第2話 ただ、気分転換がしたかっただけ

 あれから時が流れて三ヶ月が経った。ストレートの短い茶髪にベージュのコートを着た十六歳くらいの男の子。それが、今の僕だ。

 普段は黒髪に黒い服を着た魔人の姿をしているが、外出と言うこともあり、人間の姿に身を変えている。

 魔界から人間界この世界へ移り住んでからの三ヶ月間、僕は縦浜市内に構えるロビン様の屋敷で居候をしている。実は、魔界で僕がロビン様に持ちかけた相談事には続きがあって……

「――僕、まだ魔界ここの空気に慣れてなくて……なので、気分転換がしたいのでお暇を下さい」

「いいですよ。その代り……私も同行します。あなたひとりでは心配なので」

 そうして僕はロビン様とともに魔界から人間界へと移り住み、今に至っているのだ。

 ロビン様いわく「あなたのことでしょうから、暇を使って人間界に行くでしょう?あそこにはあなたの生命いのちを脅かす存在がいますからね。なので私も同行します」なんだそう。

 一言も口に出していないのに、優しい笑みを浮かべるロビン様に目的を言い当てられた僕は内心、動揺したものだ。

 その時はまだ、移り住むとは考えてもみなかった。ただ少しの間だけ人間界に行ければ、それだけで良かったのだ。そう、僕は単なる気分転換としか考えていなかったのだから。

 僕は、ロビン様に仕える魔人としてはまだまだ半人前。そのくせ、魔界特有の空気に身体からだが馴染まず、気を抜くとすぐに気分が悪くなる。とても厄介な体質であった。

 魔界から人間界に移り住んだ今、一度も身体を壊したことはない。気を抜いても、すぐに気分が悪くなることがなくなった。どうやら、この地球の空気が僕には合っているらしい。

 生命いのちを脅かす存在がいるこの世界へ、単身で渡るのはとても勇気のいることだった。

 けれど、ロビン様も一緒なのでとても安心していられる。要は、神使いや天空の騎士団と遭遇しなければいいのだ。

 たまたま通りがかった公園から物音がした。好奇心がある僕は不思議に思いつつも緑豊かな公園に近づき、足を踏み入れた。それが、もっとも出逢いたくない不吉の始まりだった。

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