第120話 もう少しおバカだったら、何事もなく平和に暮らせたというのにね……


「では……いきますっ!」


 フィーリアのかけ声と共に、炎が【グプ】の死体と骸骨の山を焼き始める。

 精霊の炎は死してなお強靭な高度を誇る【グプ】を容易く溶かし、人骨を跡形もなく燃やす。

 それを不安そうな目で見ながら、フィーリアは言った。


「あの、これでよろしかったのでしょうか? なんだか申し訳ない気が……」

「気にするな。これだけの量を埋めるのは一苦労だし、火で浄化するのは埋葬として上等な部類だ。ましてや、それが精霊の炎なら文句を言うのは罰当たりってもんだ。そうだろう?」


「勿論です! 精霊さんの炎は不浄を焼き払う、苛烈にして神聖な炎ですからっ!」

「なら、なおさら問題はないな。あの虫と一緒に燃やすのは悪いが、そこは勘弁してもらおう」


 もしかしたら、ザマァ見ろと喜んでいるかもしれないしと、エドガーは燃えていく死体を見ながら思う。きっとここで死んだ者達も、胸がすく思いだろう。こうして仇は取ったのだし、聖なる炎で身と心を清め、どうか安らかに眠ってほしい。


「ああ〜、しんどかった。ありがとよ、アメリア。お陰で助かったぜ」

「しんどいで済むような怪我じゃなかったけど。いくら治せるからって、もう少し考えて戦いなよ」

「仕方ねぇだろ。怪我を気にして勝てるような奴じゃなかったんだからよ」


 グルグルと腕を回すジーナに、アメリアは諦めたような息を吐く。


 アメリアの治療魔法により、骨が露出するほど溶けていたジーナの腕は、すっかり元どおりに戻っていた。全身の焼き爛れも、子供のようなツルツルとした肌になっている。


 ジーナは気分良く身体を動かしているが、治療したアメリアは頭を抱えていた。治せるからといってこれからも無茶をされては、こちらが心労で倒れてしまう。特に、顔の爛れは正直焦った。久しぶりに責任を感じる治療に、アメリアは珍しく疲労を感じていた。


 同じように治療を見守っていたネコタも、ほっと息を吐いた。


「ありがとうございます、アメリアさん。本当に良かったです。僕のせいで一生に残る傷を残してしまったかと……」

「心配しすぎだ。あれくらいの傷だったら構いやしねぇよ。むしろ箔がつくってもんだろ」

「気にしますよ! ていうか、ジーナさんも気にしてくださいよ! 女性の顔に傷が残るって相当なことですからっ!」


 叱るネコタに、コクコクとアメリアも静かに頷く。

 それに、ジーナは面倒そうな表情を浮かべた。


「あたしが気にしてねぇって言ってんだから、別にいいじゃねぇか。大した問題があるわけでもねぇし」

「いやいや、大有りですからっ。世の中、顔に傷があるってだけで引く男だっているんですよ。特にこの世界だと、嫁の貰い手が無くなるでしょう?」


「それこそ余計なお世話だ。それに、仮にそうなったら、お前があたしを貰えば済む話だろ。なーんてな。わはははははははは!」

「………………」


 ネコタは無言だった。ジーナの笑い声が空虚に響いた。そして、アメリアはワクワクした目で二人を見ていた。


「……ラッシュさーん! 治療が終わりましたし、そろそろ行きませんか?」

「待て。おい、その態度はどういう意味だ?」


 武道に生き、女としての幸せはとうに捨てているとはいえ、こうもあからさまな態度を取られてはさすがに腹が立つ。

 ジーナはネコタの胸ぐらを掴み上げ、脅した。


「おう、どういう意味だって聞いてんだよ。あたしを嫁に貰うのはそんなに嫌だってか。あん?」

「い、いえ、決してそういう意味では……!」

「私、修行の一環で祭祀の教育も受けたから、祝福も出来るよ? 二人がその気なら、喜んで務めるよ?」


「必要ありませんっ! 絶対にあり得ませんので!」

「絶対にねぇってのはどういうことだぁ!? あたしじゃ不満だってか、あああ!?」

「ぐぇぇ……ぐ、ぐるじぃ……!」


 ジーナは本気でネコタを締め上げた。女として求められたい訳ではないが、ここまで強く否定されたらそれはそれで傷つく、複雑な女心である。


 とはいえ、ネコタの気持ちも分からなくはない。

 鋼鉄のような身体を持つ巨大な魔物を、拳で肉片に変える事が出来る女など、死んでも妻にはしたくないだろう。夫婦喧嘩になったら絶対に勝てない。些細な切っ掛けで殴殺不可避。


