第20話
朝葉達は慌てて明日の用意に取りかかった。
まず、畑に行き野菜を取る。
次に森に行って果物とキノコを採集した。
そして、角ウサギを倒し、解体する。
スライムも倒し、その身を持ち帰る。
なんとか、ディナーを作る材料が集まった。
朝葉達は、食材を手にしてバンガローに戻った。
「それじゃ、明日は私が頑張るよ!」
「わかったよ」
セリスが答えた。トワロも頷く。
朝葉は明日の料理の下ごしらえをしてから眠りについた。
夜が開けた。
「さあ、作るよ」
朝葉はメニューを決めると、女王のために調理士の能力を存分に生かした。
そして、夜が来た。
コンコン、とドアをノックする音がする。
扉を開けると、女王とお供の兵がバンガローの前に立っていた。
「いらっしゃいませ、女王様」
「こんばんは、朝葉様」
そう言って女王と兵は、バンガローの中に入ってきた。
「お待ちしておりました」
女王をレストランの椅子に座らせると、女王のテーブルの前に、ナイフ、フォーク、スプーンを置いた。
そして、ミントの葉を浮かせた水を女王の前に運ぶ。
「まずは前菜です。キノコのアヒージョです」
「これは、森で取った物ですね」
そう言って女王は、頂きますと言ってから口に運んだ。
「美味しいですね」
「ありがとうございます」
朝葉は女王の食べるスピードに合わせて次の料理を運んだ。
「闇コウモリの味噌田楽です」
「これは、珍しい調味料ですね」
「はい、味噌と砂糖で出来ています」
女王はパクリと一口食べた。
「うまみが広がります。闇コウモリのクセがソースで上手く消されていますね」
「はい」
女王はパクパクと食べ続ける。
「次は角ウサギの丸焼きです」
「冒険者の館で提供されていると聞いています」
「はい、いつもお世話になっています」
そう言って朝葉は角ウサギの肉を上手に切り分けて、女王の前に置いた。
「ああ、香ばしくて美味しいですね」
「はい、焼きたてなので火傷しないように気をつけてくださいね」
朝葉の言葉に女王は頷くと、また一口と料理を口に運んだ。
「朝葉様の味付けは天才的ですね」
女王はそう言うとナプキンで口を拭って、微笑んだ。
「最後はスライムのフルーツソースがけです」
「スライムも食べるのですね?」
「はい!」
女王はひるむことなく、スライムをスプーンですくって口に入れた。
「美味しいです、朝葉様」
「嬉しいです! 女王様」
女王はあっという間にすべてを食べてしまった。
朝葉はその食べっぷりに満足していた。
「紅茶をどうぞ」
「ありがとう」
朝葉は食後の紅茶を出した。
どうやらディナーは成功だったらしい。
「朝葉様、調理士の能力が素晴らしい事が分かりました」
「ありがとうございます」
「ですが、騎士の能力も伸ばして頂きたい所です」
「はい・・・・・・」
朝葉は気まずい空気が流れるのを感じた。
「この頃はダンジョンまで攻略を始めたそうですね」
「はい」
「戦いも頑張って下さい」
女王はそう言うと、兵に帰る事を告げた。
「朝葉様、今日はありがとうございました。とても美味しいディナーでした」
「いいえ、喜んで頂けて良かったです」
朝葉はにっこりと微笑んだ。
女王がバンガローを出て、城に向かうと朝葉は大きなため息をついた。
「ああ、緊張した」
朝葉は女王の皿がどれも綺麗に食べられていた事に安心した。
「よかった、口に合ったみたいで」
朝葉は片付けをしてから、眠る準備をした。
「レストラン始めたらこれが毎週続くのか・・・・・・」
朝葉はちょっと考えた。
「やっぱり、レストランは週一にしよう!」
朝葉はそう決めると気が楽になった。
「もう、こんな時間。 早く寝よう」
そう言って、朝葉はベッドに入った。
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