異世界戦国記~大うつけ者で戦闘スキルが無いと追い出されたけど天下布武やっちゃうよ~

ボルトコボルト

第1話 信秀

将軍足利家の家督争いは、大陸が東西に分かれて争う長期の大きな争いとなった。


この戦乱は地方にも波及し、混乱に乗じた地方の権力者達は自領拡大の為、周辺国を侵略する。


世の中は下剋上が当たり前の群雄割拠の戦国時代に突入していた。


そんな時代の中、小国である尾張の片隅で……。


「痛っ!」

赤ちゃんに乳首を噛まれた若い乳母が、赤ちゃんをベッドに戻すと泣きながら部屋を飛び出した。


「うわぁああん、信秀様ぁあああ!」

乳首を出しながら主の部屋に駆け込む乳母。


「な、なんだ? …ま、またか……」

顕になった乳房に驚き凝視するが、思い当たる事もあって事態を把握した信秀。


信秀は小国尾張の南西部にあるニ郡を治める領主だ。


「もう、嫌ですぅ。乳首が噛みきられちゃいますぅううう!ほら見てくださいなぁ、こんなになっちゃいましたぁ」


信秀にすり寄り腕を抱いて、噛まれた血が滲む乳首を見せつける乳母。


信秀は野心があって精力的に領地を拡げる遣り手の領主だが、女にだらしなく女に手を出して側室にする男だ。


戦国の領主は妻が何人いても許される。むしろ多くの妻に子供を生ませて、一族の戦力を増やすとともに政略結婚で勢力を拡大する事から、奨励される傾向にあった。


若い乳母は乳首が痛い事は痛いが、むしろ形も良い自慢の豊満な乳房を信秀に見せつけて誘惑している。


「そうかぁ、それは大変だったなぁ」信秀は思わず乳母の乳房に手を伸ばすが、戸惑い手を止めた。


「触っても良いのですよ」

薄笑いで右の乳房をズイと前に出す乳母。


「うむ、どれどれもっとよく見せてごらん……、ふむぅ、成る程……」

信秀は傷付いた乳首の右の乳房を撫でて、左の乳房を揉みしだきながら、鼻の下を伸ばす。


その時……。


ガタン!


「何事かしら!」

急に奥の扉が開いて女が部屋に入って来た。

女の名は信秀の正室土田御前。


件の赤ちゃん吉法師の実の母親だが、生まれて初めて授乳をした際、乳首を噛まれて吉法師を苦手としている。


「むっ、いや、これは……」

乳母の乳房から手を引っ込める信秀。


下を向いて無言の乳母。


「そのはしたない下品な胸を、直ぐにしまいなさい!」

キッと目を見開き乳母を睨む土田御前。


いそいそと、はだけた胸を隠す様にしまう乳母。


「吉法師が、また乳母の乳首を噛んだのだよ」

信秀は土田御前に向き直り真顔で説明する。


「あら、またなのね、私はてっきり下品な女が信秀様に言い寄っている様に見えましたわ」

土田御前は乳母を睨みながら信秀と会話する。


そして乳母に言い放った。

「あなたは乳母を首にします! 出ていきなさい!」


「ひゃいぃ」

土田御前のあまりの剣幕に驚き部屋を出ていく乳母。


信秀は残念そうに乳母に後ろ姿を見ていた。


「吉法師は嫡男だ。たっぷり乳を飲ませて、元気に育てたいのだがなぁ……」

ちょっと考え事をしながら、右上を何気なく見る信秀。


「おっ、そうだ! 池田恒利の妻である養徳院が妊娠したと聞いてるぞ、乳母を頼もう」

手をうち土田御前を見る信秀。


「そうねぇ、生まれた子供もそのまま吉法師の小姓として仕えさせれば良いわ」

大きなお腹を撫でながら、苦笑いで土田御前は言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る