 今にもジーナの私刑が始まりそうなその時、ラッシュがエドガーとフィーリアを連れて近寄ってきた。


「おいおい、治ったからってはしゃぎ過ぎだろ。何を争ってるんだ?」

「あのね。ジーナが求婚して、ネコタが嫌だって……」

「アメリアさん! 説明するならちゃんとして! 飛躍しすぎ!」


 しかし、事態を把握するにはそれで十分だったらしい。

 ラッシュとエドガーは、全てを理解し頷いた。


「ああ〜、なるほど。それは仕方ないな。完全にジーナが悪い」

「だよなぁ。これはいくらなんでもネコタが可哀想だぜ。俺だって断るもん」

「テメェら……揃いも揃って……ッ!!」


「え、えっと……わっ、私は有りだと思いますよっ! ほら、ジーナさんって意外と優しいし……料理や掃除は……出来ませんけど……でも武術は……普段は役に立たなそう……お金は稼げないし、お酒を飲んでばかりで……やだ、だいぶろくでもない……あっ。 

 でもほら、誰かに襲われたら絶対守ってくれるじゃないですか! これほど頼りになるお嫁さんはいませんよ!」


 フィーリアが喋れば喋るほど、ヒクヒクとジーナの額がヒクつく。彼女は火に油を注いでいるだけだと気付いてほしい。


 完全にジーナが切れる前に、ラッシュが言った。


「ほら、その辺にしておけ。女神の祭壇の前だぞ。アルマンディに見られていたらどうする」

「クッ! テメェら、覚えておけよ。ここから出たらキッチリ問い詰めるからな」


 さすがのジーナも世界を作った女神に見苦しい所を見せる蛮勇さは無かった。不敬と取られ、神罰を与えられたらたまったものではない。さりげなくそれを伝えたラッシュのファインプレーである。


 しかし、ラッシュは分かっていない。女神はむしろ、面白がる。


「さぁ行こうぜ。全員、落ちないようにな」


【グプ】の巣から離れ、六人は湖へ向かった。

 清廉さを感じる、どこまでも澄んだ湖。天井から溢れてくる光を反射してキラキラと輝き、その湖の中央まで長い橋が伸びている。足を踏み入れることも躊躇うような、幻想的な光景だった。


 自然と気を引き締め、六人は橋を渡り始めた。橋の上を歩いているだけで、自分達の身から穢れが払われているような気さえする。自然と心が落ち着き、周りを見渡す余裕が出来た。広い湖を見渡し、その美しさを目で楽しむ。そうしている間に、あっさりと湖の中央に辿り着いた。


 湖の中央に拵えられた台座を目にし、ラッシュは思ったまま呟く。


「やっぱり台座はどこも変わりねぇんだな」

「だが、その扱いは大違いだぜ。これぞまさしく女神の祭壇、って感じだ。たぶん、この湖が結界にもなっているんだろうが、【グプ】の存在も意図せずして門番のようになっていたんだろうな。魔物が住み着いていた祭壇が一番大事にされているとは、皮肉な話だ」


「ごめんなさい……! 魔物以下の扱いで本当にごめんなさい……!」


 ゴミ置場の下敷きになっていた故郷の祭壇を思い出し、フィーリアは崩れ落ちた。ここの祭壇のなんと美しいことか。もはや比べることすら烏滸がましい。魔物以下のエルフの管理意識に、フィーリアはとてつもない羞恥心を覚えた。


「では、行ってきます」

「ああ。気をつけてな」


 ラッシュの言葉を受け、ネコタは静かに頷き、ゆっくりと聖剣を祭壇に突き立てる。


 ズズズッ、と聖剣が祭壇に入りこむ。すると、パアッと明るい光が漏れ、ネコタを包み込んだ。そして次の瞬間、カッと強い光が発生し、ラッシュ達が目を瞑る。


 目を庇った僅かな間に……ネコタの姿は消えていた。


 ジーナは周りを見回し、やっぱりな、と息を吐く。


「予想はしてたが、ウサギの奴また消えたな」

「本当に不思議だよな。ネコタのついでとはいえ、アイツが呼ばれること自体が奇跡だと思うんだが。アイツが呼ばれるのに、なんで俺達は駄目なんだ?」


「女神様の気持ちは分かる。私が女神様だったら、同じことをするよ。だって可愛いもん」

「きっと女神様は、エドガー様の本当の姿を見抜いていらっしゃるのでしょう。だから招かずには居られないのだと思います。普段は照れ屋で素直じゃありませんが、本当はお優しい、正義感の強いひとですから」


