第219話 妊娠

「信長様、私また妊娠したみたい」

吉乃が信忠を抱っこしながら俺に告げた。


おお! 年子じゃん。出産後もやることはやってたからなぁ。


「そうか! でかした。産後だから身体には気を付けてな」

と言って吉乃を抱き締めて、撫で撫でする。


どこを?って頭に決まってるだろう。流石にこのシチュエーションでお尻は撫で撫でしないよ


「一応、ゆずに伝えておこう。具合が悪くなったら早めにゆずに相談するんだよ」


「そうね。分かった。散歩がてら一緒にゆずのところに行きましょう」


「おう、良いねえ」


吉乃と一緒にゆずが錬金しているダンジョンへ行った。


ゆずの作業場に行くのは初めてかもねぇ。


「おや、大君がここに来るなんて珍しいのう」

そこには坂氏の村長他、坂氏の村人が大勢いた。


「おお! こんなに大勢の人が来てたんだ」


「『来てたんだ』じゃないよ! 僕一人であんな大量の銃弾を作れる訳ないだろう」

とゆずが近付いて来た。


そう言えばそうだなぁ。


「もう、注文が多くて大変だよ」

とゆずが言う。


「いや、済まんな。報酬はちゃんと貰ってるかい」


「いひひ、たんまり貰ってるぞい。出稼ぎに希望のヤツが多いぐらいよ」

坂氏の村人が教えてくれた。


「でも、良いところに来たよ。僕から報告があるんだ」


「俺も伝えたい事があって来たんだよ」


「なんだい?」


「吉乃が出産後直ぐにまた妊娠したんだ。出産後で体調がすぐれないから、ゆずに気を配って貰いたくてね」


「おお! 吉乃、おめでとう」

吉乃に抱き付くゆず。


「ありがとう」

吉乃も信忠を俺に渡してゆずを抱擁する。


「ちょうど良いな。僕も産休を取るから一緒に居よう」


えっ?


「え! 産休!………と言う事はゆずも赤ちゃんが出来たのね」


「そうなんだ。僕はその事を信長に伝えようと思ってね」


「おお! でかしたぞ」

ゆずを抱擁したいが信忠が………。


俺の気持ちを察して吉乃が信忠を俺から受け取って抱っこした。


俺はゆずを抱擁した。


そして俺と吉乃とゆずはダンジョンから小牧山城に戻った。


その時。


「信長、ずいぶん探したで。どこにおった?」

鶴姫が駆け寄って来た。


「おう! 鶴姫、どうした?」


「オタイは妊娠したけん」

胸を張って両足を適度に開き、両手を腰につけて「どうだぁ!」のポーズだ。


「お、おお! おめでとう?」


「なんだい、『おめでとう』って信長も当事者だで」


「そ、そうだね。じつは吉乃もゆずも赤ちゃんが出来たと聞いたばかりで、鶴姫もそうだと聞いたからビックリして動揺してるんだよ」


「吉乃もゆずも妊娠したのなあ。おめでとう!」

鶴姫はゆずと信忠を抱っこしている吉乃の二人を抱き締めた。


ガタッ


物音がして振り向くと帰蝶がいた。


「帰蝶!」


今の話を聞いていたのか?


「みんな! おめでとう!」

帰蝶は泣いていた。笑いたいけど悲しくて、無理やり作った笑顔は、涙が流れていて変な顔で全く笑っているようには見えなかった。


「帰蝶もそのうちきっと妊娠するよ」

俺は帰蝶を抱き締めた。


「帰蝶、ごめんなあ。美濃に一緒に行けなくなったで」

と鶴姫がすまなそうに言うが、そんな事はどうでも良いんだ。


ゆずが無言で帰蝶と俺を抱き締めて、吉乃と鶴姫はすまなそうに帰蝶を見ていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る