【聖女とオマケの食事事情】

 えらく長い廊下を歩き、通されたのはこれまた良い金額がしそうな長いテーブルが置かれた食堂だった。

 テーブルの上には花が飾ってある。

 良く漫画やアニメで見るあのテーブル。

 食べる人間が何故か一番遠くの位置になるように椅子が配置されたあのテーブルだ。

 テーブルの一番遠いところにクロナ姫が座っていた。

 そして一番遠い位置にあたる席に鳴海が着席する。

 その斜め横に深海は着席を促された。

 テーブルの上には飾り気のない白パンにコーンスープ、数種類のソーセージに黄金色の飲み物がグラスに注がれていた。


「お姫様なのにこれだけ?」


 鳴海が深海に耳打ちする。


「恐らくこの世界は中世ヨーロッパ並みの食事文化何だと思う。生の食材が無く加工したものか火を通したものしか出てない。飲み物も多分これはミード、蜂蜜酒だろうな。生野菜サラダが食べられるようになったのはルネサンス期に入ってからだし、紅茶などもないことから子供でも度数の低いアルコールを飲む時代の文明しかないんだろう。

ファンタジーの世界は意外と文明が遅れてるみたいだな。おそらくこの料理でもかなり奮発しているはずだぞ。国が傾いているときに加工の物とは言え肉が出るんだからな」


「ほぇ~、じゃぁ大切に食べなきゃね」


 ニコリと微笑んで手を合わせて「いただきます」と言う鳴海の姿に深海の口元がかすかに緩む。

 俺の片割れ天使!!と言ったところだ。


 鳴海と同じよう挨拶をして食事をとる。

 基本的に味が薄い。

 いや塩味だけは強いのだがそれ以外の味を殆ど感じない。


 スパイスや香辛料を殆ど使っていないのだろう。

 コーンスープはざらざらした食感であるし、ソーセージは保存を目的としているため味重視ではなく塩辛かった。

 素材の旨味とは何だと深海は声を高々に叫びたかったが鳴海が一生懸命に食事をとっているのを見て、片割れのためにもまずはこの世界で美味い食事を確証させようと心に誓った。

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