第64話 鉄砲の改良

この時代の鉄砲は火縄銃だ。


引き金を引くと仕掛けが作動して、火縄が発射薬に接して点火する構造だから、雨が降ると火縄が濡れて点火が上手くいかない。


また、銃口から火薬と丸い鉛玉を入れて、槊杖さくじょうと言う棒で押し込む前装式。


この前装式は弾丸を装填するのに時間がかかる。その為、日本の歴史では長篠の戦いで、織田信長は武田の騎馬隊に対して、鉄砲三段撃ちで倒した言われている。定かでは無いけどね。


鉄砲三段撃ちは縦に三人並び、1人が撃ったら後ろの人と交代していき3回連続で撃つ方式だ。1人目は撃った後に弾丸を装填してまた撃つが、3回連続で撃った後に直ぐに撃てるかは分からんよ。まあ、3回連続までは確実だろう。


因みに織田信長は、弾丸と火薬を紙などでパッケージ化した『早合はやごう』を使って、弾丸の装填時間を短くしたとも言われている。


そして、ライフリングの無い銃身から発射される丸い鉛玉は、空気抵抗を受けて遠くまで飛び難く、回転しない鉛玉は野球のボールのように変化して目標に当たり難い。


ライフリングとは銃身内につける螺旋状の溝だ。この溝をつける事で銃弾は回転する。


つまり……。


鉄砲を雨に強く、装填に時間がかからず、遠くまで飛んで、命中率を高くしたいのだ。


雨に強くする為、銃弾に衝撃で発火する雷管らいかんをつけて、銃弾に衝撃を与える事で点火する方式にする。


この時、薬莢底部中心の雷管を叩く事で衝撃を与えるのがセンターファイア方式だ。


装填時間を短くする為、薬莢に火薬と弾頭、雷管をパッケージ化した銃弾を、銃の後ろにセットする後装式にする。これは複雑な構造は難しいので、ボルトアクション方式を考えている。


ボルトアクション方式とは、遊底ボルトを手動で操作することで弾薬の装填、排出を行う機構だ。


遊底ボルトとは、発射薬が燃焼する間、銃身内の発射薬の後ろをブロックする部品。


ボルトアクションは説明が難しいけど、祭や縁日で使われる、射的に使うコルクライフルのレバーの様な物がついていて、操作するイメージかなぁ。


遠くまで飛ばす為、弾頭を空気抵抗の少ない円錐形にする。


命中率を高くする為、ライフリングする。


と言う訳でゆずと果心居士を連れて、志賀城下にある、根来衆50人いる鍛冶場にやって来た。帰蝶もついて来たのは言うまでもない。


ここで造りたい鉄砲のイメージをみんなに伝えた。


「今の鉄砲はこんな欠点があるから、改良したいんだよねぇ」


「へ? 信長さん、言いたい事は分かるが、何言ってんの。それを鉄砲鍛冶はみんな考えてるけど出来ないんだよ」

根来衆の1人が呆れる。


「いやこんな風にしてさ……」


「え、そうか! そんな考えも有るのか」

「後装式ねぇ、成る程」

「ライフリングかぁ」

「ほほう、ボルトアクションって面白そうだな」

「円錐形の弾丸っていいのか?」

「雷管って言う仕組みが出来れば何とかなるか!」

次々に根来衆達が喋りだす。


「僕は衝撃で発火する火薬って聞いた事無いよ。そんな魔法みたいな物は調合出来ないぞ」

とゆずが言い出した。


成る程、普通の火薬と違うのか。

どんな、ものが必要か分からんなぁ。

魔法みたいな物かぁ………。

で、困った時は果心居士先生だ。


「果心居士、衝撃で爆発する物はどっかにないかね?」


「ほっほっほ、聞いた事無いが、要は叩いたら爆発すれば良いんだろ」


「うん、そう。」


「ほっほっほ、じゃあ爆発の魔法の魔方陣を改良すれば良いぞ」


「お、出来そうか! でも銃弾の薬莢の底部につけるから、かなり小さいぞ」


「ほっほっほ、爆発って言っても微小の爆発だろう」


「そうだよ」


「ほっほっほ、何とかなるだろう。ゆずに教えてやろう」


流石ファンタジーだ。

そして、なんて素敵な御都合主義!


ついでに火縄銃と同じ火縄マッチロック式で良いので、大砲の作成もお願いしておいた。


根来衆が50人も居るんだ何とかなるだろう。材料も沢山あるしね。

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