チャイ専門店チャイドリーム ~あなたの見たい夢、お見せします~

猫田パナ

1 美咲の失恋 ―自分に自信が持てたら。



 溜息をつき、肩を落としながら傘を広げて、私はバイト先を出た。

 折り畳みの安いナイロン傘の表面を、雨がポツポツ叩いて音を鳴らす。


「はあ、まさか店長が結婚するなんて……」


 密かに思いを寄せていたバイト先の店長が近々結婚するらしいという話を、今日小耳にはさんでしまったのだ。


 あんなに笑顔が素敵で、前向きで、美味しいケーキを作る人だものね。

 今思えば、相手がいないわけ、なかったのかもしれない。


 別に店長とどうこうなりたいって本気で思っていたわけではないけれど、毎週バイトの日が楽しみだったのは大好きな店長に会えるから、だったのに。


 彼女がいると知っていたら、バカな妄想なんか、しなかったのにな。


「えー。私、店長に本気で恋してたわけー? ありえない、ありえない……」


 できるだけ、そんなわけないと思いたい。

 だけど、今の自分がこんなにも落ち込んでいるのは、きっと……。


「はあ……」


 重いため息が口から漏れる。

 嘘でしょ……私、こんなにも店長のことが好きだったなんて。


 バイト先の誰にも、恋愛相談をしていなかったことが、唯一の救いだったとも言える。

 でもだからこそ、バイト先の誰も、私が今こんな気分であることを知る由もない。


 店長に仕事を褒められたり、プライベートの話をされたりする度、舞い上がっていた。

 私はもしかして好意を持たれているんじゃないかって、思い込んでいた。

 なのに、勘違いだったなんて。


 自分のことが、惨めで馬鹿で孤独なやつに思えてくる。



 そうして涙目になりながら意地になって歩いていたけれど、なかなか駅には辿り着かない。

 バイト先から駅までは、少し距離があるのだ。歩いて十分程かかる。この距離がもっと近ければ、うちの店はきっともっと繁盛していると思うのだけれど。


 雨足はどんどん強まってきて、みるみるうちに小さな折り畳み傘では防げないくらいの雨量になっていった。


「なにこれ……ゲリラ豪雨? 本当に勘弁してよっ!」


 ほとんど半泣きになりながら、私は辺りをキョロキョロ見渡した。こんな雨では、駅につく頃には全身びしょ濡れになってしまうだろう。もう嫌だ。どこかに逃げ込みたい。


 気持ちも落ち込んでいるし、何か温かいものでも飲んで、ホッと一息つきたいよ……。


 とその時、黄色いのぼり旗が視界を掠めた。


「あっ。あれは……」


 表通りからのびる細い路地の奥に「チャイ」と書かれた黄色いのぼり旗が立っている。お店の姿はここからは見えないけれど、きっとあののぼり旗の向こうに喫茶店があるのだろう。


 こんなところに喫茶店があったなんて気が付かなかったな……と思いながら、細い路地に入っていく。そしてしばらく歩みを進め、カーブを曲がると、そのお店が姿を現した。


 いつの時代からここに建っているのかな、と思うほど古びた木造の建物。和洋折衷なデザインだけれど、表面の木材はボロボロだし、窓ガラスも今時見ないようなレトロな花模様が描かれた擦りガラスで、指定文化財にしたいくらい。


 入口の付近だけは少し現代風に直され、インドの象っぽい置物が置かれている。

 

 そして入口ドアの上部に取り付けられた大きな木の板には「チャイ専門店・チャイドリーム」と書かれていた。


「チャイ専門店かぁ」


 変わっているなあ。チャイの専門店だなんて。でも私、チャイは嫌いじゃない。

 むしろ好きな方だ。それに今は雨に濡れたせいで手足も冷たいし、誰かさんのせいで心も冷えきっている。


「入ろう」


 初めて入るお店はちょっと緊張する。私は傘を畳んで水気を切ると、おそるおそる薄暗い店内に足を踏み入れた。




 店内に入るなり、私はおもわず声をあげた。


「わぁ……」


 ドアを開けたときは、少し店内が暗すぎるのではないかと思っていたのだけれど、天井を見上げてその理由がわかった。天井には小さな星型のランプが散りばめられ、温かなオレンジ色の光を放っている。まるで星空みたい。


