第38話

「トワロ、森の奥の山に行かない?」

「え、あそこにはコカトリスがいますよ?」

トワロは朝葉に言った。

「うん。コカトリス、倒しに行こうよ!」

朝葉は元気よく答えた。


「今の朝葉様なら、コカトリスを倒せるかも知れませんね」

トワロは思案したが、覚悟を決めて頷いた。

「それじゃ、セリスさんも呼んでいこう」

朝葉は装備を調えて、セリスの家に向かった。


「セリスさん、コカトリスを倒しに行こう!」

「え。大丈夫かなあ」

セリスは不安げにトワロを見た。

トワロはセリスの目を見て頷いた。

「よし、二人が覚悟を決めてるなら私も行こう!」

「よかった。セリスさんの眠りの歌が必要だったんだよ」

朝葉はホッとして微笑んだ。


朝葉達は森の奥の山まで、あまりしゃべらずに歩いて行った。

途中、スライムや角ウサギも出たが、トワロと朝葉の剣のしずくとなって消えていった。

「さあ、着いたよ!!」


「ぐぅぅぅっ」

低い声でコカトリスが鳴いた。

「行くよ!」

朝葉は剣と盾を構えて、コカトリスに躍りかかった。


「グオオ!!」

コカトリスの爪を、盾で躱す朝葉。

トワロが火の魔法でコカトリスを足止めする。

「ファイアウォール!!」

「今だよ、セリスさん! 歌って!!」

「分かった!」


セリスの歌声が山に響いた。

「……」

コカトリスが眠りについた。

「今だ! 朝葉様!」

「うん!! 解体!!!」

朝葉の剣がコカトリスを刻む。


毒のある爪と尾を切り離した後、朝葉の剣はコカトリスの鱗と皮、肉と内臓を切り分けた。

「やったね! コカトリスを倒したよ!!」

そう言うと、朝葉は食材袋を取り出し、コカトリスの肉をそこにしまった。

「あとは、爪と尾を王宮に持ち帰れば、報奨金がもらえます」

トワロの台詞に朝葉は頷き、大きなカバンの中にコカトリスの爪と尾を入れた。


「それじゃ、王宮に寄ってからバンガローに帰ろう」

「はい、朝葉様」

三人は王宮に向かった。


王宮に着くと、王妃が朝葉達を出迎えた。

「王妃様、コカトリスを倒してきました! これが爪と尾です!」

王妃は朝葉が取り出した、コカトリスの爪と尾を受け取ると微笑んだ。

「これで安心して森の奥に行くことができます。よくやりましたね、朝葉様」

「はい! トワロとセリスさんのおかげです」

朝葉はそう言って胸を張った。


「報奨金は100000ギルです」

王妃がそう言うと、兵が奥の部屋から金貨の入った袋を持ってきた。

「ありがとうございます」

朝葉は金貨を受け取った。

「また、コカトリスも調理するのですか?」


王妃の問いかけに、朝葉は思い切り頷いた。

「はい! 唐揚げにします!!」

「そうですか」

「それでは、失礼致します」

朝葉達は王宮を後にして、バンガローへ戻っていった。


バンガローに着くと、朝葉は早速着替え、解体したコカトリスの肉に香味野菜のソースを揉み込んだ。

そして、良く熱した油にコカトリスの肉を一口大に刻んだものをいれる。

ジュワーと良い音がする。

「コカトリスは食べても石化しないのですか?」

「うん、トワロ。無毒って出てたから大丈夫だよ」


コカトリスの唐揚げが完成した。


「いただきます!」

「うん、ジューシー!!」

「肉が柔らかくて、噛むほどに味がしみ出してきて美味しいです」

「歌ったかいがあったよ、朝葉」

トワロもセリスも上機嫌で唐揚げを頬張った。


「あ。私の分も残しておいてよ!」

朝葉も慌てて一口囓る。

「あちっ」

「あはは」


こうして、コカトリスの唐揚げは三人の胃袋の中に収まった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る