アニメーテッド・オブジェクト★
「答えは “
“汝の答え、偉大なり!”
https://kakuyomu.jp/users/Deetwo/news/16817330669170193912
その直後、パーティの頭上に聖銀に輝く鎧が出現した。
「……出たな!」
アッシュロードは語気強く、呟いた。
“
“呪いの大穴” の一階に出現する深層への番人にして、運命の騎士の装具のひとつ。
“女神の試練” とは、迷宮に散在するこれら “K.O.D.s” ―― “ナイト・オブ・ディスティニー・シリーズ” を集めることに他ならない。
そしてエルミナーゼが囚われている最下層に達するには、そのすべてを打ち倒し回収しなけければならないのだ。
「――パーシャ! 防御を下げろ! フェルは守りの加護だ! 効果があるまで唱え続けろ!」
これあるを予期していたレットが、即座に指示を出す。
“試練” についての情報は蓄積されており、すでに
“マジックアーマー” は元が元だけに、化け物染みた
これはM4シャーマンに匹敵する硬さだ。
並の攻撃ではかすりもしない。
かといっての魔法の無効化率も一〇〇パーセントであり、呪文や加護で焼くことも凍らすことも切り刻むこともできなかった。
鎧だけに手も足も口もないため(冒険者たちの間に伝わっている冗句)、攻撃力はなきに等しく魔法も唱えてこない。
だがこの手の戦闘の例に漏れず
つまり削りきれなければ軽い打撃を延々と浴び続けることになり、嬲り殺しにされる。
「了解!」「はい!」
間髪入れず、呪文の詠唱と加護の嘆願を始めるパーシャとフェリリル。
「こいつも強化されてるかもしれん! 気をつけろ!」
アッシュロードが叫ぶ。
迷宮が変容したことで “
しかしそうだとするなら、“
(一当てしてみればわかることだ!)
アッシュロードはホビットとエルフふたりの少女の魔法が完成するや否や、鎧の直前に踏み込み、魔剣の斬撃を加えた。
ガキンッ!
熟練者の手練の一刀は、デバフを受けてなお驚異的な装甲値を誇る “マジックアーマー”を見事に捉えたが、岩を叩いた方がよほどましな手応えを得ただけだった。
カドモフとレットの一撃は弾かれた。
ガンッ!
お返しとばかりの鎧の体当たりを受け、6ポイントという微々たるダメージを受けるアッシュロード。
(強化はされてねえ! さすがの “僭称者” もそこまでの力はなかったってことか!)
「こいつは元のままだ! デバフをかけ続けて一気に押し切れ! 長引かせるな!」
アッシュロードに言われるまでもなく、矢継ぎ早に呪文を唱え続けるパーシャ。
探索者一の詠唱速度を誇る彼女に掛かれば、シャーマン戦車も瞬く間に豆腐と化す。
フェリリルも重ねて守りの加護を嘆願し、じり貧に陥るのを防ぐ。
こちらの攻撃は当たるようになり、ただでさえ弱い鎧の攻撃はかすらなくなる。
あとは一〇分程度の作業だった。
「やけにあっけないな」
迷宮の床に転がっている聖銀の鎧を見て、ジグが拍子抜けした様子で言った。
「本当に倒したのか? まさか死んだふりとかしてねえだろうな?」
「こいつは試練の武具の中でも最弱だ。迷宮のいっそうからそこまで手厳しくはしないっていう女神の慈悲だろう」
黒衣のやさぐれ
「回収しろ。鎧はサンフォードかドワーフなら身に着けられる。サイズの調整は必要ない」
「あんたはいいのか?」
レットが怪訝な顔をするも、アッシュロードは頭を振っただけだった。
自分でも理由はわからないが、あの鎧には近づく気になれなかった。
「試してみろ。手を触れて『装着』と念じれば、鎧の上からでも装備できる」
「……レット」
「よし」
アッシュロードとカドモフにうながされ、レットが鎧に歩み寄る。
慎重に近づき新ためて動きがないことを確かめると、身をかがめて手を延ばす。
指先が――触れる。
それでも動きはない。
(……装着)
レットが念じた次の瞬間、床に転がっていた鎧が光粒子に分解され戦士の身体にまとわりついた。
蒼白い聖光が溢れ出し、まばゆさに全員が顔を背ける。
やがて光が収まったとき仲間たちの前には、聖鎧をまとったレトグリアス・サンフォードが立っていた。
「素晴らしい……身体の奥底から力が湧いてくるようだ……」
恍惚と呟くレット。
「それにまるで重さを感じない。
胸の中央に象眼された大粒の金剛石に視線を落とし、レットが感嘆した。
「これが伝説の運命の騎士の鎧…… “K.O.D.s アーマー” なのか」
まさに夢見心地といった表情である。
「脱ぐときは『脱着』と念じれば、勝手に剥がれる」
「まったくいたれり尽くせりだな」
「それだけじゃない。単体での装甲値は-14。つまりこの鎧を着るだけで-4まで下がる。他の部位と合わせれば
アッシュロードの説明に、もはやジグは感嘆の口笛で応じるしかない。
「さすがね、本当によく調べてる」
フェリリルは伝説の鎧そのものよりも、詳細に知識を仕入れているアッシュロードに感動した。
「まあ……な」
煮え切らない返事をしたアッシュロードの内心は、薄気味悪さでいっぱいだった。
王城の客室にあった
それなのにまるで息を吐くように、鎧の扱い方を説明した。
知らないはずの知識を口にすることはこれまでにも多々あったが、ここまで明確なのは初めてかもしれない。
「唯一難点があるとすれば、他の装備とのコーディネイトが取れてないことだよね。胴鎧の部分だけが浮いちゃってる」
パーシャがケタケタと笑い、
「違いない」
とレット自身も苦笑した。
フェリリルとジグもつられて笑い、カドモフさえもニヤリと口元を緩めてみせた。
「いろいろあったが、ようやく最初の試練を突破できた。一歩前進だ」
朗らかに宣言するレットとは対照的に、アッシュロードの表情は冴えなかった。
自身の記憶にない知識についてもだが、なによりあの “墓守” の存在。
今回の成果は間違いなく、あの怪人の介入があったればこそだ。
助力……とも違う。
怪人の望む方向に誘導されたような、まるで掌で踊らされたような、そんな感覚すら漂う。
(……
物語の登場人物を、作者の望む筋書きへと導く存在。
だとすれば、この筋書きの先にあるものはなんだ……?
そして、この物語の作者とは……?
アッシュロードは自分の内側に問いかけてみたが、記憶にない知識は答えてはくれなかった。
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