「一名様デスか」


「あ、はい」


 返事をしながら声のしたほうに視線を移すと、いつの間にか奥から店主が姿を現していた。頭にターバンを巻き、褐色の肌をし、濃い髭を生やした……正真正銘のインド人の男性だ。


 ほ、本格的……。


「奥の席、ドゾ」


 そう言って彼は、私を席へと案内してくれた。


 

 店内は外から見るより広さがあり、それぞれの席が木の仕切りで囲われ、半個室のような作りになっている。


 私はその中でも一番奥にある、角の席に案内された。この席なら誰からも見られず落ち着いて過ごせそうだ。といってもまあ、静まり返った店内にはぱっと見、他のお客の姿も見当たらないのだが……。


 メニュー表を差し出しながら、インド人の店員さんは言った。


「ドリームチャイ、おすすめネ」


 メニューには何種類ものチャイの名前が書かれているが、一番最初に大きな文字で書かれているメニューがドリームチャイだった。店名もチャイドリームだし、よっぽどこのチャイがおすすめなのだろう。


「じゃあ、そのドリームチャイでお願いします」


 私がそう言うと、店員さんは微笑みながら頷き、メニュー表を持って去って行った。



 程なくして、注文の品が届いた。


「ドリームチャイね」


 そう言って、ターバンを巻いた店員さんは私の前に一杯のチャイを差し出した。

 どうやらこのお店、この人しか店員さんがいないらしい。


 褐色の丸みを帯びた陶器に注がれたチャイの表面は白く泡立ち、茶色い粉が浮き上がっている。そして独特のスパイスの香りがぷんぷんと立ちのぼる。


「すっごい香り……」


 一杯七百円で少し高いなと思ったけれど、こんなに本格的なチャイを飲める場所はなかなかないだろう。私は慎重に、取っ手が無い鉢のような形をした、その独特な形状の陶器を持ち上げ、そっと口をつけた。


