第10話 百千三太夫

戸沢白雲斎の仙術の転移で、伊賀の里に飛んだ俺達。


同行しているのは、白雲斎、果心居士、慶次、佐助の4人だ。


着いたところは、山頂にある小さな隠れ里の様だ。


里の中に気軽に入って行く白雲斎と果心居士、その後を俺と無表情の佐助がついて行く、最後に慶次が暢気に周りを見ながら歩く。


里の者も見かけるが俺達には無関心で各自の作業を止める者もいない。


白雲斎の仙術、または果心居士の魔術で認識阻害にしているのかも知れない。


「よう!」


里の奥にある大きめの屋敷から黒装束の老人が歩いて来た。白雲斎と似た服だ。


「はっはっは、三太夫久し振りだなぁ」

白雲斎が右手を上げて話し掛けた。


「果心居士も一緒とはどんな用事だ」


「はっはっは、面白い話があるのだ。ちょいと付き合え」


「後ろのご仁の話かな」


「はっはっは、そうそう、紹介しよう。佐助は分かってると思うので省略するが、尾張の織田吉法師と甲賀の滝川慶次だ」


あれ、白雲斎に慶次を紹介したっけ?

まあいいか。


「初めて織田吉法師と申します」

俺が挨拶すると、慶次も大きな槍を肩に担いだまま名前を名乗った。


「まぁまぁ、立ち話も何だから、屋敷に入ってくれ」

そう言うと三太夫が俺達に背を向けて屋敷に入って行く。



屋敷の中にある部屋でお茶を飲みながら、白雲斎が三太夫に俺達が来た目的を説明してくれた。合わせて白雲斎に三太夫の事を説明して貰った。


三太夫は伊賀流忍術の開祖で白雲斎と同じく仙人らしい。しかも白雲斎が闡教せんきょうで三太夫が截教せっきょうの仙人。だけど封神演義の様に仲が悪くは無いみたいだ。


白雲斎も三太夫も忍術を極めるのに人の一生では足りず、不老不死を求めて仙人になったとのこと。


と言う事で、この世界では、百千三太夫と百千丹波別人だ。百千三太夫は伊賀流の開祖で百千丹波は伊賀の上忍なのだ。


「儂も吉法師の手助けをしても良いが、仙人も何かと忙しくてな、白雲斎と同様に弟子の一人を使わそう」

百千三太夫はそう言うと何やら呟く。


ドロン!


と音が出た様に三太夫の後ろに白い煙が現れて中から髪がボサボサの大きい男が現れた。


「参上仕り候」


「五右衛門、お主はこれからこの吉法師殿に従い、仙術修行の一環として吉法師殿の宿願達成の手助けをしなさい」

と三太夫が五右衛門に言った。


「御意にござる」


「吉法師殿、この男の名は石川五右衛門、鬼と人間のハーフ鬼童丸だ。佐助と同じ仙術を修行中の道士であり忍者でもある。天下布武を達成す為に役にたつであろう」


石川五右衛門!!!


キタァーーーーーーー!!!


「五右衛門、俺が吉法師だ。よしなに頼む」


「御意にござる」


「はっはっは、良かったのう吉法師。三太夫、これからちょいと付き合ってくれ、伊賀の三上忍にも吉法師を紹介するのだ」

白雲斎が三太夫を誘う。


「うむ、良かろう。五右衛門行くぞ」


「御意」


「ほっほっほ、それでは始めに百千丹波のところに行くか」

果心居士の言葉で俺達は百千丹波を訪ねる事となった。

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