第3話プロローグ3
白蓮騎士ギルド新人と真は必死に逃げていた。
2人はかなりのスピードで走ったせいか息が大分乱れている。
(このま走れば10分もせずに入り口に辿り着くだろうがどうも嫌な予感がする)
念の為モンスターが出ても対応出来るよう短剣を握ろうとした時後方で爆発音が聞こえる。
「な、なんだ?!」
「芥さん達か!ここまで音が届くなんて一体どれほどの……」
「き、君急ごう!下手したらここまで余波が来かねな――」
刹那
――――――――ドン!!!!!!
一際大きな音がダンジョン内に響くと今まで聞こえていた爆発音が収まり途端に静かになった。
「決着が…着いた?」
「詩乃さん達が勝ったのか………?」
2人が少しだけ、ほんの少しだけ足を緩めた時
ダンジョンの奥から途轍もない殺気を感じた。
あまりにも濃密な殺気に足が震えて動けなくなる2人に近づく影がいた。
壊れた人形のように振り向くとそこには芥、鹿島、紅葉詩乃と思しき女性を雑に引きずっている。
騎・士・がいた。
真と白蓮騎士の新人ハンターは何が起きたか理解出来なかった。
Cランクの芥や鹿島ならいざ知らず最高峰ハンターであるSランクの紅葉詩乃がぼろ雑巾の様に扱われている様に。
ふと、混乱している真達に鉄の匂いが届く。
なんなのかと、ボロボロの3人を見ると目を見開いた。
そして異常な出来事を理解すると吐き気が襲って来る。
「はっ…はっ。うっぷ!おうぇぇぇぇぇええぇぇえぇぇ!!」
低級ダンジョンではあり得ない光景に朝食で胃の中に収めた物を逆流させた。
芥、鹿島、紅葉詩乃のいずれの3人の足が歩く事は疎か立つ事すら不可能な程にグチャグチャに潰されてしまっていた。
肉が裂け骨が見え、見えた骨さえ炭となっている。
恐怖で身がすくみその場から動けなくなる。
「………!!!」
心の底からの恐怖
今の2人の様子を表すなら蛇に睨まれた蛙に似ていた。
「あっあっ」
最早這いずる事も出来ずに震えるしか無かった。
「ぇ……」
「え?」
「に…げて。わだしはゴホッ!…い"い"…からぁ!」
必死に声を絞り2人に逃げる事を促す紅葉詩乃
「なんとか…!するーーー」
2人を逃す為に騎士に時間稼ぎの抵抗として騎士のアキレス腱に噛みつくが
ガッ!ゴッ!バキィ!
足のまだ掴める部分を掴んで地面に叩きつけ、顔面への拳の強打、そして紅葉の手を掴み右手を赤子の手を捻るかの様に折った。
「き、ぁぁあぁぁあぁぁぁ!!!!」
追い討ちとして騎士は紅葉の血で濡れた腹に思い切り拳を撃ち込む
紅葉の悲鳴が響く事なくその意識を落とした。
ここに着く前にこの騎士と一戦交え蓄積されたダメージも相まって、紅葉詩乃は限界を超えて気絶したのだった。
(逃げなきゃ!でも……助けないと!だけど勝てるわけがない!!)
生きたい考えと助けなきゃという考えで頭の中がゴチャゴチャになっている時に白蓮騎士ギルドの新人ハンターが声を上げた。
「な、なぁ!お前の狙いはなんなんだ?狙いはハンターなのか?もしハンターならこいつをどうとでもして良いから俺を助けてくれよ!」
そう言いながら真を突然殴ると体勢の崩れた所を狙い騎士の元へ投げ飛ばした。
「は?」
「こ、これでいいだろ?!狙いはハンターなんだろ!だから……俺は助けてくれよ!!」
そのまま混乱して動けないでいる真を置いて逃げる。
(おい、まてよ…ふざけるなよ?!!!!なんで自分だけ助かろうとしてんだよ!!俺だって死にたくないんだよ!ふざけんなよ!!)