「美味しい……」


 一口飲んだだけで、身体の芯まで温まっていく。


 あまりの美味しさに、陶器を手にしたまま、また口をつける。もう一口、もう一口……。



 そして半分程飲んだ頃だろうか。

 私は強い眠気を覚えて、ようやく陶器をテーブルの上に置いた。


「ふあぁ……」


 あくびが出る。本当に、眠ってしまいそう。



 思わずテーブルの上に突っ伏す。半個室だし角の席だから、誰からも私の姿なんか見えないだろう。



 そのまま私は、眠りに誘われていった。





 ◇◇◇◇◇◇




 私はいつの間にか、知らない街の知らない噴水の前に立っていた。

 時間は日暮れ時みたいで、広場にはオレンジ色の西日が射している。


「えっ、何ここ」


 私どうしてこんなところにいるんだっけ? 思い出そうとしても、あまり頭が回らない。


 さっきまで何をしていたのか、思い出せない。


「お待たせ、美咲」


 そう声をかけられ、振り向く。

 そこにはスーツ姿で20代後半位の男性が立っていた。


「えっ……」


 誰だろう? 私はこんな人、知らない。

 身長は180cmくらいだろうか。結構な長身だ。すっと通った鼻筋と、切れ長の一重の瞳が印象的な、爽やかな笑顔の男性。


「どうしたの? まるで初めて会ったみたいな顔をして」


 そう言って彼は笑いながら、私の肩に優しく触れた。


「ほら、早く行こう。ディナーの予約をしてあるんだから」


「う、うんっ」


 全然記憶はないけれど、どうやら私はこの男性とディナーの予約をしてあるらしい。

 そもそも私、ディナーの予約をするような彼氏がいた試しがないのだけれど……。

 大人の恋って感じがして、ドキドキしちゃうな。




 ふと、自分の手足を見ると、いつもと違う服装をしていることに気づく。


 レースがあしらわれたブルーの上品なワンピースに、リボンの刺繍が施されたストッキング、ビジュー付きの黒いパンプス。手持ちのハンドバッグは驚くほどの小ささだ。


 ジーンズに無地のセーターばかり合わせ、どこへ行くにも大きなトートバッグを持ち歩いている普段の私の服装とは大違い。


 だけど、こういう服装で、彼氏とディナーに行ってみたいなあという憧れはずっと持っていた。

 ただ、自分のキャラじゃないかなと思って今まで、綺麗めな服を売っている店にさえ入ったことがないけれど。




 私はその男性に連れられて駅前のビルに入り、エレベーターに乗って、屋上のレストランへと向かった。

 彼は私の手を引き、エレベーターのボタンも自分で押して、私をエスコートしてくれた。


 彼はとても自然にそうしてくれていたけれど、どこか緊張している風にも見えた。

 私相手に何を緊張する必要があるんだろう? こんなにも紳士的なイケメンが、私なんかに。


 屋上のレストランは、創作フレンチのお店だった。すごくオシャレで、テレビや雑誌でも話題になっていたお店だ。


「ここで良かったかな?」


 彼は不安げに、私にそう尋ねた。


「もちろん……。すごく楽しみ」


 私がそう答えると、彼は本当にほっとしたように微笑んだ。




 料理はどれも、素晴らしかった。前菜のマリネも、エビのビスク風スープも、牛フィレ肉のパイ包みも。


「最高ーーーーー! 私、こんなに美味しいお料理食べたの初めて!」


 私は素直にそう言って、はしゃいだ。どうして私が彼とここでこうしているのかはわからないけれど、とにかくこの美味しさを一緒に共有したかったのだ。人生のうちで、こんな思いができることなんて、そうそうないだろう。


 「よかった、美咲が喜んでくれて。なんか待ち合わせ場所にいた時、緊張したような顔をしていたからさ」


 そう彼が言ったので、私は思わず言った。


「でも、あなただって、なんだかずっと緊張したような顔をしているけど」


「あっ……いや、その、これは」


 彼はしどろもどろになりながら照れ始めた。スーツ姿で紳士的な振る舞いの彼は私には大人びて見えたけれど、実は可愛い一面もあるらしい。私はなんだか緊張の糸が切れて、思わず笑った。


「ちょっと、どうしてそんなに笑うの?」


 そう言って彼はますます不安な顔になったけれど、私が肩を震わせて笑っているのを見て彼も面白くなってきてしまったのか、次第に笑い始めた。


「美咲といると、いつもこんなだな……ハハハ、アハハハハ」


 笑いながら、私は尋ねた。


「こんな私と、よく一緒にいるね」


 純粋に疑問だった。どういう成り行きで私とこの人が一緒にいるのかわからないけれど、こんな完璧な男性が、私と一緒にいるはずがない気がしたのだ。


「そんな美咲だから、一緒にいたいんだよ」


 彼は、そう言った。笑いながらも、真剣なまなざしで。


「美咲はいつも、人のことを思いやっているよね。そして僕がカッコ悪いところを見せても責めずに、優しく包み込んでくれる。そんな美咲が好きなんだ」


「えっ……。あ、う、うんっ」


 思わず、声がうわずった。私、好きとか言われちゃった。照れる!


