第235話 稲葉山城

俺達は岸信周達を連れて、全軍で稲葉山城に向かった。


その数4万5千。


途中、主と兵士のいない長井道利の関城により、斎藤利治に3百の兵を預け城代を任せた。


米田城主・肥田忠政も合流した事と、東濃の城主達も兵を連れて同行しているのを目の当たりにして、岸信周も中濃と東濃は俺の勢力下にある事を実感しただろう。


そして稲葉山城の前に着くと、西濃の城主達が3万の兵を連れて俺達を待っていた。


これで7万5千人の兵が稲葉山城に集結したが、何と戦うんだ?


岸信房が見た事もない大軍に目が飛び出る程驚いて、ビビって挙動不審になり、父信周に窘められていた。


氏家卜全、稲葉一鉄、不破光治の西美濃四人衆の内3人が出迎える。(もう1人の安藤守就は俺達と同行してる。)


「すいません。西美濃を掌握しきれておらず、柳津城主・竹腰尚光が2千の兵を連れて、稲葉山城に入りました」

開口一番、氏家卜全が俺に謝るが、そんなの氏家卜全の所為じゃないだろう。


「卜全の所為じゃないだろう。気にするな」

なんて慰めていたら。


「助けてくれえええええ!」

稲葉山城から大勢の兵士や城勤めの者達が逃げて来た。


「どうした!」

と聞くまでもなかった。逃げて来た者達の後ろから、数えられない程のゴブリンが溢れ出て来た。


「化け物!」

「邪鬼か!」

驚き慌てる兵士達。


「落ち着け! 全軍戦闘体制を取れ! 出撃して、逃げて来る者を救出せよ」

俺が大声をあげると太鼓が鳴り響き、西濃・東濃の城主達の兵を尻目に、織田家の兵は一瞬の内に戦闘体制に移り、迎撃しながら救出し始めた。


織田家の兵の機敏で迅速な行動に、驚きの目で見詰める岸信周達。


しかも………。


「がはは、やっと俺の出番が来たぜ!」

癬丸を抜刀し誰よりも早く、ゴブリン達の群れに突っ込み、撫で斬りにする新免無二。


「ヤッホー」

「ヒャッハー」

「レベ上ゲ、来タヨー」

「ガンガン、行クヨー」

楽しげにゴブリンを狩っていく元倭寇達。


逃げて来る者達とゴブリンの群れに向かって

林崎甚助が走り出すと、すれ違った瞬間ゴブリンだけが斬られていく。


いつの間にか、上泉信綱の周りには首を落とされたゴブリンの死骸が散らばっていた。


電光石火の華麗な剣技、愛洲小七郎。


まるでゴブリンが自ら首を差し出す様に、舞いながら首を落とす富田勢源。


剣豪と元倭寇・小姓・近臣達は俺の大声の指示が言い終わらない内に飛び出し、その圧倒的な剣技で無双していた。


「コイツらは『ゴブリン』。恐れる事はないわ! 首を斬れば死ぬし、心臓を刺しても死ぬ。ただのモンスターよ! 落ち着いて対処すれば大丈夫!」

帰蝶が倶利伽羅剣を抜刀し、ゴブリンの首を落とし胸を突き刺し、兵士達に説明する。


流石、元冒険者だ。


義龍は悪魔に乗り移られている想定なので、倶利伽羅剣と草薙の剣を熱田神宮より借りて来ていた。(勿論こっそりね)


剣豪・元倭寇・小姓・近臣達の活躍に、ただ、ただ目を奪われる岸信周達。


「す、すげぇ」

思わず呟く岸信房。


西濃・東濃の兵士達も落ち着きを取り戻し、対処し始めるが、ゴブリンは素早く数も多いので、対人しか経験がない兵士は苦戦しているようだ。


織田家の兵士は街道のモンスター狩りを、訓練の一部としてこなしているから、しっかり対処出来ている。


「危ない!」

俺は死角から岸信周に襲い掛かったゴブリンを、草薙の剣で両断した。


「気をつけろ。意外と素早いし狡猾だ」


「あ、有り難う」

頭を下げる岸信周。


「稙宗! ここは任せたぞ」

「御意」

稙宗にここは任せてっと。実力が異なる7万人の兵士なんて指揮出来ないよ。


「無二!帰蝶! 戻れ行くぞ!」

「がはは、分かった」

「はいよー」


「さて、義龍に会いに行きますよ」

俺は岸信周達と斎藤道三を見詰めた。


斎藤道三は頷くが、岸信周達は分かってないようだ。


「儂も同行しよう。悪魔が如何程の物か見ておきたい」

上泉信綱が同行を申し出ると。


「当然、儂と政秀も行くぞ」

前田利春が自慢の槍を担ぎ、平手政秀も愛刀を抜刀した。


えええええ! やっぱり行くのかい。フラグっぽくてイヤなんだけど。


ニルも空を駆けて来て俺の近くにいたゴブリンを踏み潰した。


(我輩も行くぞ)

(有り難う、ニル)


「出番ですね」

前田玄以も近付いて来た。


お! そう言えば玄以は、悪魔対策で家臣にしたんだ。


「果心居士!」

「ほっほっほ、分かっておる。ちと多いが、まあ良かろう」

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