【カカン国の王都衰退と宮殿の魔石事情】
「うわぁ想像以上だ……」
ハンカチで口元を覆いながら深海は絶望的に呟いた。
路上には糞尿があふれ、腐った食品のくずが散乱し、そこらかしこに死体が廃棄されていた。
内臓や血液が路上に飛び散っている。
「一般の家にはトイレがないからな。おまるで排泄して一杯になると窓から外へ投げ捨てるのが庶民の習慣になっている」
「そりゃ疫病が流行る訳だ。王宮に水洗トイレがあるからてっきり下水も整ってると思ったんだが、これは酷い。でも何で王宮は臭いがしないんですか?門出た途端に匂い出しましたよね?」
「王宮には悪臭に反応する消臭の魔法がかけられているからな。近くにいる人間の匂いも気にならないだろ。実際には王宮の人間も町の人間と変わらず結構臭いぞ。体を洗う習慣がないからな。ちなみに俺たちはカグウが綺麗好きだから結構マメに風呂入ってるから他の奴らと一緒にしないでくれよ」
「成程、どうりで風呂に案内されなかったはずです。ところでお風呂に入る習慣がないのって宗教が関係したりしてますか?」
ラキザがポカンと口を開けて呆けた顔をした。
「どうしました?」
「いや、良く分かったなと思って」
「俺たちの世界でもそういう時代がありましたので」
「あぁ”汗や垢は自然の物、それを落とすのは神への冒涜””風呂に入ると毛穴が開きその穴から病原菌が入る”てのがウチの宗教の考え方だからな。カグウは笑って「んなことあるか」つって毎日風呂に入ってっけど。お陰で風呂入ってる俺たちは王宮じゃ変人扱いだぜ」
(中世ヨーロッパの思考だな)
「取り合えずこの汚物何とかしないと疫病が無くなりそうにはありませんね。下水、もしくは下水の代わりになる設備を作らないと」
「カグウとフィルドとチノシスも何か同じようなこと言ってたけどな。王宮に戻ったら話し聞いてみろよ」
「そうさせて貰います」
こうして悪臭を堪えつつ王都探索は予想よりも短い時間で終わった。
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「ではあの水洗トイレで流れた汚物と水は一か所に集められて火魔法で焼き払ってるんですか?」
何とも面倒くさいシステムである。
水洗トイレの水は水魔石という魔石をタンクに埋め込み水を常にタンク内に水を発生させているらしい。
この魔石と言う物、同じ大きさなら普通の宝石の100倍以上の値がするらしい。
それを王宮中に使っているのだ。
国が傾きそうなときにどれだけの散財をしているのかと言うところだ。
ちなみにお王宮の明かりも光魔石という魔石を使い明りを照らしているそうだ。
庶民はランプと蝋燭が主な光源らしい。
蝋燭の方が高価であるため主にランプの方が普及しているそうだ。
こちらの世界ではオリーブが取れる為オリーブ油を主としたランプが使われているらしい。
このカカン国は海には面していないため魚の油も取れずオリーブを光源にするしかないのだとか。
なので庶民は日が昇ると起き日が沈むと就寝する。
本来オリーブは貴重な栄養分でもある。
ランプの明かりなどにして使うなど勿体ないの極みで、少しでも栄養を蓄えるため光源を節約して主に食事にオリーブは使われる。
上流階級の料理にはオリーブをたっぷり使った食事が食卓に並ぶらしいが。
いっそのこと宮殿の光魔石を全て売って、王族貴族も庶民の様に日の出入りと共に生活することで莫大な金額が国に調達出来るとカグウは案を勧めようとしたらしいが、クロナ派閥の貴族たちの反対によりその案は御流れになったらしい。
宮殿の魔石と言えば浴場もそうで水魔石で浴槽に溜めた水を炎魔石で温めて湯を作るそうだ。
魔石は上等な者なら一生ものらしくカグウの部屋のとなりにある浴場は唯一カグウが贅を尽くして作った物らしい。
その代金は自分で捻出したと聞いて、カグウらしいと深海は思った。
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