「美咲といると、自然体で気を楽にしていられる。僕がそんな気持ちになれた相手は、美咲が初めてだったんだ」


 ふと、私は思い出した。



 私がバイト先のケーキ屋に初出勤した時、店長に、どうして私が面接で受かったのか質問したんだ。そしたら店長が言ってくれた。美咲ちゃんは人を自然体にできる、不思議な魅力の持ち主だから、って。


 私はその言葉が、すっごくすっごく嬉しかった。


 私はそれまで、自分に全然、自信が無かったから。



 その日から私は、店長のことを……。


 気づいたら、私の目から涙が一筋、零れ落ちていた。



「美咲、大丈夫?」


 彼は私を心配そうに見つめながら近寄り、ハンカチで涙を拭ってくれた。


「あはは、ありがとう」


 そう言ったら、彼はニッコリ笑って、私の手を優しく握った。


「僕は美咲のこと、大好きだよ。だからもっと、自分に自信を持ってほしい」


「うん……」


 自分に自信を持って。

 それは私にとても必要な言葉だ。


 それを彼はまっすぐに、私に伝えてくれる。

 私に足りないものを補ってくれる人。

 もしも彼みたいな人が私と一緒にいてくれたら、きっと私、今より幸せに、明るく生きていけるんじゃないかな。



 席に戻ると最後のデザートが運ばれてきた。

 もうすぐ、この楽しいディナーも終わりだ。




 美しいケーキを見つめる。

 幸せすぎて、胸がいっぱいで。

 この時間が、終わってほしくなくて。


 だけど終わりが訪れることは、なんとなくわかっている。


「美咲、僕は子供の頃から小心者で臆病だった。常に失敗を恐れていたし、自分に自信を持てずにいた。でも美咲と出会ってから変わったんだ。美咲は僕を素敵な人だと言ってくれた。僕に自信を持たせてくれた。それに、失敗をしてもいいんだって教えてくれた。君は僕にとって、かけがえのない人だ。だから、僕は……」


