第29話
朝葉は買い物の帰りに、冒険者の館に寄った。
「こんにちは!」
「おう! 朝葉! いらっしゃい!」
「今、何か良い案件ある?」
「今か、そうだな」
そう言うとロイは依頼票の束を見た。
「これなんかどうだ?」
「人食いキノコの駆除?」
「ああ、森の奥に巨大な人食いキノコが出たらしい」
「そうか、いいね。 行きます!」
朝葉がそう言うと、ロイは頷いた。
朝葉はバンガローに戻ると、買ってきた荷物をしまった。
そして、冒険用の装備を身にまとうと、森の奥をめざし家を出た。
「今日は、はじめて一人で魔物退治に行くんだなあ」
朝葉は一人、そう呟くと早足で歩いて行った。
森の奥には、木に大きなキノコが生えていた。
「あれが人食いキノコかな? 」
朝葉はそっと近づいた。
そのとき、キノコから液体が飛んできた。
「きゃあっ」
朝葉はすんでの所で躱した。
液体のかかった場所を鑑定してみる。
ー消化液、強力ー
「あぶないな、ちゃんとよけて攻撃しよう」
朝葉は盾を構えながら、剣でキノコを攻撃した。
すると、キノコは胞子をまいた。
朝葉は少しキノコから距離を置いた。
次の瞬間、朝葉は全速力でキノコに駆け寄り、キノコの根元を剣で切り裂いた。
キノコは木から落ちた。もう、動いたりしないようだ。
キノコを鑑定する。
無毒。
「よし!」
朝葉はキノコを簡単に捌いてから、いつもの食材袋に入れた。
「キノコと卵の炒め物にしよう!」
そう言うと朝葉はバンガローに戻っていった。
「ただいま!」
朝葉は誰も居ないバンガローに戻ると、キノコを台所に置いた。
「結構沢山有るから、卵炒めだけじゃなくて、キノコステーキも作ろう!」
朝葉はキノコの厚切りを何枚か、バターで焼いて醤油で味をつけた。
残り半分のキノコは、細かく切って卵と炒めて塩胡椒で味をつけた。
「なんだか、普通のキノコ料理になっちゃったなあ」
朝葉は少しがっかりした。
キノコのステーキと、キノコの卵炒めはトワロとセリスの分をよけて、残りは冒険者の館に持って行くことにした。
冒険者の館に着くと、ロイが出てきた。
「お、いい匂いがするな、朝葉」
「うん。 人食いキノコ、調理してきたよ」
「そうか、まずは成功報酬の3000ギル」
そう言うと、ロイは銀貨を出した。
「ありがとう」
朝葉は受け取ると、代わりに料理を2つ並べた。
「人食いキノコの卵炒めと、人食いキノコのステーキだよ」
「普通のキノコとあんまり変わらないな」
「うん、味もあんまり変わらないよ」
「それじゃ、一品2000ギルで、合わせて4000ギル」
「うん、ありがとう、ロイ」
朝葉はカバンにロイから受け取った銀貨をしまった。
「朝葉、レストランはまだやらないのかい?」
「なんで?」
「お客さんで、朝葉のレストランに行ってみたいって言う人が居るんだ」
「そうなの!?」
朝葉は驚いた。
ロイは頬に手を当てて、言った。
「まあ、気分で開いてるみたいだからって言っといたけどよ」
「ありがとう」
「レストランを開く予定が決まったら、教えてくれ」
「うん、分かった」
朝葉はロイにお礼を言って、冒険者の館を跡にした。
朝葉は一人バンガローに帰っていった。
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