第227話 猿啄城攻城戦2

「おい、随時のんびり戦ってるなぁ。鵜沼城は攻略したぜ」

津田監物が鉄砲を肩に担いで、丹羽長秀に話掛けた。


「いや~、伏兵や罠もあって強引に進めないんですよ。後はやはり下にいる方が戦いは不利でして、慎重に進んでいるのですよ」


「ははは、じゃあ丁度良いな。鉄砲は下からでも問題ない。手伝うぜ。散開しろ!」

津田監物の指示で300人の鉄砲隊が散らばった。


「なんだ、お前ら、殺気も分からんのか。ほいっ! がはは」

新免無二がナイフを投げると、木々の上で隠れていた敵兵に刺さり、木の上から敵の忍びの死体が落ちてきた。


「無二さん、普通の兵士に殺気を感じるのは難しいでしよう」

鐘捲自斎は何気ない素振りで周囲を警戒している。


「ドンドン、行コー」

「レベ上ゲ、レベ上ゲー」

「オ宝ゲットダー」

元倭寇達が騒いでいる。


「そういえば、お前ら山でも平気なのか? がはは」

新免無二が元倭寇達に尋ねる。


「平気ヨー」

「楽ショー」

「ナンテ事ナイヨー」

元倭寇達が答える。


「今更ですねぇ。陸でも平気だから山でも同じですよ。なっ、辛の字」

鐘捲自斎は新免無二に答えた後、辛五郎に同意を求めた。


「ですねぇ。しかし海の中では手に負えないですよ」


「海中、強イヨー」

「負ケナイヨー」

「無敵ヨー」

「ハッハッハー」


「うっせぇわ! さあ、行くぞ! がはは」


鉄砲隊に続いて、新免無二と元倭寇達も猿啄城に向かって進む。今までの戦っていた兵士達より進撃の速度が速い。


「くくく、もう時期だな」

鉄砲隊と元倭寇達の後ろ姿を見ながら、長野業正が丹羽長秀に確認する。


「ですねぇ」

丹羽長秀がにやりと笑う。


長野業正は思うように進まない、この状況を手をこまねいていた訳ではない。


次の一手を打っていた。


激流の木曽川を越えて猿啄城の裏手から、河尻秀隆の部隊が襲撃するのだ。


その時、猿啄城が騒がしくなった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


猿啄城主多治見修理が天守閣から長野業正達を見ていた。


多治見修理はサイドワインダーの獣人だ。

サイドワインダーはヨコバイガラガラヘビの別名だ。


ガラガラヘビは危険を感じると、脱皮殻の積み重なった尾を激しく振るわせて、音を出し威嚇する。


ヨコバイガラガラヘビのヨコバイとは、アルファベットの「J」または「S」字状に体を

くねらせ、上半身を進行方向へ持ち上げた後、下半身を引き付け横向きに移動する横ばい運動の事を言う。


「ひひひ、なかなか攻めて来れまい。ここで時間を稼いで──」


多治見修理が独り言を言い、イヤな笑い声をあげて独り悦に入っていると、家臣がそれを中断した。


「修理様、裏手から敵が侵入して来ましたぁあああああああ!!」


「な、なにぃいいいい」


尻尾がガラガラと音を鳴らし、多治見修理は思わずふらふらと横に移動する。


「撤退だああああああ! みんなぁ! 堂洞へ向かええええ!」


「は、はい。みんなに伝えます!」

家臣は天守閣より走り去る。


「ひひひ、みんなを囮にして、俺は甲斐の武田信玄の元へ逃げるのさ。ひひひ」

と独り言を言ってそそくさと立ち去った。

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