「だとしたら、お前らと同じで女神の目は腐りきっているぞ。アイツほど醜悪な内面の持ち主はいねぇだろうが」


 ウサギ贔屓が酷い二人に、ジーナは呆れを含んだ目を向けた。

 エドガーが消えたことに心配する者は、もはや存在しなかった。




 ♦︎   ♦︎




「うっ、あ……」


 柔らかい草の感触を頬に感じながら、ネコタはゆっくりと目を開けた。

 体を起こし、まだハッキリとしない頭で、ぼうっと周りを見回す。

 青い空に、地平線まで続く色とりどりの花が咲く草原。心地の良い、暖かい光。


 まるで夢の世界のような、平穏が形になったかのような光景。いつも通り、女神アルマンディが住まう場所にたどり着いた事に、ネコタは安心したように息を吐く。


 そしてハッキリとしてきた意識で、もう一度前に目を上げ……スッと目を細めた。


 ネコタの視線の先では、距離を取って二人の男女が向かい合っていた。


 不安そうに胸元に手を添え、揺れる瞳をしているのは、言うまでもなく女神アルマンディである。波打つ金色の髪が風にたなびくその姿は、絵になってもおかしくないほど儚げで、美しかった。


 そして、そんな彼女に向かい合い、じっと見つめたまま立ちずさんでいるのは……白いウサギだった。やはりお前かとネコタは思った。


「エド……?」


 アルマンディはエドガーを目にし、小さく目を見張った。信じられないとばかりに首を振り、口元を抑える。待ち望んでいた物を前にして驚きながらも、間違いかもしれないと自分を抑え込んでいるように見えた。しかし、瞳から零れ落ちそうな涙が、それが強がりであることを教えてくれる。


「……アルッ!」


 エドガーは微笑みながら、彼女の名前を呼んだ。

 その一言だけで、アルマンディには十分だった。


「──エドォ!!」


 彼女は走り出した。


 少しでも、少しでも早く、愛しい彼の元へ行こうと足を動かす。しかし、高ぶった感情が、足取りを不安定なものにする。何度も足を取られるこの瞬間がもどかしい。ようやく会えたという喜びと、また何処かへ行ってしまうというのではないかという不安。相反する心が、我慢して居た涙を零させた。


 彼女は飛びつくように抱きしめる。エドガーは、それを暖かく迎え入れた。

 胸元にしまい込み、すがりつくようにして、泣きながらアルマンディは感情を露わにする。


「夢じゃ……本当に、夢じゃないのね? 本物の、エドなのね?」

「ああ、そうだよ。僕だ、エドガーだ。アル、君の元に、やっと帰ってこれたんだ」


「ずっと、ずっと待ってたんだから…… !無事に帰ってきてくれるかと……心配で……それなのに、こんなに待たせて……!」

「ああ、ごめんよ。もっと早く、君の元へ帰ってやりたかった。でも、頑張ったけど、こんなにかかってしまった。今まで不安だったろう?こんなに待たせた僕を、嫌いになったかい?」


「バカ……バカッ! 嫌いになんて、なる訳ないじゃない……あなたが、こうして無事に帰ってきてくれた……それだけでいいの……!」


 アルマンディは顔を離すと、不安そうなで、エドガーを見つめる。


「もう、どこにも行かないのよね? これからは、私の側に居てくれるのよね?」

「ああ、もちろんさ。もう君から、一生離れない。たとえ何があろうとも、君の側に居るよ」


「エドッ……!」

「アルッ……!」


 ぎゅっと、二人は涙を流し、抱きしめあった。お互いが掛け替えのない物を手にしたかのように、大切に、触れ合っている。それは、人の愛情が垣間見える美しい姿だった。


 そんな光景を見ながら、ネコタは思った。


 ──なにこの茶番。


 ネコタの目は白けきっていた。


 スッと、二人は抱きしめあったまま涙を引っ込ませ、同時にクルッとネコタへ顔を向けた。そして、アルマンディは小首を傾げる。


「どう?」

「いや、どうと言われても」


 何を答えればいいのか……と、ネコタは困惑した。


「あの、端的に聞きますけど、何ですか今の?」


「”恋人との理不尽な離別。長い時を乗り越え、そして二人は──”ごっこ」

「ごっこって……」


「どうよ、感動で前が見えないだろう?」

「むしろイラッとしただけなんですけど」


 このウサギの自信はどこからくるのだろうか? いや、確かに演技力は意外と凄いとは思ったが。


 ネコタの反応に、アルマンディは拗ねたように唇を尖らせた。


「もうっ。ネコちゃんたら、つまらない子ね〜。せっかく来てくれたのだし、頑張ったご褒美に趣向を凝らして楽しませてあげようとしたのに〜。エドちゃんに協力までしてもらって小芝居をしたのに、そんなくだらなそうな目で……私、ちょっと傷ついたわ〜」

