第4話 正体がバレました。

 必死の形相で全力疾走。光の速さで公園を脱出し、アスファルトの公道を駆けていた、その時だった。全力疾走する僕の行く手を遮る人影が……

 ようく目を凝らしてみるとそれは、耳にかかるくらいの黒髪に上下紺色の制服を着た、男子高校生の後ろ姿だった。

「ちょうどいいところに来たな」

 不意に立ち止まった僕の気配を察し、フッとキザな笑みを浮かべた男子高校生が振り向くと

「ちょっときたいことがあるんだけど……」

 そう言って、着ているジャケットの内ポケットから取り出した一枚の写真を僕に見せた。肩の、少し下まで伸びた茶髪に髪と同じ色の目をして微笑む女子高校生が写っている。男子高校生と同じ色の制服を着用していた。

「この写真に写ってる女子高校生を捜してるんだけど、心当たりはないか?」

 男子高校生と向かい合い、見せられた一枚の写真を見て僕は

「いいえ。心当たりはありませんが……」

 首を横に振り、丁寧に返事をした。本当に知らない女の子だけど……何故か、僕とそっくりな顔をしている。それが不思議だった。

「そうか……」

「力になれなくて、すみません。それじゃ……」

 肩を落とす男子高校生に、そっと詫びた僕は頭を下げると足早にその場を去ろうとする。

「ちょっと待った」

 歩きかけた僕の左手首を掴み、男子高校生が待ったをかける。

「もうひとつ、訊きたいことがある」

 にわかに鋭い目つきになった男子高校生が

「おまえ……悪魔だろう」

 鋭い口調で僕の正体を口にした。

「僕が悪魔だって……?そんなわけないじゃないですか!」

 ポーカーフェイスで目一杯とぼけて見せるも、内心はパニクっていた。

 バレた。僕の正体が……何故だ!何故、バレた?!

 完璧だと思っていた僕の変身のどこに落度があったのか……皆目見当がつかない。

『この人間界せかいには、あなたの生命を脅かす神使いや、天空の騎士団が存在します。屋敷の外に出る時は人間の姿に化けて、正体を隠しなさい。くれぐれも、正体を知られてはなりませんよ』

 魔界からこの人間界せかいに降り立った時、ロビン様が僕に言って聞かせてくれた言葉が脳内に響き渡る。

 このままでは、ロビン様との約束を破ることになる。それだけは、絶対に避けたい!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る