第4話
森に入ると、しけった空気が体にまとわりついた。
「ここ、いろんな物がなってるんですね」
朝葉は木になっている果物を見ながら、どれが美味しそうか考えていた。
「朝葉様、あまりよそ見をしていると危ないですよ。ここは街中とは違って、モンスターがでますから」
「はい、トワロ」
そういいながら、朝葉は赤い美味しそうな実を1つもいだ。
じっと見るとステータスが見えた。
毒検知スキルが発動したらしい。
無毒、と表示されている。
囓ってみる。
水っぽくてあまり美味しくない。
「朝葉様、毒のある植物もありますので、すぐに召し上がるのは危険だと思います」
「大丈夫。毒検知スキルが働いてくれるから」
「毒検知スキル!?」
トワロは驚いて立ち止まった。
「そんなに珍しいの?」
「はい、それは珍しいです」
私は水っぽい実を食べながら歩いた。
「朝葉様、気をつけて下さい。このあたりはスライムがよく現れます」
「はい」
私は急いで食べかけの実を飲み込むと、剣を握ってトワロの後を歩き出した。
そのとき、草むらがゴソゴソと動いた。
「朝葉様、スライムです」
「え、もう出たの!?」
トワロの指さすほうをみると、確かに透明な物体がうごめいていた。
「まずは私から攻撃しますね」
トワロがそう言って剣を構えたけれど私は叫んだ。
「ちょっとまって!」
「はい!?」
スライムに光の線が見えた。
私はその線に沿って剣を走らせた。
すると、スライムが動きを止めた。
「すごい、なんて剣の動きだ」
トワロが絶句している。
私は自分でも驚きながら見事に解体されたスライムだった物をみた。
無毒。
でも、さすがにこのままかじりつくわけには行かない。
「トワロ、これ、料理したいんだけど、持って帰れるかな?」
「はい!?」
トワロの美しい顔が驚きでゆがむ。
「だって、なんかわらびもちみたいで美味しそうなんだもん」
私がそう言うと、トワロは頭を抱えた。
結果、討伐を中止して、解体したスライムの身を持ち帰ることにした。
「台所、使えるところあるかな。あと、基本的な調味料がそろってるとありがたいんだけど」
私がそう言うとトワロはもういつもの美しい顔に戻っていた。
「朝葉様。森の端の、城のそばに一軒家を用意してあります」
「すごい」
トワロにそう言うと私は踵を返した。
「じゃあ、そこに行きましょう」
「ご案内します」
トワロが先に歩く。
私は、トワロの後を追いながら美味しそうな実やキノコを取りながら歩いた。
しばらくすると、腰に下げていた鞄がパンパンになってしまった。
「こちらです」
「うわあ、格好いい」
ログハウスが建っていた。
「しばらく使われていなかったので、ほこりがあるかもしれませんが」
私はログハウスの前で立ち尽くした。
家族4人くらいでも住めそうな感じだ。
「お入り下さい」
「ありがとうございます」
私はトワロから鍵を受け取って、ドアを開けた。
少しかび臭い。
一階は広々とした一部屋と、立派な台所が着いていた。
「二階が居住スペースになります」
トワロが言った。
「一階は違うの?」
私が問いかけるとトワロは頷いた。
「レストランです」
「レストラン!?」
私は台所をチェックした。
大きな冷蔵庫がある。これは綺麗に掃除がしてあった。
「朝葉様のご要望から、台所だけは掃除してあります」
「はい、ありがとうございます」
朝葉は先ほど森で手に入れた果物やキノコ、スライムの身を冷蔵庫にしまった。
「調味料は何処?」
「こちらです」
指を指された方を見ると、5種類くらいの瓶が見えた。
無毒。
なめてみると、塩らしきもの、砂糖らしき物、こしょうらしき物、油らしき物、小麦粉らしき物の5種類だった。
「それじゃ、早速作ってみるわね」
朝葉はそう言うと、スライムの身を湯がき、冷蔵庫で冷やした。
その間に砂糖でシロップを作り、森でもがいてきた果物で一番美味しい物を細かく刻んで煮込んだ。
「はい、おまたせ」
私はそう言って、冷えたスライムの身にシロップをかけたものを器に盛り付けた。
「本当に食べるのですか?」
トワロは信じられないという表情を浮かべている。
「あたりまえでしょ」
私は一口食べた。
甘くて美味しい。スライムのむにむにぷるんとした食感がたまらない。
あまりに美味しそうに食べる私を見て、トワロも恐る恐る一口たべた。
「美・味・し・い」
トワロはびっくりして、次々と口の中にスライムを運び込んだ。
「良かった。ね、美味しいでしょ」
「はい」
私はようやく美味しい食べ物が食べられて嬉しかった。
でも、調味料の少なさや、ハーブや香辛料が無いことがつらかった。
それに、お肉!お肉がたべたい。
「トワロ、角うさぎって美味しい?」
「さあ、食べたことありません」
私は早速出かける準備をした。
森には食材が沢山ある。
まだ見ぬ、いや、まだ食していないモンスター(しょくざい)を探しに、出発したかった。
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