第40話 林秀貞
俺が連れてきた家臣の俸給と鉄砲購入の為に収入を増やす必要がある。
ダンジョン攻略で収入を得る方策が出来た。
芋虫と蜘蛛の糸から機織り布を作る事と蜜蜂の蜂蜜。モンスターの素材を売る事だ。
早速、筆頭家老の林秀貞に実行して貰う為に提言する事にした。10歳の俺ではまだ統治出来ない事から、実質は筆頭家老の林秀貞が統治しているからだ。
いつも冷たい目で俺を見ている林秀貞はなんとなく苦手なので、平手政秀に同席して貰った。
先ず楽市楽座の提言を行ったところ、林秀貞は難しい顔をする。
「吉法師様、それは出来かねます。南近江の六角氏が実施している事は存じております。確かに経済が活性化し収入が増えるでしょう。しかし、商業権を持つ寺社仏閣の既得権益を侵害し彼らと敵対する事に繋がります。信秀様が必死に領地拡大の為に戦っている今、寺社仏閣と敵対する事は危険です。信秀様がお許しにならないでしょう」
平手政秀も反論出来る余地は無いようだ。
うむ、そうか。簡単にはいかんのだな。俺がトップにならないと実施出来ない政策かぁ。
林秀貞も色々考えているんだなぁ。流石筆頭家老だ。
「では、芋虫のモンスターを使役して、吐き出す糸を織る事で、全く新しい布を作る事が出来る。その布を売って収入を増やす。どうだ!」
「はぁ、モ、モンスター? 話しになりませんな。仮に出来たとしても、その様な事が周りの国に知れれば織田家が笑い者になります。そもそも領主足るもの商売など考える必要はありません。戦国の世故に武力を磨き、合戦に勝つ事をお考えください」
「しかし秀貞、
平手政秀が反論してくれた。
「政秀殿、現時点で、それは我々家老が考える事。元服を終え成長された若君ならいざ知らず。まだ歳の若い10歳の吉法師様には、ひたすら武芸を研いていただく事が肝要」
むむ林秀貞の意見は正論だ。確かに俺はまだ10歳なんだよなぁ。
「そして、そのような外道の政策は、織田家嫡男の吉法師様には相応しくありません。やるなら政秀殿の志賀城でやれば良い」
外道? うーん、モンスターを使役すのは武士には受け入れられないか。こりゃ蜂蜜も駄目だな。
「吉法師様、恐れ入りますが。吉法師様が召し抱えた
「破落戸、クズだと!」
俺は林秀貞を睨む。
秀貞は俺の睨みを無視し話を続ける。
「そうでは有りませぬか、富田勢源殿と愛洲小七郎殿を除けば破落戸としか言い様がありません」
「秀貞、言い過ぎだぞ!」
俺は叫んだが秀貞は止まらない。
「いいえ、今日は言わせていただきます。先ずは家柄も知れない百姓達」
高坂昌信と木下藤吉郎かな。
「隻眼で足が不自由な男」
山本勘助だ。
「派手で奇抜な服の男」
滝川慶次だな。
「粗暴で武士らしからぬ男」
新免無二と鐘捲自斎かな。
「信秀様を
果心居士だ。
「口も聞かず礼儀知らずの男達」
佐々木小次郎だな。もしかして林崎甚助もか? あいつら無口でコミュ障みたいなところがあるからな。
「昼間から酒を飲む酔っぱらい達」
杉谷善住坊は確実として、後は山本勘助、他にもいるのか?
「破落戸と言わずして、何と言いましょう」
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