「あっ、はい。すみませんでした」


 とはいえ、不意打ちすぎる。あれに反応しろという方が無茶だろう。

 なんとも言い難い表情をするネコタに、エドガーは続けた。


「ちなみに、男は戦争の徴兵で恋人から引き離された、という設定だ。何度も死にそうな目に遭いながらも戦争を生き抜き、無事に戻ってくると約束した恋人とようやく再会出来たんだ」

「ああ、それはありがちですけど感動の展開ですね。うん、ちゃんとストーリーがあるなら泣いてもおかしくない。っていうか、いつの間にそんな細かな設定まで……」


「さらに言うと、帰ってくるのが遅れたのは、現地妻との関係を精算するのに時間がかかったからだ。結局説得できなくて、身の危険を感じた男は現地妻を放って、故郷の女の所に何事もなかった顔で帰ってきたんだ」

「ただのクズじゃないですか! ふざけんなよ! 感動のシーンが台無しじゃんか!」


「実は、女の方も間男を作ってたのよ〜。恋人のことを忘れて楽しんでいて、本当はあんまり寂しくなかったんだけど、急に帰ってきたからバレないように演技をしたの〜」

「どっちもどっちかよ! クズすぎてビックリだわ! 愛はどこに行ったんですか、愛は!?」


「いやでも、わりと珍しくない話だぞ? ねぇアルたん?」

「そうね〜。戦争で生きているかも分からないし、子供でも居ない限り、ずっと待ち続けるって女にとっては辛くて寂しいことよ〜。そこを慰めてくれる男に甘えたくなるのは、仕方のないことよね〜」


「そ、そうなんですか……」


 知りたくなかった現実をつきつけられ、ネコタは肩を落とした。

 それが実態とはいえ、少年としては愛という物を信じたかった。


「そして第二部は、男、女、現地妻、間男、の四人でドロドロの愛憎劇になる」

「どう足掻いても血を見るでしょ! むしろそっちが見たいんですけど!」


 不覚にも、ネコタは興味を引きずられてしまった。

 こんな事前情報だけ流されて悶々とした日々を過ごさせるとか、本当にふざけるな。


「さて、お芝居も見せたことだし」


 のほほんとした顔を見せつつも、アルマンディはスッと背筋を伸ばす。それを見て、エドガーはすかさず脇に控え、ピンッと綺麗に直立した。普段の言動からは想像も出来ないだろうが、彼には権力者の腰巾着としての才能があった。


 アルマンディはキリッとした表情を作り、ネコタに微笑みかけた。


「まずは、ご苦労様でした。勇者ネコタよ。よくぞこの度の試練も無事に乗り越えてくれました。今までとは一風変わった試練に、さぞ苦労したことでしょう。しかし、貴方は試練を乗り越え、また一つ大きくなりました。女神として、この世界を救わんとする貴方の献身、嬉しく思います」


「あっ。い、いえ! 勇者として当然のことをしたまでで──」

「貴様! 女神様を前にしてその格好とは何事か!? 頭が高いっ! 控えおろぉ!」

「このクソウサッ……チッ! 毎回毎回……!」


 隙あらば罵倒してくるウサギに、ネコタは殺意を感じながらも膝をついて頭を下げた。


 殴りたいのは山々だが……女神の権力を盾にして好き勝手振舞っているとはいえ、言っていることは尤もだ。これを無視して反抗しては、女神様も気を悪くするだろう。というか、確実にこの女神はウサギの味方をする。


 今までの対応から考えて、ネコタはアルマンディを信用していなかった。異世界に揉まれ、どうやら警戒心というものを覚えたらしい。実に立派な成長である。


 アルマンディは困ったような笑みを浮かべ、エドガーを嗜める。


「いいのです、エドガー。私は気にしていませんから」

「おお、女神よ、なんと慈悲深い……! 分かりました、貴女がそう言うのであれば」


 素直に下がったエドガーに、アルマンディは心地好さそうに頷く。二人の間には、確かな信頼感があった。なんと白々しいやりとりだと、ネコタは胸の中で唾を吐く。


「さて、勇者ネコタ。繰り返しになりますが、本当に良く頑張りました。貴方の成長が目に見えて、私も心から嬉しく思います」

「は、はいっ! ありがとうございますっ!」


 とはいえ、美人に褒められれば嬉しい。ネコタは頬を染めながら、アルマンディの顔を見上げる。その喜びようは、まるで主人に尽くす事を喜ぶ犬のようだった。ネコなのに。


 よしよしと、アルマンディは小さく頷く。


「貴方の働きには、私も大変満足しております。歴代の勇者の中でも、貴方ほど熱心な方は居なかったでしょう。貴方が勇者としてこの世界に来てくれて、本当に嬉しく思います。貴方を選んだ私の判断に、間違いはありませんでした」

