本当は......

碧居満月

第1話 人間界(下界)へ

 縦浜市たてはまし海ヶ丘町うみがおうかちょう。世にも美しい金髪の美女戦士がこの町を拠点に活躍している。

 神使い。そう名乗り、二人の護衛騎士と共に悪魔と戦い、封印するのが彼女の役目だ。

 その日も彼女は神使いと名乗り、二人の護衛騎士と共に悪魔と戦い、封印した。神使いとしての使命に燃える彼女が忽然と姿を消したのは、それから間もなくの事だった。



 縦浜市内よりも遙か上空……地球よりも上に位置する魔界にて、僕はロビン様から神使いについて色々と教わった。

 ロビン様は、魔界に巨大な城を構える魔王様に仕える幹部のひとり。闇の騎士団を率いる長であり、僕にとっては主人でもある。魔界の中で強力な魔人なのだ。

 風の便りは魔界にもやって来る。ロビン様のおつかいで、たまたま外出した時のことだ。城下町にて、一時行方不明になっていた神使いが、人間界下界に再び姿を現した。との不吉な噂を耳にした。

 今になって何故?

 脳裏にふと疑問が浮かんだが、僕にとって神使いは、生命いのちを脅かす危険な存在と認識している。なので、できるだけ関わりたくないとその疑問を頭から振り払った。

 神使いのことを考えただけで気分が悪くなる。事実、僕は今、吐き気を催すほど猛烈に気分が悪かった。まぁ、ただ魔界の空気が僕に合わないからなのだが……

 魔人のくせして、気持ち悪くなるほど魔界の空気が合わないなんて変だよな。この体質、なんとかならないかな……あっ、そうだ。

 妙案を閃いた僕は、早めにおつかいを済ませて帰宅すると、ロビン様に相談を持ちかけた。

「ロビン様」

「なんです?セシル」

「あの……ご相談したいことが……」

「相談……ですか?」

「はい。僕、まだ魔界ここの空気に慣れてなくて……なので、気分転換がしたいのでお暇を下さい」

「いいですよ」

 やけにあっさりとした返事だった。腑に落ちない表情をして僕は戸惑いつつも、

「ありがとうございます」

 丁寧に頭を下げて礼の言葉を述べた。

 ロビン様の部屋を出て、二階建てのお屋敷を後にした僕はその足で人間界下界へと渡ったのだった。

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