第19話アスマディア




紫紺の騎士がゴレマスを襲うモンスターに近づく。

無防備に近づいた紫紺の騎士に気付き一体のモンスターが攻撃を仕掛ける。


「遅いな」


繰り出した右手を一呼吸の内に20以上斬りつけた。


「ガァ?ガアゥアァァァーーー」


一閃

体を回転させ更に一閃

体が止まる。

振り切った腕と反対の腕を突き出し短剣をモンスターの胸を刺す。


「【エクス…プロージョン!!】」


耳をつんざくような爆発音

爆炎が前方数十mを焼き尽くす勢いで走り抜ける。


「あぶね!」、「くっ!」、「なんじゃ?!」

ゴレマス、アグリード、枯れた老人の焦った声がしたが紫紺の騎士は気にしていないようだった。


「大分片付いたか……」


悠々と歩きながら呟く。

ゴレマスに襲いかかっていたモンスターの大半が今の魔法で死んでドロップ品に変わっていた。


短剣を逆手に持ち敵意が無いことを示しながらゴレマスに話しかける。


「ゴレマス……久しいな」


「お前、アスマディアか?!」


会話をしながら残りの雑魚モンスターを片付けて行く。


「また何かやるつもりかよ!」


警戒しているのかいつでも対処出来るように武器をアスマディアに向けながら問い掛ける。


「数百年生きてて初めて会ったあのデルガ様に少々……折檻をされてな。今デルガ様がこのダンジョンの外に出来た用事が手が離せない。だから私がデルガ様の代わりにあそこにいる荒鐘真の護衛を任されたのだ」


真を指差して全て言い切る。

そうこうしていると周りのモンスターの処理が完全に終わりあとこの神殿に残っているのはアグリードと戦っている老人だけとなっ。


「あぁ…アグリードの姉か。そら勝てねえな」


納得した感じで何度も肯く。

そして一連の流れを見て固まっていた紅葉、鹿島に向けて言葉をかける。


「おい娘、お前がここにいる人間の中で1番強いな?荒鐘真と気絶しているそこの男と隣の男を連れてダンジョンから出ていろ。ここから先は……」


何度も行われる鮮烈な魔法の応酬を背後に言葉を紡ぐ


「悪魔の戦域だ」



ゴレマス、アスマディアが武器を構えてアグリードに加勢しに駆け出した。


「鹿島さん芥さんを担いで私は真君を担ぐよ」


「分かりました」


「いや、紅葉さん自分1人で歩けますよ!」


紅葉から離れて歩こうとするが膝が笑い立てない。

それでも立とうとすると紅葉が少し真剣な声で真に言う。


「あれは私でも入れる領域じゃ無い。少しでも早く出て安全を確保しないとね」


そういうと真をお姫様抱っこで抱える。


「せめて!せめて普通に担いで!!」


「言う事聞かなかった罰」


そのまま鹿島と全力で駆けて逃げる。


「ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉ?!」


命の危機にある状況だが人生で初めてされるお姫様抱っこに羞恥心を覚えた叫んだ。








様々な属性な魔法陣が老人の背後に現れる。

爆炎、氷の槍、風の刃、水の弾丸

いくつもの魔法属性を操りアグリードを一切近づけない。


「はぁあぁぁぁぁ!!!」


自身の相棒である武器に魔力を纏わせ老人の最速の攻撃である雷撃さえも対処する。

しかし矢継ぎ早に雷撃、爆炎がアグリードを襲う。


「ふぉふぉふぉ。遊びがいのある若造じゃのぉ!それに他にも……」


ガギィン!!

老人は少し意識を別の存在に割いて魔法を発動する。


「キャッスルシールド、これくらいはしないとワシの首が飛んでしまいそうじゃな?」


挑発するように自分に襲いかかって来たゴレマスを一瞥する。

離れた位置でアスマディアの魔力が短剣に集まり神速の突きを放つ。


ガギィィィィン!!!


「はぁぁぁぁぁ!!!!!」


「ゴレマス!アイツは一体だれだ?!」


「個人的に交友の会った奴。昔は悪魔族の中でもかなりの悪童だったのにえらい変わって」


「色々あった」


「だろうな」


ピシッ


ゴレマスとアグリードが手短に言葉を交わしていると防御している老人の【キャッスルシールド】にヒビが入る。


「活きが良いでは無いか小僧ぉ!!!」


「死ねぇぇぇクソじじぃ!!!!!」


(あ、本性でやがった)


短剣に込められた魔力を解放すると身につけている鎧と同じ色の紫紺の雷撃が老人を襲う。


「ぬぉおぉぉぉおぉお?!?!」


紫紺の雷撃が【キャッスルシールド】ごと老人を巻き込み神殿を破壊する。


そこから間髪入れず短剣に魔力を込めて解放する。

範囲を絞り貫通に特化された雷撃が何度も何度も老人を襲った。

土埃が上がり視界不良になるがそれでも紫紺の雷撃を放つ。


「もう、アイツだけでいいんじゃねぇかなぁ……」


「そう思えたらいいんですがね」


「相変わらず反応薄いなぁ」


「それに比べて」


「死ねクソじじぃぃぃ!!!!!!」


飽きるほど紫紺の雷撃を叩き込むアスマディア。

そして




パキン…………


短剣が遂に何度も込められる莫大な魔力に耐えられずにその刀身を散らす。


「ちっ」


小さなゲートを作りその中に手を入れる。

何かを掴み引き抜くと同じような短剣を取り出した。


そしてまた同じ作業に入ろうとするとアスマディアの頬を何かが掠める。


「活きがいいのは歓迎するがぁ……調子に乗りすぎではないかね?」


次の瞬間アスマディアの体が音もなく宙に浮く。

老人が指を鳴らすと急加速して神殿の壁に叩きつけられる。また指を鳴らすと反対側の神殿の壁に叩きつけられる。


「少し遊ぶぞ?」


そこから何度も老人は指を鳴らした。

その都度アスマディアは壁や床に叩きつけられその鎧を変形させて行く。


「やばい!助けるか?」


「いや、いい」


「だけどよぉ?!」


「みろ」


アグリードがゴレマスの視線を誘導して止まったアスマディアの鎧を見させる。


「ぬ?」


「重力操作……じじぃは多芸だな」


鎧を捨て軽さに特化した装備のアスマディアが老人の背後に立っていた。


「死ね」


勢いよく短剣を振り下ろすが魔力の塊がそれを阻む。


「もう少し遊ぼうかね?」


老人の言葉にアスマディアは汗を流す




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