「そ、そんなっ。世界の命運がかかっているから頑張れているだけで、僕なんかとても──」


「ただ、ねぇ……」

「え? ただ? なんです?」


 デレデレと表情を崩していたネコタが、アルマンディの言葉で我に返る。

 アルマンディは悩ましげに目を閉じると、キッと鋭い目つきで、その場で跳んだ。


「『水の上を歩けるなら、空気中の水分も、掴める!』────ああっ!?」

「女神様ーーっ!!」


 アルマンディは宙を蹴るような動作を見せ、ステンと地面に転んだ。エドガーは慌てて駆け寄り、心配そうに彼女を伺う。そして、ネコタは地面を見ながらフルフルと震えていた。


 よいしょっ、と何事も無かったかのように起き上がり、アルマンディはため息を吐く。


「その前までは順調だったのにねぇ。よりにもよって、あんなやらかしをするなんて思いもよらなかったわ。本当に、ネコちゃんはいつも私の予想を裏切ってくれるわよね」

「……す、すみませんでした」


 カァッ、と顔を赤くしながら、ネコタはなんとか声を絞り出す。恥ずかしくて頭がどうにかなりそうだった。

 そんなネコタの様子に気づかず、エドガーは不思議そうに尋ねる。


「ノリで合わせただけでよく分からんのだが、今のってネコタの真似だよな? あの無様に虫けらの攻撃を受けた時の。お前、アレって結局何がしたかったの?」

「いや……あの、それは……その……」


「上手く行きすぎてたから、ちょっと調子に乗っちゃっただけよ。ねぇ、そうよね?」

「そういう訳じゃ! ……いえ、その通りです」


 否定したかったが、ネコタは何も言えなかった。言葉に悪意はあるが、調子に乗っていたというのは、間違いではない。


「よく分からんな。調子に乗ったからって、なんで上に逃げるんだ? 避けて斬りかかれば良かったのでは?」

「あの時は、なんだか自信をつけちゃったみたいでね。自分ならなんでも出来るって思っちゃったみたいなの。それでね、ほら、水の上を歩く力を使って、空気中の水分を足場にしようとして……」


「空気中の水分……あ。あっ、ああ〜、なるほど。そういうこと? へぇ、そうなんだぁ〜。へぇ……へぇー……………………いや、ないわぁ……」


 エドガーはわりと本気で引いていた。

 ネコタにとって、とてつもない屈辱だった。


 気遣いすら感じられるような表情で、エドガーは優しく語りかける。


「お前ね、いくらなんでもそれは調子に乗りすぎよ。なんでそうなっちゃうかな?」

「いや、その……あの時は、全てが報われたかと……その、何でも出来るような気がして……」


「その気持ちも分からんでもないけどな。俺だって調子のいい時は、そんな気分になるし。でもな、何でも出来る気がしたからといって、今まで試したことのない物が出来るわけじゃないんだぞ?」

「それは……はい、その通りです」


「よく本番に強いとか言う奴が居るけども、基本的に、人は練習したことしか出来ねぇんだよ。命の危機に追い込まれたから、眠っていた力を引き出せた、なんて勘違いよ、勘違い。練習以上のことが、本番で出せる訳がないんだよ。だから無理をせず、練習通りのことを出せればそれでいいの。分かる?」

「……はい、仰る通りかと思います」


「それなのにお前、試しもしなかったことを勘に任せて使ってみようだなんて。調子に乗ったというか、傲慢だよ、傲慢。

 なぁ、今回は何もなかったからいいけど、仲間に迷惑をかけることになるし、そして何より、お前が危ない目に遭うんだぞ?」

「…………」


「本当に、死んじゃうんだぞ?」

「…………はいっ……すみませんでした……!」


 そんな気もないくせに、本気で心配そうな顔で言ってくるあたりが、とてつもなく腹立たしい。

 高度な煽りに、ネコタは我慢するので精一杯だった。恥ずかしさと怒りで泣きそうだった。


「全面的にエドちゃんが正しいわね〜。でも、叱った私が言うのもなんだけど、ネコちゃんのやりたかったこともわからないでもないのよね〜」


 はぁ、とまた溜息を吐いて、アルマンディは続けた。


「一見大したことのない能力を、拡大解釈をしたり、視点を変えることで思ってもみなかった凄い能力として成立させる。創作の手法としては使い尽くされているけど、上手くやれたらやっぱり面白い、今でも十分に使える手法の一つよね。私も大好きよ、そういう展開。正直、胸が熱くなるわ。でも、ねぇ……」


 アルマンディは、気まずそうに言った。


「現実でそんなことをやられて、実際に行動されると…………その、困るわ」

「…………」


 ネコタは沈黙するしかなかった。

 言われてみればその通りだ。


「というか空気を踏むって、それ、どちらかと言えば水じゃなくて風の領分じゃない。それを水の能力で応用しようというのは、ちょっとこじつけが過ぎるんじゃない?」

「…………はい、本当にその通りだと思います」


「ちゃんと狙い通りの能力を渡したのに、まるで分野が異なる使い方をされても、いくら私といえど予想できないというか……そんなに期待されても、応えられないというか……」

「すみません。すみませんでした。僕が悪かったです。だから、もうっ!」


 分かった。分かったから。もう十分過ぎるほど理解できたから!

