第216話 織田信長24歳2

「おう、信長、悪霊退散の経を探してるって小耳に挟んだんだが、本当か?」


小牧山城で突然津田監物に話し掛けられた。


津田監物は傭兵集団根来衆の頭領だ。根来衆の鉄砲隊は、今や小牧山城にに300人常駐していて、日夜鉄砲鍛治と鉄砲の訓練と指導、そして酒盛りをしている。


いくさが有ろうと無かろうと毎月一定額を払っているので、根来衆からすると俺達は超お得意さんなのだが、頭領が頻繁に拠点を抜け出しここにいて良いのか?

また、ただ酒飲みに来てるのか?


俺の両腕にはお市とお犬が腕を絡めて、その横に帰蝶がいる。ちょっと他人に会うのは恥ずかしい格好なのだ。


何でこいつ、ここに居るんだ? と言う疑問は置いておいて、「悪霊退散!」って悪魔対策のヤツだな。


「そうだ。監物、何か知ってるのか?」


「おうよ。うちの根来寺は空海・覚鑁かくばんにより伝えられた新義真言宗の総本山だ密教もやってるし、厄除けの真言ぐらいあるぜ」


「おお! 凄いじゃねえか。監物も出来るのか?」


「あはは、誰に言ってるんだ! 出来るわけねえじゃないか。あっはっはっはぁ!」


「な~んだ。だったら誰が出来るんだよ」


「おう! 良く聞いてくれた。実はよ、ここから歩いて直ぐのところに、小松寺って言う新義真言宗の寺があるんだが、そこの住職が、若いけど結構凄腕なんだよ」


「ほほう、その住職が厄除けの真言を唱えられるんだな」


「おうよ。紹介しようか?」


「是非、紹介してくれ」


と言う事で紹介されたのが………。


前田玄以げんい、18歳。カミツキガメの獣人だ。


早速、招聘して召し抱えることにした。

悪魔対策の一環だ。


前田玄以は、僧侶だが武将のもなりたかったそうなので、近臣の訓練にも積極的に参加していた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


武田信玄が北信濃侵攻と並行で、関東では上野こうずけ国へ猛攻が続き、上野国では主君である関東管領上杉憲政が、北上野に逃れた事により長野業正他諸将が離反。


武田信玄の西上野侵攻に、長野業正は上野国の豪族を糾合し大軍を編成。瓶尻において武田信玄を迎撃するが敗退し、長野業正は殿を受け持ち退却戦を演じていた。


武田信玄は再三の上野侵攻を長野業正に阻まれていた事から、ここがチャンスとばかりに、守護獣であるヒッポグリフの飛行騎馬隊を出撃させた。


ヒッポグリフに乗った飛行騎馬隊は空中から弓矢を雨の様に降らせて、長野業正の殿隊に襲い掛かる。


空中からの攻撃に長野業正の兵士達は次々と倒されていく中、孤軍奮闘する長野業正と上泉信綱達。


「最早、ここまでか」

長野業正が呟き、ヒッポグリフの前足の爪を刀で弾いた。


「業正だけでも逃げて下さい」

上泉信綱は武田信玄の地上部隊の兵士を唐竹斬りで鎧ごと左右に両断した。


「ふはははは、武士は一つでも多く敵の首を上げて、運が尽きたなら潔く討死するのみよ。行くぞ業盛!」


「はい!」


長野業正の刀が武田信玄の飛行騎馬隊の弓を弾き、息子の業盛と馬廻衆を連れて、武田信玄の地上部隊に突撃した。

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