第143話 村木砦の戦い1

俺が妻達と小姓を連れて城を出てニルを呼ぶと、ニルとスレイプニル達が空を駆けてやって来て、一緒に吉乃がユニコーンに乗って飛んで来る。


そして、城から近臣達が飛び出して来た。


「がはは、いくさだな。許松、生き死にの際を楽しもうぜ」

「無二サン、レベ上ゲ、サイコーヨ」

新免無二と許松が一番乗りだ。スレイプニルに乗りながら会話している。


「へい!幾多の戦、おいらは行くさ、絆を胸にまっしぐら!」

塙直政も変なラップを口ずさみスレイプニルに乗る。


そこに10人の小天狗が空から舞い降りてきて。

「信長様、レベ上げですかー?」

天一てんいちが言った。


「ん~、レベ上げみたいなもんだ。付いて来い」


小天狗の名前は何だか長く言い難くて覚えられなかったので、天一てんいちから天十てんじゅうと新たに付けて呼んでいる。まあ、愛称みたいなものだ。


後で考えたら麻雀のレートみたいだと思ったが、本人達も気にいっている様子なので、まあいいかと思っている。


俺達は一斉に空を駆けると、安藤守就達の驚きの声が下から微かに聞こえてきた。




暫く空を駆けて行くと目的の寺本城が見えてきたが、海側に俺の水軍の船と、城と対峙している兵達が見えたので降りてみた。


「信長様、お早いお着きで………」

加藤順盛と。


「信長様、待っとだで」

佐治為景の兵達だ。


戸田康光・尭光親子もいる。佐治為景達は水軍で出陣したみたいだ。寺本城は海沿いにある城なので、熱田の港から船に乗って海沿いに来たらしい。


加藤順盛は熱田羽城から500の兵を連れて来て、佐治為景は水軍として500の兵を率いていた。


「順盛、随分兵を増やせたな」


「儲けさせて貰ってますのでこのくらいは何でもありません。早く生駒家に兵数でも追い付きたいですからね」


「おお、そうか。それは大変良いことだ。だが、俺は直接村木に行ってくれと言ってたはずだぞ。なぜここにいる?」


「通り道やから、ついでに寄ったんや。城をぶっ壊すと聞いたんや、大筒を使うのを楽しみにしとりますで」

佐治為景が楽しそうに話す。


為景がそう言うなら、まあいいか。


「んじゃ為景に最終通告を頼むかな。花井氏に『今、降伏するなら許すが、このまま今川に着くなら今後の降伏は許さない』って言って来て」


「分かったで、任せてちょ」

佐治為景がそう言うと、気軽に寺本城に歩いて行った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


暫くして佐治為景が戻って来ると。

「やはりあかんでした。城をぶち壊すしかあらせん」

と楽しそうに言う。


余程、大砲で城を壊すところを見たいんだなぁ。花井に何て言ったんだろう。ちょっと怪しいぞ。


まあ、それはそれとして、遣ることは粛々とこなそう。


「果心居士、大砲設置宜しく」

俺が言うと果心居士が現れて大砲を10門城に向かって影から取り出した。


「ほっほっほ、これでいいかな」


「良い配置だ。有り難う。善住坊、大砲発射準備」


「おう、任せとけ。良し、準備だ」

杉谷善住坊の合図で、若手の近臣達が大砲の発射準備を始めた。


「大砲発射準備完了!」

蜂屋頼隆が善住坊に準備完了の報告をすると、善住坊は俺を見る。


発射しても良いか?と暗に聞いてる。

俺は頷く。


「大砲発射!!!」


轟音が連続で鳴り響き、あたり一面が黒煙で見えなくなった。


多分この世界で一番初めに大砲を使ったいくさだろう。


「果心居士、風を頼む」


「ほっほっほ、任せておけ」


黒煙が風で流されると粉々に砕けた城壁と城門が見えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る