第17話

朝が来た。

「おはようございます、朝葉様」

「おはようトワロ」

朝葉はすでに朝食を終え、身支度を調えていた。


「それでは今日は、お城に行きましょう」

「はい、トワロ」

朝葉とトワロは城へ向かった。

朝の時間と言うこともあって、街は忙しそうだった。


「今日はレストランの話をするの?」

朝葉がトワロに聞くと、トワロは首を振った。

「今日は朝葉様の騎士レベルについて相談をします」

「ええ!?」

トワロは続けて言った。

「朝葉様は料理に夢中になりすぎです」

「トワロだって美味しいって言ってたじゃない!」


朝葉が文句を言うと、トワロは申し訳なさそうに頭を下げた。

「私も心が緩んでいました。反省しています」

二人が話しながら歩いていると、城の前についた。


門塀が大広間まで案内する。大広間にはすでに女王が座っていた。


「おはようございます、朝葉様をつれてまいりました」

「良く来ましたね、朝葉様、トワロ」

「女王様、おはようございます」


朝葉とトワロはお辞儀をした。

女王は笑って手を上げた。

「今日は、朝葉様の騎士レベルについて、相談があるとのことでしたね」

「はい、女王様」

女王は立ち上がると、朝葉の事をじっくりと見た。


「騎士レベル20、調理師レベル30・・・・・・確かに開きがありますね」

女王はそう言って、朝葉の頭を撫でた。

「ショーン、来て下さい」

女王は、宮廷魔術師のショーンを呼んだ。


「はい、女王様」

「ショーン、確か朝葉様には光の魔法の素質があると言っていましたね」

「はい、女王様」

ショーンは曲がった腰を更に曲げて答えた。

「それでは、光の魔法の解放を行えますか?」

「はい、そう思い魔道書を持ってきております」


「光の魔法?」

朝葉とトワロは、女王とショーンのやりとりを聞いて思わず声を上げた。

「はい、いにしえの魔法です。朝葉様、魔道書に手を置いて下さい」

ショーンが言うとおりに、朝葉は魔道書に手を置いた。

「・・・・・・」

ショーンが小声で何かの呪文を唱えると、魔道書から光の魔方陣が浮かびだし、光が朝葉の体を包んだ。


「朝葉様! 大丈夫ですか」

「うん、トワロ。なんか、体の奥が熱くなる感じ」

朝葉がそう言うと、光が消えた。

「これで、光魔法が使えるはずです」

ショーンが言った。


「ところで朝葉様、レストランを開きたいという話は本当ですか?」

女王は魔法が解放されたのを見届けてから、朝葉に訊ねた。

「はい、女王様。週末だけ、バンガローでレストランを開こうと思っています」

朝葉は遠慮がちに答えた。


「そうですね、騎士のレベルを上げ、ドラゴンを倒すことを忘れなければ良いでしょう」

女王は静かに言った。

「それに、朝葉様の料理は絶品だと街で噂になっています。一度、私も食べてみたいと思います」

トワロはそれを聞いて驚いた。

「モンスターを女王様が食べるのですか?」


「ええ、毒の検知スキルのある朝葉様が作る物なら、大丈夫でしょう」

「はい!」

朝葉は女王の言葉に胸を張った。

「でも、その前に騎士の修業をして下さい」

女王が真面目な顔で朝葉に行った。

「騎士の修行?」


朝葉が聞き返すと、女王は頷いた。

「今まで通り、冒険者の館の依頼をこなしていって下さい」

「はい! わかりました」

「それでは、今日の話はここまででよろしいですか?」

女王の問いかけに、朝葉とトワロは頷いた。


「今日はありがとうございました」

「朝葉様には期待しています」

女王はそれだけ言うと大広間を出て行った。


「トワロ、光魔法って何?」

「朝葉様、古くから伝わる協力な魔法です」

トワロが続けて言う。

「これで魔法剣が使えます。コカトリスとも戦えるかもしれません」

「へー。すごいね」


朝葉とトワロは城をでると、冒険者の館に行った。

「よお、朝葉。おはよう」

「シン、おはよう」

「私、光の魔法が使えるようになったんだよ!」

「じゃあ、闇コウモリの討伐なんて依頼も大丈夫か?」

シンは、また台帳から依頼の紙を取り出した。


「うん、大丈夫でしょう」

トワロは依頼書を見て頷いた。

「じゃあ、引き受けます」

朝葉がそう言うとシンが笑った。


「ところでレストランの方はどうだい?」

シンが思い出したように聞いてきた。

「王女様から許可がおりました」

朝葉がそう答えるとシンが笑って言った。

「そうか、よかったな、朝葉」

「はい!」


「それでは、闇コウモリの討伐を引き受けます」

トワロはそう言って、依頼書を鞄にしまった。

「ああ、たのむよ。場所は森を越えた岩場の先の山の中の洞窟だ」

「ちょっと遠いですね」

シンの言葉を聞いて朝葉は驚いた。

「ああ、十分準備をしてくれ」


「岩場にはコカトリスがいるよね」

「はい、朝葉様」

「リベンジはまだ早いよね」

ちょっと残念そうに朝葉が言うと、トワロは大きく頷いた。


「それじゃ、闇コウモリの炭火焼きを作ろう」

「朝葉様、闇コウモリは結構な難敵です。倒す前から料理を考えてどうするんですか?」

「だって、モチベーションが変わるんだもん」

朝葉が口を尖らせると、トワロはやれやれとため息をついた。


「それじゃ、闇コウモリを倒しに行こう」

朝葉はそう言って街を後にした。

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