第81話 戦勝報告2
養徳院の要望で平手政秀が続きを歌い出す。
「それでは、『信長様が率いてる、信長24人衆。合わせて僅か25人、2000の今川蹴散らした。戦慄の、軍馬に乗った信長は、軍馬が敵を撥ね飛ばし、信長様が斬り倒す』」
「う~ん、良いわねぇ」
「最高ですねぇ。続き続き」
「大将首をあげたのは、暴風起こす二刀流、狂乱の武士、新免無二だ。物干し竿を振り回し、並みいる敵を斬り殺す、無言の剣士佐々木小次郎。長い朱槍で突き倒す、天下御免の傾奇者、滝川慶次ここに有り。単眼坊主の鉄の棒、敵の鎧を打ち砕く、根來の杉谷善住坊」
「ねぇねぇ。ツネちゃんのはないのぉ?」
と養徳院。
「有ります。有りま──」
「もういいよ。それぐらいにしよう。養徳院、ツネの活躍は後で聞いてください」
「ええええ、残念だけどそうしますわ」
養徳院は残念そうだが、報告を聞くのが先決だ。
「何だかおかしいな」
俺が呟くと。
「確かに解せませんな」
と山本勘助が応えた。
「何がぁ?」
と俺達の言葉に反応する養徳院。
「戦勝報告の時点で噂が流れて、歌まで出来るのは早すぎる」
と俺が答えると。
「はい、噂が流れるのは早くて半月、通常は
と山本勘助が補足する。
「誰かが事前に準備してたとしか思えませんな」
と快川紹喜が口を開いた。
「まず、信秀様で間違いないでしょうな。これで、跡継ぎが信長様になっても反対する人は少なくなる」
と真田幸隆が確信にせまる。
「ふむ、道理で何かおかしいと思ったんだ。あの武略に優れた信光叔父が、勝家の下で合戦に参加するのに違和感があった」
と俺が話すと。
「確かにそうですな、通常は格のうえからも信光が大将なるところです。そうしなかったのは信行の実力を図るのと、信行が危なくなった時に、信長様が参戦したら、手柄を隠蔽出来ない様にしたのでしょう」
と山本勘助が解説する。
山本勘助は叔父も弟も内々では呼び捨てにする。天下布武の障害として、敵として認定してるみたいだ。
「くっ、親父の手のひらの上で踊ってたって事かぁ 。俺が参戦しなかったら、信光叔父が敵を蹴散らして、今川軍の背後から挟撃したんだろうな」
「なるほどぉ、流石信秀様よねぇ」
と養徳院。
「ところで、平手殿、論功行賞はどうなりました?」
と山本勘助が政秀に聞いた。
「信長様は那古野城領主復活で、林秀貞は家老の任を解かれ居城である田幡城に帰る事になりました」
「ふ~ん、代わりの筆頭家老は誰だ」
「代わりの筆頭家老はいません。信長様には出来の良い家臣がいるみたいだから、信長様に任せるとの事でした」
平手政秀は俺の問いに答えた。
「晴れて那古野城の事は信長様の自由になりますな」
と沢彦宗恩はにこやかに言う。
「城下の政策も志賀城同様に進めましょう」
と笑顔の快川紹喜。
「ところで筆頭家老は誰にするんだ?」
と俺を向いて尋ねる海野棟綱。
「そうねぇ、誰か決めておかないと、色々問題がありますからねぇ」
と養徳院は俺の顔を見る。
俺は無言で目を瞑り家臣達の意見を待つ。
「海野殿が順当でしょうな。ここで、私を手伝っていただいたので、尾張国の政務も覚えて頂いているでしょう」
平手政秀が顎に手をやりながら答えた。
「まあ、今のメンバーでは順当だろう」
山本勘助はうんうんと頷く。
「まあ、当面は仮で棟綱に任せるよ。幸隆と一緒に林秀貞から引き継ぎを受けてくれ」
「「承知しました」」
と海野棟綱と真田幸隆。
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