逃げたハンターを目で追うと突然体が寸断され転がる度重なる異常光景に目を白黒させるがハンターがもう生きていない事はだけは理解出来た。
ガチャガチャ…ガゴッ
何かを弄る音が聞こえ真は振り返る。
騎士が自分の顎を弄ったあと口・を・開・い・た・
『お前は…この、群れるだけ…しか能がない。ゴミの仲間…なのか』
決して声が大きいわけでは無かったがその声が異様に響いた。
『この…小娘は愚かにも我…に襲いかかって来た』
喋るのに慣れて来たのか騎士が少しずつ饒舌になっていく。
『我はゴミがここに出現したと聞き…駆けつけたただの騎士にすぎぬ。ゴミと騎士の判別もつかぬのか貴様らは』
騎士の殺気が更に爆発した。
「芥さん達にそんな事をしておいて何を言ってんだよ!!」
『言ったであろう。我はただゴミを掃除しに来ただけに過ぎぬ。ここに飛んで来てゴミ掃除を始めた時に我を殺そうとして来たのだ、殺そうとしたのなら殺されても文句は言えまい?』
「なら、何故その人を生かしてここに連れて来た?殺せば良かっただろう」
震えそうになる体を気合で押さえ付けながら聞く。
『それは小娘と似た匂いが離れていくのを感じたのでな?このような状態を見せつけ反応を楽しむ為に来たのだが……期待出来ぬゴミしかいない。心底不愉快だ』
騎士は紅葉の頭を掴み見せ付けるよう持ち上げる。
(やばい、どうする?!仕掛けるか?まだレベル1の俺がか?!無理だろ……でもっ!)
『生きていると我に不都合が起こり得るやも知らんからな?お前らを始末しよう。手始めにコイツだ!』
(考えている暇なんて…!!!)
頭を潰す為に力を入れようとした時、真は意を決して短剣を握り締めて騎士に切りかかかった。
「うわぁああぁぁあぁ!!!」
騎士はため息を吐くような仕草をする
『愚か』
騎士が紅葉の頭を掴んでいない右手で無造作に振り払い襲いかかって来た真を壁に叩き付ける。
「ゴフッッ!!」
(死ぬ…誰か、助け)
高く上がる拳に真が死を覚悟して目を瞑る
(…………アレ?)
が
一向に痛みが襲って来ない。
もしかしてもう既に死んでいるのかと考え目を開く。
ドサッ
目を開くと紅葉の頭を掴んでいた腕が根本から切り落とされていた。
「?!?!」
あまりの衝撃に真は固まる
その腕を切った人を見る
全身鎧の騎士の出で立ちで、ただの鎧ではなくまるで全身タイツように体に完全にフィットしている感じだった。
その手には刀身だけで180近くある剣が握られており、
いつ腕を斬り落としたのかは真のレベルでは認識出来なかったが、それでも異常で音が聞こえなかった。
「え……」
「初めてだなこのスキルで呼び出されたのは」
「姉上、私は過去に何度も」
「自慢か?」
「そこそこ」
「は?」
1人かと思ったら直ぐ側にも似たような見た目の騎士がいた。
そして場の空気を無視して気軽に子供のような喧嘩を始める。
『……だ』
「「あ?」」
『何者だ!貴様らぁぁ!!!』
元々いた方の騎士は激昂し、2人の騎士に問いかける。
「何者だと?そんな事とうの昔に決まっている」
「そこの少年のスキル願いと契約した悪魔だ」
『悪魔だと?何を言って……?!』
そこまで口にして気付く
自身が記憶している中で1番手を出すなと言われていた存在の事を。
『まさか、まさかお前ら』
「そ、姉弟していの悪魔だ」
「粗暴な姉が怖いです」
「お前マジで後で覚えとけよ?……とまぁ、そういう事だ」
(どういう事?)
真は状況が飲み込めなかった。
「私らに勝てると思ってんのかよ」
「この人に手を出すというのなら」
弟の方が真の前に庇うように立つ
「「殺す」」
突然やって来た自称悪魔の騎士2人は元々いた騎士を上回る殺気を放つ。
真は展開の速さに頭がついて行かず
もはや頭の中が真っ白であった。
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