 これ以上は勘弁してくれ! と、ネコタは思った。

 本当に、泣いてしまう……!


 涙目で消沈しているネコタに、困った子供でも見たかのような表情でアルマンディは言う。


「分かってくれたのならいいわ。でも、そんなに欲しいなら、今回与える力は風の加護にしましょうか。ネコちゃんも大分強くなっているみたいだし、空中を走れるようになればもっと動きやすくなるのも確かだからね」

「い、いや、いいですからっ! もっと別ので! それだとまるで僕が催促しているみたいな!」


「でも、走れるようになったら嬉しいでしょ?」

「それは……まぁ、はい」


「じゃあいいじゃない。それにね、頑張っているネコちゃんの期待に応えたいっていうのも、間違いなく本音なのよ」

「女神様……!」


 ニコリと微笑むアルマンディに、ネコタはジンッと胸に熱い物を感じた。

 ちゃんと見てくれていると、認めてくれていると知って、歓喜に身を震わせる。これが女神の慈愛かと、ネコタは改めて神の偉大さを感じていた。チョロい。


「お、お待ちくださいっ! 女神様!」


 あせあせとしながら訴えるエドガーを、アルマンディは興味深そうに見る。


「あら、どうしたのエドちゃん?」

「宙を飛ぶのは、仲間の内ではアメリアが完全に。疑似的には、私とジーナのみが持つ特殊技能です。そこでネコタまでもが飛べるようにされては、私達の存在価値が下がってしまいます! どうかご再考を!」


「お前……マジか?」


 ネコタは愕然とした。

 まさか自分の価値が下がるからといって、せっかく貰える仲間の力を撤回させようとするとは。組織の利益を下げても、自分の功を優先させようとしている証拠である。クズここに極まれり。


 ん~、と。アルマンディは悩まし気な声を出し、顎に指を当てて考え込む。


「そうね~。確かに、空を自在に走れるようにしちゃうのは、与えすぎかしら?」

「ちょっ!? め、女神様! こんなウサギに乗せられないで──」

「それじゃあ、制限を付けることにしましょうか? そうねぇ、十歩までなら空を走れる、なんてどう?」


 ネコタを無視して、アルマンディはエドガーに尋ねる。

 エドガーは心苦しそうに眉を曲げた。


「いや、十歩も歩けるようにしては、空を飛べるのと変わりないのではないでしょうか?」

「そう。それじゃあ、二歩くらい?」


「それなら制限にはなりますが……ネコタ風情に、たった二歩で何が出来るのかと言えば……」

「言われてみればもっともね。じゃあ、間を取って五歩でどうかしら?」


 エドガー空を見上げて考え込んだ。

 しばらく熟考し、コクリと頷く。


「それでよろしいかと」

「うん、じゃあそれで。決まったわよ、ネコちゃん! 五歩分だけ空を踏む力をあげるわ! 一度地に足を付ければ再使用可! どう、気に入ってくれるかしら?」

「良かったなぁネコタ! お前にはもったいないほどの力だぞ! 女神様に感謝しろよ!」


「お前ら、いつか覚えていろよ……!」


 チャキ、と。ネコタは聖剣に触れ、済んでのところで抜くのを堪えていた。聖剣で女神を殺すことは出来るのかと、本気で考えている自分が居る。いかん、まだ早い。今は駄目だ。せめて、世界を救った後で……!


 アルマンディが指を振ると、指先から薄緑の光がネコタの身を包んだ。ファサリ、とネコタの前髪がくすぐられる。すると、心なしか、体が軽くなったような気がした。


「【風精霊の衣】を与えたわ。これで、貴方は五歩分だけ、空を自在に走るようになれました。この力を上手く使って、この先の旅に役立ててねっ!」

「あー、はいはい。ありがとうございます」


 ムスッとしながら、ネコタはおざなりな礼を言う。

 それに、アルマンディは不安そうな顔を見せた。


「やだっ、もの凄い不満顔。もしかして、気に入らなかったのかしら?」

「ネコタよー。その態度はないんじゃねぇの? 女神様が好意で力をくれたっていうのに、何が気に入らねぇんだよ?」


「そりゃありがたいと思ってますけどね。もともとは空を飛べる筈だったんですから、劣化能力を渡されても微妙な気持ちになりますよ。っていうか、あんだけ好き勝手言って感謝するとでも思ってんのか!?」


