第78話 初陣3

信行の切り札グリフォンが現れたが、グリフォンは信行の前から動かない為、全体的には今川軍が圧倒的に優勢だ。


信行は鷹狩りが好きで得意としていた。

そんな信行の為に母土田御前が大枚を叩いて買い与えた切り札グリフォン。


信行自分で身を守り、グリフォンが空中から敵軍を攻撃出来れば、形勢は変わったかも知れないが、臆病で声だけ上げる、自分の身も自らの力で守れない信行は駄目だな。大将の器ではない。


(ニル、グリフォンが相手だとどうだ?)

俺は念話で騎乗しているスレイプニルのニルに問いかける。


(うむ、敗けはしないが、空中では奴の方が早い故に手こずるな)


(そうか……)


飛行能力が上の方が優位に戦えるからな。しかし、俺には蜻蛉トンボがいる。蜻蛉トンボの方がグリフォンより断然飛行能力は上だ。


そして孤軍奮闘する柴田勝家を見つけた。戦闘能力はありそうだ。やはり、織田家相続後に家臣にしておきたい人材だ。


なんて見ていたら、

「そろそろ、頃合いですな」

山本勘助が俺の横に並んだ。


今回の戦いの軍師は勘助だ。戦い方やいくさに参入するタイミングは任せている。


「うむ、そうだな」

俺は後方で控える家臣達に振り返った。


臆してる者は誰もいない。闘志をみなぎらせ今か今かと待ち望む者達。


「出撃だ! ぶちかませえええええ!」


「おおおおおお」


織田信光が戦う敵軍の後ろに現れた俺達は、走りながら銃弾を込める50人の鉄砲隊の後ろから悠然と進む。


撃てええええ!


ライフルの轟音が鳴り響き煙が立ち込める。黒色火薬は大量の煙を発生するのだ。


ライフルの銃弾はフルメタルジャケットだ。円錐形である鉛の弾頭の周りを鉄でコーティングしている。この時代の鉄砲の威力の比ではない。


敵を貫通する弾丸はその後ろの敵も殺傷していく。後方から攻撃された敵軍が慌てふためく。


1回で50人づつ頭を撃ち抜かれたからね。敵の人数も減っている。


黒色火薬の立ち込める煙は前が全く見えなくなる。その煙を果心居士の魔法の風で敵側に流れていく。その煙のと一緒に俺達は進む。


そして横一列に並んで煙の中から敵の前に現れる、20数名のスレイプニルに騎乗する俺達。


「行くぞ者共! ド派手にぶちかまそうぜええええええええ!!!」


「うおおおおおおおおおおおお!!!」


先頭は勿論俺だ。

ニルの速度が一番速いからね。


狼狽える敵軍にぶち当たり、撥ね飛ばすニル。縦横無尽に無双する俺達。誰もスレイプニル達の迫力に馬力に太刀打ち出来ないし、左右から近付く敵は刀と槍の餌食だ。


「信光叔父き! 助け来たぜ」

俺は織田信光を見つけ走り寄った。


「敵が崩れ出したと思ったら、信長、お前か! 助かったぞ。有り難う。よし、共に今川軍本体に後ろから突撃しようぞ」


「了解です、先に行ってます。後から来てください」


「者共! 次は本体だあああああ!」

俺は踵を返し今川軍本体の後方に向かう。

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