第85話 なりきり師、鑑定する。
「まぁ、驚いたわ。本当にスキルの書じゃないの?」
「1回のダンジョン探索でまさか2冊も見付けるとはな…」
「はい、そんな話聞いたこともありません…。」
だよな。だってこれ一つの為に一攫千金狙いの冒険者がいるんだもんな…。
そんなにポンポン出てたら高くならないもんな。
「ユウキ、鑑定してみてよ!」
「えっ?いいのか?何のスキルかわかっちゃうぞ?覚えてからのお楽しみってのが無くなっちゃうぞ?」
「いいよ。なんのスキルかわかった方がユウキも安心して使えるでしょ?
それにいらないスキルだったらギルドで売っちゃえばいいんだよ!他に誰も鑑定できないんだしさっ!」
おぉ…ホークが中々したたかな事言ってるぞ…いつの間にそんな考えができるようになったんだ?
嬉しいようなちょっと寂しいような…
「アハハ…ホーク君の言う通りだね。スキルの書を鑑定できるのはユウキ君位だろう。後は勇者パーティーの聖女かな?
でも聖女は帰ったし、ギルドで鑑定不可で貴族に売り出したってすぐに売れちゃうだろうね。」
「でしょ?だからユウキそのスキルの書を鑑定してよ。」
「そっか。わかったよ。」
ホークの成長は喜ぶべきなんだろうけどホークは一つ勘違いしてるな…
おれはおれにスキルの書を使う気なんて一切無い。これから先スキルの書がドロップしたとしても使うのはホークだ。
おれは時間と経験値さえあればスキルを覚えられる。わざわざ貴重なスキルの書を使う必要は無い。
スキルの書はホークに全振りだ。
「鑑定!」
【土壌改良の書】
・農家スキル
「いらねぇー!!!」
農家の人にとっては大事なスキルなんだろうけどさ…今のおれたちは冒険者だ。土壌改良は必要無いんだよな…。
「ねぇ、ユウキなんのスキルだったの?教えてよ!」
えっ、どうしよう…こんなワクワクしてるのに土壌改良って絶対ガッカリしちゃうよな……
でも嘘付いてもしょうがないし…
「ど、土壌改良…」
「えっ?」
「土壌改良の書だってさ…農家スキルらしい…。戦闘スキルじゃなくて土を綺麗にしたりするスキルだよ。
どっちかって言うと父さん達の方が喜ぶスキルだと思う。でも多分持ってるよな…」
おれたちの家は農家だったからな。父さんのレベルがいくつなのかは聞いたことがないからわかんないけど多分使ってた気がする…
「そういえばそうだね。うちの父ちゃんも月に1回使ってたような…」
リーイン村は基本的に天候もよくモンスターも少ない村だ。農家の職業を持つ人が引っ越すのには最適の村だ。おれの家もホークの家もそんな理由で引っ越して来たんだろう。
もちろん戦闘職の人達もいるからモンスターが出た時は皆でその手伝いをしたりするんだけど、おれたちは子供だったので手伝った事は無かった…。
「はぁ…せっかく出たのにハズレか…ホーク使うか?」
「う〜ん…いらないかな。」
「だよな。シルバさんこれギルドに売るとしたらいくら位になりますか?」
「そうだねギルドなら最低でも一千万プライで買い取るよ。」
「「一千万プライ!??」」
嘘だろ?土壌改良が一千万?
「アハハ言っただろ?スキルの書は高いんだよ。ユウキ君、それちょっと貸してくれるかい?」
「あっ、はい。どうぞ。」
「鑑定……うん僕じゃ鑑定できないよ。」
シルバさんが土壌改良の書を返してくれた。
「鑑定できなければ土壌改良だとはわからない。僕はここで何も聞かなかったし、これが土壌改良の書なんて知らない。うまい事悪徳貴族にでも売り付けてやるさ。」
うわっシルバさんが悪い顔してる…でも悪い貴族に売るのか…結果を知った悪い貴族がギルドが逆恨みしなきゃいいけど…
「じゃあホークこれは売っちゃおうか?」
「うんそうだね。」
「シルバさん街に帰ったら買取お願いします。」
「わかった。ただスキルの書の代金は後払いでもいいかな?」
「大丈夫です!特に今はお金に困ってませんし。前に買い取って貰った分もまだまだありますから。よろしくお願いします。」
「お願いします!」
「任せといてくれ!きっと高く売ってみせるよ。」
〜三階層クイーンブーンビーの巣〜
「スパイラルストライク!」
「メガフレイム!」
最初に来た時はギルマス達が倒した周りのブーンビーも今では範囲攻撃があるのでおれたちで倒す事になった。
ホークの奴倒せるってわかってるんだろうけどよくあの虫の大群に入って行けるな…
気持ち悪すぎて物理攻撃なんて絶対やりたくない…おれは離れた所から安全にメガフレイムを使う。
ファンネルを向かわせれば遠くのブーンビーだって倒せるんだもん、近付く必要ないよね…。
「ホーク来るぞ!作戦通りにいくぞ!」
「うん!」
『ボガーーーン!!!』
ブーンビーの巣が爆発して中からクイーンブーンビーが出てくる。これまでは前と同じだ。
でも違うのはここから。敵も時間経過でレベルアップしてるだろうけどおれたちの方が強くなってる!
バイホーンゴートを楽勝で倒せたんだ。2人で戦うクイーンブーンビーなんてもっと楽勝なはずだ。
空高く飛んで行ったがそんな事最初からわかってる。
「ガトリングウォーター!」
先に空に待機させてたファンネル2つと下からおれがガトリングウォーターを使いクイーンブーンビーの逃げ場を無くす。
乱れ打たれた三方向からのガトリングウォーターを避けるなんてクイーンブーンビーにはできない。
〈ギ、ギシャ…〉
ダメージもさることながら羽に水分が含み重さでうまく動かせず地上へと降りてくる。
「ヴィブラブレード!」
降りてきたら来たでそこはクイーンブーンビーにとってはさらなる地獄だ。
地上はおれたちのメインステージだ。
「ブリザードドーム!」
ただでさえ猛吹雪のドームなのに3つのブリザードドームが重なり全く中が見えなっなった。
「ホーク今だ!」
おれはブリザードドームを解除しラストはホークに任せた。
「オッケー!双刀斬!」
〈ギ…〉
あれだけ苦戦して倒したはずのクイーンブーンビーが今や何もさせないで倒す事ができた。
飛んで、落ちて、死んでいった。
うん、間違いなくおれたちは成長してる。
「ユウキ〜!凄いよ!あの時あんなに苦戦したのに楽勝だったね!」
「あっ、やっぱりホークも思った?ヘヘッおれも思ってたんだ。おれたちちゃんと強くなってるな。」
「うん!」
「じゃあこの調子でちゃちゃっと残りのボスも倒しちゃおうぜ!」
「うん!!!」
地上までにいる残りのボスは後2体。ギャングウルフとネコマタだけだ。
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