第18話 ベアークローで苦労知らず
「もうすっかり春よねえ」
背伸びしたい年頃のマリアは、ちょっぴり気取ってみたくなる。
「うん。こんな世情でも、毎年変わらず桜は咲くんだよね」
桜味のスイーツは苦手なメシヤ。
「メシヤさま、今年は何を植えるのですか?」
いまだに高校一年生のレギュラー陣であるが、留年したわけではない。
「ワタシ達のスペースも空けておいてほしいネ!」
メシヤの農園で採れた野菜は、そのまま食堂で供される。
「ま、9割方去年と同じだよ。少しだけいつもと違うのを植える程度さ」
メシヤは耕運機を使って、団粒構造を作り出す。
「慣れたもんね」
あまり褒めないマリアも、感心している。
「ここ数年で
ペットを飼う前にも、相当な決心が必要だ。
「水撒きもそうですが、やはり草取りがネックでしょうか」
夏場は草を取っても取っても生えてくる。
広末涼子は草抜きが得意に違いない。
「草刈り機を使うわけにもいかないネ」
草刈り機での除草は、とっくにこなせるようになったエリ。
「
ちなみに、熊手の英語はベアークローではない。
「メシヤ~、大きめの草は熊手じゃ取れないヨ」
気を利かせて庭の手入れをしていたエリ。
「ありがとうエリ。こういう時はさ、枝切りバサミで根元から切っちゃえばいいんだよ」
メシヤの指導を受けて、次々と切除していくエリ。切るのは楽しい作業だ。
「こちらには花壇がありますわ」
美しいものを嫌いな人は、いないだろう。
「そう、花時計なんだ。けっこう考えるのに苦労したよ」
機械時計の周りに花で飾ったものもこう呼ぶが、メシヤの花時計は、開閉時間の異なる花を組み合わせて植えた花壇である。植物学者のリンネが、定まった時刻に花が開閉するのを見て、時計の代わりになると考えたのが始まりである。
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