 そう言って彼は、ポケットから小さな箱を取り出した。


「これを、受け取ってほしい」


 小さな箱の中から、まばゆい光を放つ指輪が一つ、姿を現した。

 指輪にあしらわれた一粒のダイヤモンドは、まるで私と彼の願いの結晶みたいに思えた。


 もちろん、私はきっと、それを受け取るに決まっている。


「だけど、これは夢でしょう?」


 私はそう、彼に尋ねた。

 すると彼は笑顔のまま、答えた。


「夢なのかな。でももしかしたら、夢じゃないかもしれないよ」


「夢じゃなかったら、いいのにね」


 私は彼に近づいて、その背中に手を伸ばし、ぎゅっと抱きしめた。


「幸せな夢をありがとう」


 私がそう呟くと、彼はあたたかいまま、砂の粒みたいになって、風に吹かれて消えていった。


 私は涙を流している。

 悲しいのに、心が温かいような、不思議な気持ち。


 きっといつか、私は彼のような誰かと出会える。

 私のことを理解してくれて、必要としてくれて。

 そして私も相手のことを理解して、必要とするような。

 二人で一緒にいると幸せになれるような誰かと、きっと巡り合う。


 夢が、そう教えてくれた気がした。




◇◇◇◇◇◇




 目を覚ますと、私はテーブルに突っ伏してヨダレを垂らしていた。


「うひゃっ……」


 思わず辺りをキョロキョロと見渡す。囲いの外の通路には誰もいない。良かった、多分誰にも見られていない。


「はあー、なんかいい夢だったなあ……」


 ハンカチで口元を拭いながら、私はそう呟いた。


 ふと、手元に目をやる。着古したセーターの裾が伸びているのが気になる。


「夢の中で着ていたみたいな服、今度買ってみようかな」


 今までは服を買うにもどこか自分に自信が持てていなかったけれど、私にだっていいところがあるんだし、自分の着たい服くらい着てみたっていいじゃないか。

 この後、駅ビルで買い物していこうかな。


 私が前進していく限り、私の未来に楽しいことが起こる可能性は無限にあるような気がした。



 それから私は店を出た。


 お会計をするため、レジ前に立つ。するとあのターバンを巻いたインド人の店員さんがやって来た。

 やっぱりこの店、ワンオペだな。


 お金を払ってお釣りをお財布にしまっていたら、店員さんが私に尋ねた。


「よく、眠れマシたか?」


 なんだ、やっぱり見られていたのか! 途端に恥ずかしくなって赤面してしまったけれど、小さな声で答えた。


「あ、はい……。とってもよく」


「元気、なりマシたか?」




 彼にそう訊かれ、ふと私は顔をあげる。

 そっか、私このお店に入ったときは、とんでもなく落ち込んでいたんだったっけ。

 そんな事さえもすっかり忘れてしまうくらい、元気になっていた。


 あの夢のおかげで。


「はい、元気になりました! また来ますね」


 そう言って、私は店を出た。



 雨はいつの間にか上がって、空には晴れ間がのぞいている。

 きっと私の未来にだって、素敵なことがおこる。そんな気持ちになれた。


「よーし、頑張るぞ」


 私はそう呟いて、駅に向かって歩き出した。





◇◇◇◇◇◇





 その後私は、ケーキ屋のバイトをやめた。


 どうしても店長の顔を見ると、まだ素直に結婚をお祝いできない自分がいたから。

 だけど最後まで、笑顔で勤め上げることが出来た。

 大好きなバイト先だったから、円満に辞められて良かったと思う。


 


 そして、今度は眼鏡屋に勤め始めた。


 人と接する仕事が好きだから、お客様との会話が多い仕事につきたいと思ったのだ。

 お客様と一緒に眼鏡のフレームを選んだり、レンズの説明をしたり、視力を測ったり。

 仕事中、お客様を笑顔にできる瞬間がたまにあって、そういう時はやりがいを感じる。




 そして今、また新たなお客様が、お店のドアを開いた。


「いらっしゃいませー」


 声をかける。スーツ姿の長身の男性で、顔立ちは良さそうなのにオンボロの眼鏡をかけている。デザインは一昔前の感じだし、フレームの端が折れてしまったのか、テープをグルグル巻いてある。

 眼鏡屋に勤めて数か月経つが、なかなかここまで酷い眼鏡のお客様は来店しない。


「あのう、すみません」


 その男性は申し訳なさそうに私に声をかけて来た。


「実は、普段コンタクトレンズをしていたんですが、酷いドライアイになってしまったのでしばらく眼鏡をしていないといけなくて。でも、家にあるのはこの壊れかけの眼鏡だけでして、これではとても会社には……」


 相当、お困りの様子だ。


「そうだったんですね。では眼鏡探しのお手伝いをさせていただきます」


 私がそう言うと、その人はホッとしたような顔になった。


「すいません、助かります。今どんなものが流行りなのかとか、全然わからなくて……」


 なんだか聞き覚えのある声だな、と感じた。



 それから私は、眼鏡についての説明をした。流行のフレームとビジネスシーンに向いているフレームの違いや、使い勝手の違い。それからブルーライトカットのレンズについても。


「店内で気になるフレームはございますか?」


 私がそう尋ねると、彼は一つのフレームを手に取った。金属製の横長のフレームで、彼に似合いそうなものだ。


「これを試してみます」


 そう言って彼は、自分がつけていたオンボロの眼鏡を外す。


 私はその顔を見て、息をのんだ。



 彼は、あの夢の中で私と一緒にディナーへ行った人と同じ顔をしていたのだ。



 言葉を失っている私に、彼は尋ねた。


「どうかされましたか?」


「いえ……初めてお会いした気がしなくて」


 思わず気が動転して、そんなことを口走ってしまった。

 なんてことを言ってしまったのだろう。きっと変に思われてしまう、と私は焦った。


 でも彼は少し意外そうな顔をした後に、嬉しそうに微笑みながら言った。


「不思議ですね。僕も、なんだかあなたとは初めて話す気がしないんですよ。普段、初対面の人と話すのは苦手なほうなんですけどね……」


 私と彼はしばらく見つめ合い、そして笑った。



 私は予感した。


 あの夢の続きを、いつか見られる時がくるのかもしれない、と。

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