 真っ当な怒りである。これで怒らないのは聖人くらいのものだろう。もっとも、彼はそれに近い勇者ではあるが。まだ若いということで見逃してあげてほしい。

 しかし、ネコタが怒っているというのに、エドガーは寛容さを見せつけるような苦笑をする。


「分かってないなー。あれも全て、お前の為だというのに」

「どこがだよ!? 自分の利益確保に僕の力を劣化させただけだろうが!」


「だってお前、空を飛べるようにしたらますます調子に乗るだろ?」

「はぁ!? そんな訳が──」


 ネコタは言い切ることが出来なかった。

 傲慢になるとは思わない。しかし、空を自在に走れるようになったら、確かにはしゃいでしまうかもしれないとは思った。謙虚な少年である。



「ほら見ろ。調子に乗るかもって思っただろ?」

「い、いや、調子には乗らないですよっ! まぁ、ちょっと楽しんじゃうかもしれないですけど」


「い~や! 絶対に乗るね! 若い奴は自分が世界の主人公だって思ってんだよ。自分は特別なことが出来るって思ってんだ。お前は一見すれば謙虚な男だが、内心では特にそう思っているタイプだ!」

「はぁ!? 言いがかりもいい加減にしろよ! 誰が思うか! 僕はそんな人間じゃない!」


「すぐばれるような嘘吐いてんじゃねぇよバーカ! お前、RPGのゲームなんかで主人公に自分の名前を付けるタイプだろ! んでヒロインにも気になる女子の名前を付けたりしてたろ!」

「それは……! ちょっ、や、だって……いや、違う、今はもうやってない!」


 図星であった。


 思わぬ指摘に、ネコタはしどろもどろになる。まるで親に隠していたエログッズを見つけられてしまったかのような気まずさであった。


 この隙を逃さず、エドガーは畳みかける。


「ほーら見ろ、やっぱりそうじゃねぇか! そんな自己主張の強い人間が、特別な能力を手に入れて調子に乗らない訳がないだろ! 素直に認めろや!」

「ふざけるな! そんなことで僕が勘違い野郎みたいな風になってたまるか! だいたい、主人公に自分の名前を付けるなんて、男だったら誰だって一度は──」


 反論しようとして、ネコタはあれ? と表情を変えた。

 怒りから、困惑に。困惑から、驚愕に。


「いや、待ってください。RPGのゲーム……しかも名付けって……意味がちゃんと分かって……ッ! エドガーさん! やっぱり貴方──」


 フッ、と。

 まるで最初からそこに居なかったかのように、ネコタは姿を消した。


 アルマンディが手を伸ばし、厳しい表情でネコタが居た位置を見ている。そして、ふぅっと息を吐き、伸ばしていた手で額の汗を拭った。


「間に合って良かったわ。危ない所だったわね」

「ええ。女神様の機転が無ければ、追求されていたかもしれません。本当に危ういところでした」


 すんでのところで危機を回避し、エドガーはダラダラと嫌な汗を流していた。

 女神の強制転移による、強引な隠蔽である。手段は限られていたとはいえ、力技にも程がある。


「まさか僅かな言葉から私の正体に気づきかけるとは。あの小僧も侮れませんな」

「まったくね。意外と隙のない坊やだこと。でも、可哀想に。もう少しおバカだったら、何事もなく平和に暮らせたというのにね」


 まるで陰謀を企む悪役のような台詞であった。しかし、こいつらはこっちのほうがしっくりくる。


「さて、ネコちゃんには渡す物は渡したし、あとはエドちゃんね~」

「おおう?」


 ひょい、とエドガーを持ち上げ、アルマンディはエドガーの額に口づけを落とした。パァッ、と一瞬だけエドガーの体が輝き、すぐに消える。

 それを確認し、アルマンディは満足そうに頷き、エドガーを降ろす。


「さて、エドちゃんへのご褒美も渡したし、皆の所へ送るわね~。準備はいい?」

「おいおい、もう送るのかよ? なんかそっけなくね?」


 何気にアルマンディとの雑談を楽しみにしていたエドガーは、不満そうな目で彼女を見上げる。仮にも女神を相手に、不敬すぎる。

 それを気にもせず、アルマンディはのほほんと微笑んだ。


「今回は~、お芝居もして十分楽しんだからね~。私も結構満足よ~。それに~……少しでも早く、何かを伝えたい人がエドちゃんには居るんじゃない?」

「……女神様はなんでもお見通しか」

「ええ、もちろん。だって女神だもの」

 

