明をして貰っていいか?」
「………分かりました」
真が説明を求めると珍しく渋った表情をする。
しかしすぐにいつもの表情に戻ると魔石の説明を始めたら。
「まずこの魔石の製造方法から話させて貰います」
話を詳しく聞く為皆のいるテーブルに座る。
「これは転移魔法を使える悪魔族が規定以上の大きさの魔石に細工をします」
「ちょっと待ってくれ。俺や悪魔族が利用してる"ゲート"は転移魔法に入らないのか?」
「私達が利用する物はゲートを潜らなければ目的の場所に行けませんが転移魔法は違います。
転移魔法は距離や場所に縛られないんです」
少し皆の頭に?が浮かぶ。
「転移魔法はどんなに分厚い鉄の壁に阻まれていようと場所を知っていれば移動出来ます。話の流れから分かると思いますが魔石に転移魔法を細工した物がこれです」
よく見えるように魔石をテーブルの中心に置く。
皆の視線が集まった。
「しかし細工をしただけでは全く意味がありません。対象のモンスターの血に一際濃い魔力を込めてこの魔石と合わせる。そうすれば……最悪の使い方が出来ます」
「最悪の使い方って?」
薄々感づいたような紅葉がデルガの話の続きを促すように最悪の使い方はなんなのか聞く。
「先程も言いましたが転移場所に縛られないという事は敵の寝所に忍び込みこの魔石を割れば被害は相当なものになるでしょう。しかも私達魔界には悪魔貴族と同等レベルの力を持つ魔獣もいます」
「なっ?!デルガさん達と同じ力の?!」
響が驚きのあまり叫んでしまう。
だがデルガはそんな響に対して少し訂正をする。
「悪魔貴族といっても上級貴族レベルは極々僅かしかいませんし。転移させる事が出来ない存在しかおりません。無理矢理転移出来るのは下級貴族レベルの魔獣までです」
「なるほど……」
「ここまで言えばお分かりでしょう。下級貴族レベルの魔獣を無防備な睡眠時に転移させられたらいくら上級貴族といえどただじゃすまないのです」
「それに」と付け加える。
「過去にこの戦法が民衆に使われた事がありその時は討伐出来る者が到着するまでに5000以上の悪魔族が亡くなりました」
「なら今回の事件は」
「弱い魔物で本当に良かった……というべきでしょう。お陰で死亡者はいないようですし」
沈黙が流れる。
折角の休日、妹である響との大切な1日の一幕が暗い雰囲気になる。
「だぁぁあぁぁあ!!こんな小難しい話は無しだ!無し!!遊ぶぞ!アスマ!!」
この場にいない名前を呼ぶと響の影からぬるりと出現する。
形だけでも真に忠誠を示さないとデルガにボコボコにされるので一応跪く。
「今の話どこまで聞いてた?」
「全部です」
「ならハンター協会の古豪って人に今の話を伝えて欲しいんだ」
アスマに伝来の役目を押し付ける。
当の本人は黙ったままだ。
「やっぱダメ?」
「……ダメと言うか私はその者の魔力を知らないから居場所追えない」
とんだ盲点だった
どうしようかと迷っているとアグリードが手を上げる。
「私が行って来ましょうか?魔力もしっかりと把握しておりますし説明に5分もかかりませんし」
アグリードの提案に有難く賛同すると真はアスマに手を向ける。
「……これから今日みたいな事が起こる頻度は劇的とはいかないだろうが増えるだろう。そんな時響を守ってくれないか?」
アスマに初めて頭を下げる。
頭を下げた真にさしものアスマも慌てる。
その横でデルガがこれでもかと慌てているが
「もう契約してるんだ。その言葉は今更って物だ荒鐘真」
「アスマ……」
「真君……シスコンだったのか」
芥が呟くと真は猛獣のように素早く食いつく。
「えぇ!そうですとも!!響みたいな良い子はそうそういないってもんですよ!!!はっ?!響は嫁やりませんよ!!」
「何の話ですか?!」
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