迷走
「慈母なる “ニルダニス” よ。か弱き子に仇なす者らに戒めを―― “
わたしはカドモフさんが相手取っている四人の “ドワーフ
フェルさんは、レットさんとジグさんが打ち合っている “
“
貴重な
レベル差があることもあって、一時的にですが全ての敵の動きを封じることができました。
行きがけの駄賃! ――とばかりに、カドモフさんが魔法の戦斧の強振で、同族から “
レットさんも相手にしていたひとりの胸を、段平で串刺しにしています。
ジグさんは目の前の、武器を持っているだけで戦士とはとても言えない男――を蹴倒して、パーシャに駆け寄り肩に担ぎ上げました。
「――行くぞ!」
レットさんを先頭に、次いでカドモフさん、わたし、パーシャを担いだジグさん、そして殿をフェルさんが守って、わたしたちは玄室から逃亡しました。
下層への縄梯子のあった玄室を飛び出すと、そこは “くの字” 型をした三
行き当たりに扉があり、わたしたちが到達する前に乱暴に開きました。
「GuRururururuッッッ!!!!」
「―― “
わたしは叫びました。
おぞましさに、顔が歪みます。
“オーク” ――このリーンガミル地方では “ゴブリン” と呼ばれている、迷宮では最弱のと言われている魔物です。
駆け出しの頃ならいざ知らず、今のわたしたちには油断さえしなければ問題にならない相手です。
相手なのですが――。
「“
“
“
“
“
数が多い上に、“ゴブリン
ゴブリンたちの魔術師であり聖職者でもある者たちで、魔術師系第三位階の呪文と聖職者系第二位階の加護を操る危険な相手です。
駆け出し探索者の
その呪術師を守るように多数の “
そして、“ゴブリン
地方によっては
亜種よりもさらに大柄で膂力に優れ、戦闘経験も豊富。
接近戦に、呪文に、加護。
質と数。
やっかいな
ですが――!
「慈母なる女神 “ニルダニス” よ―― “
“呪術師” の “
二度も遅れは取りません!
「―― “
二体の “王子” は、フェルさんが固めます。
「
肉塊となって倒れた亜種に向かって、ジグさんが口汚く罵ります。
パーシャを担いでいるので、口撃での参戦です。
「――駆け抜けてください!」
こうしている間にも、最初の玄室の敵が追ってくるかもしれないのです。
振り返る余裕もなく、わたしたちは小鬼たちが乱入してきた扉から、さらに逃走しました。
そこからは、どこをどう逃げたのか、ハッキリとは覚えていません。
仲間を呼ぶ角笛が迷宮内に何度となく響き渡り、
追いつかれては逆撃を加えて追い散らし、正面に立ち塞がられれば斬り倒して血路を開く。
気がついたときには全員がゴブリンの返り血と自身の汗に塗れて、見知らぬ玄室で、ぜぇぜぇと肩を上下させていました。
はぐれた人が出なかったのが……奇跡です。
(……ま、まだ、休んでは駄目)
わたしは最後の気力を振り絞り、たった今入ってきたばかりの扉に残り少なくなった “
“ライスライト方式” ……。
そしてそのまま扉にもたれかかり、ズルズルとくずおれます……。
(今にして思えば……最初の玄室でこうしておけば、安全に縄梯子を下りられたかも……)
扉に頬を寄せたまま荒い息を吐きながら思いました……。
こんな簡単なことも浮かばないほど、わたしたちは疲弊し、追い詰められていたのです……。
さらに状況は悪化の一途を辿ります。
“
「ごめん……あたい、この階に上ったあとに “
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