 ポリポリと頭をかくエドガーを、アルマンディは愉快そうに見つめる。そして、手をかざした。


「ネコちゃんも大分たくましくなってきたけど、まだまだ甘い所があるから、よろしくね。それじゃあ、エドちゃん。次の祭壇で待ってるわ」




 ♦   ♦ 




「おっ、帰ってきたか」


 姿を現したエドガーを、いち早くジーナが見つける。

 それに、エドガーは応えた。


「おお、悪い悪い。遅くなっちま……」


 エドガーは集まっている仲間たちを見て、言葉を止めた。

 横たわっているネコタを、皆が囲んでいた。


「え? なに? どうしたの?」

「ネコタさん、こっちに来てからずっとこの調子なんですよ」

「うん。怪我は無いし、気絶してるだけだと思うんだけど……」


 それでも、ずっと起きないのでは心配になる。難しい顔をして、四人は眠るネコタを見守っていた。


 ──あれぇ~、もしかして強制転移アレが原因かな? アルたん、やっちゃった? やっちゃったの? まさか女神が世界を滅ぼしちゃうの?


 そして原因に心当たりのあるエドガーは大量の汗を流し、バクバクと心臓を鳴り響かせていた。自分も一因なだけに、気が気でない。


「うっ、うぅぅ……」


 このまま目覚めないのでは、と心配している中、ネコタはうめき声を上げた。


「こ、ここは……」

「おっ、気づいたか。良かった、安心したぞ」


 ほっと息を吐くラッシュを見て、ネコタはぼうっとした瞳のまま、呟く。


「ラッシュさん……ああ、そうか。帰ってきたんですね」

「ああ、そうだ。それで、お前が帰って来てから、ずっと気絶してたんだが、どうしてそうなった? 何か覚えているか?」


「……女神様に会って、力を貰った所までは覚えているんですが、そこから先は……」

「記憶が飛んでるのか。エドガー、お前は? 大丈夫か?」


「ああ、俺は問題ねぇよ。そういえば、ちょっと手加減を誤ったかも、って女神様は言ってたな」

「なるほど、そのせいか。女神様もミスをするんだな」


 感心したようにラッシュは頷く。そして、エドガーは女神様の完璧な仕事に感動していた。ナイス、アルたん。文句の付けようもない!


 だんだんと意識を取り戻したらしい。ネコタは起き上がり、ブンブンと頭を振ると、いつも通りの元気な姿に戻った。


「あー、やっと戻ってきた感じがする。女神様ももっと丁寧にやってくれたらいいのに」

「まぁ、そう責めてやるなよ。アルたんだって、わざとやった訳じゃねぇんだから」


「それは分かってますけど、記憶が無くなるって実は危なくないですか? それに、何を忘れたんだろう? 何か重大なことを聞いたような……」

「重大なことねぇ。普通に雑談をしただけで、別に大したことなんか話してないけどな」


「そうですか? ……そうですね、たぶん。気にしすぎかな……あっ! エドガーさんがやったことは忘れてないですからね! ふざけんなよ本当にっ! せっかく空を飛べる所だったのに!」

「まぁまぁ、そうカッカすんなよ。走れるようになって良かったじゃねぇか」


 巧妙な誘導で、エドガーはネコタの意識を逸らす。グチグチとネコタは責め、エドガーはそれを神妙に受けながら、内心でシメシメと笑う。両者で損のないやり取りだった。


 エドガーを叱りつけるネコタを眺めながら、ラッシュが切り出す。


「ネコタも元気になったことだし、これからの事を話し合おうぜ。まず、どうやってここから出るかだ」

「どうやってなんて……」


 戻ればいいのでは、とネコタが続けようとして、ハッと表情を変える。

 全員が同じことを思いついたのか、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。


「俺としたことが、すっかり忘れてたぜ。戻ろうとしても、あの迷宮があったな」

「どうしても戻らないといけないんでしょうか? 私、もうあそこへ行きたくないんですが」

「というか、戻っても出口なんて見つかるのかな? またスフィンクスにそれぞれが送られた場所で行き止まりじゃない?」


 むぅ、と。全員が頭を悩ませる。

 本当に出口があるのか。このままここで彷徨う羽目になるのでは。そんな不安がよぎった時、ゴゴゴゴッと小さな音が聞こえてきた。


「な、なんの音ですか、これ?」

「分からん。だが、俺らに関係がないとは思えないな。急いで陸地に──」


 祭壇から、橋を渡らせるべく。ラッシュが指示を出そうとした、その時だった。

 一斉に湖が波を引き、中央の祭壇へと水が集まってくる。

 その光景に誰もが呆然とした次の瞬間、六人の足元で衝撃が起き、間欠泉のように水が噴き出した。


「んぎゃああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ~……!」


 エドガーの間抜けな声を響かせながら、六人は天井に向けて飛ばされた。

 













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