第176話 今川軍迎撃2

「そろそろ今川義元は小天狗か大天狗も出撃させるでしょうね」

内藤興盛が伊達稙宗に言う。


伊達稙宗の本陣には、内藤興盛と小梁川宗朝がいて、伊達稙宗の指揮を補佐していた。


その他で全体を俯瞰して指揮を取れるであろう織田信光や冷泉隆豊、小梁川宗朝の息子宗秀らは、戦場に出て現場で指揮を取りながら戦っていた。


「うむ。鉄砲隊に上空の警戒を促す様に指示を送れ」

伊達稙宗小姓に指示する。


鉄砲隊の隊長は橋本一巴担っていた。伊達稙宗からの太鼓の合図を聞いた橋本一巴は鉄砲隊に上空を警戒させるが………。


「グリフォンが邪魔だのう」

上空を見て呟く。


烏天狗と空中戦を行うグリフォンが邪魔で烏天狗もなかなか打ち落とせずにいた。


かと言って、グリフォンを下げると、天狗達を鉄砲で撃ち落とすまでに、被害大きくなるので下げる訳にも行かない。


「痛し痒しか………」

新型鉄砲の熟練度高くない橋本一巴は、上空を見て歯痒い思いをしていた。


鉄砲のスペシャリストである杉谷善住坊や滝川一益、根来衆はこの戦場には参加していない。


もし、彼らや吉乃・ゆずがいればグリフォンがいても烏天狗や他の天狗が来ても撃ち落とす事が出来ていただろう。


今川義元が天狗達を召喚した。


1人の大天狗と3人の小天狗が上空に出現する。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ふぅ、やっと長篠に来たなぁ」

「何だか凄く遠回りしたんじゃない?」

俺の独り言に帰蝶が答えた。


「迂回して横から突撃するからね。遠回りは仕方ないさ」

俺と帰蝶はスレイプニルに乗っていて、上空から戦場を見ていた。


「ちょっと押されているみたいだな」

ゆずも隣でスレイプニル乗り戦場を見ていた。


「ねぇ、また新しい天狗が上空に現れたわ」

生駒吉乃も戦場を見ていて、今川軍の大天狗と小天狗の出現を視認していた。


「急いで行かないと間に合わないんじゃない?」

帰蝶が俺に言う。


「う~ん。急いでも間に合わなそうだな。取り敢えず急がせるが、天狗対策はしておこう」

俺は蜻蛉トンボを21匹召喚した。


「天狗達を倒せ!」

「了解デス!」

俺の命令で空中戦のスペシャリスト蜻蛉トンボ達が、進化した蜻蛉トンボの王を先頭にV字型の隊形で編隊を組み、天狗達に向かって、一直線に高速で飛んで行った。


眷属化して進化した蟲達は王種になっていて、単独でも脅威の存在だ。蜻蛉トンボ特有の卓越した飛行能力に加えて短距離の転移も習得している。



「アネサン、信長様キター」

元倭寇の1人が柳葉刀りゅうようとうで兜ごと敵の頭を叩き潰し鶴姫に告げる。


「ほんまな。どこにおるの?」

鶴姫は大太刀で敵の首を斬り飛ばし、倭寇を見る。


「アッチ、見テー」

倭寇は上空の蜻蛉トンボを指差す。


「ほんまやけん。あっちいくでぇー!」

鶴姫は蜻蛉トンボが来た方向に向きを変えて元倭寇達に指示する。


「アネサン! 待ッテー」

元倭寇の頭領9人と人魚2人、500人の元倭寇達は鶴姫に従い、信長の来る方向に向きを変えた。


この時、伊達稙宗軍の最高戦力である倭寇達が、向きを変えずに真っ直ぐ進んで今川軍の本陣を攻撃すれば、今川義元を倒せた事は誰も知らない。


一方、大天狗も蜻蛉トンボを視認した。

「何だ! あの蟲達は」


大天狗は右手に持った羽団扇はうちわ

蜻蛉トンボに向かって振ると、突風が吹き荒れた。


蜻蛉トンボ達は瞬間的に高度を上げて上空に逃れ、蜻蛉トンボ王の姿は消えた。大天狗は蜻蛉トンボ王が消えたのに気付かず、蜻蛉トンボ達に次の攻撃をする為、羽団扇はうちわを振り上げ──。


大天狗の後ろに転移していた蜻蛉トンボ王が、大天狗身体を脚で拘束し、大天狗の頭を噛み砕いていた。

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