第46話 なりきり師、悟る。
「まぁまずはユウキ、ビュートレオンと戦ってみてどうだった?」
「特に強かったとかはありませんでしたよ。
属性変化するってのも途中でわかりましたし鑑定しながら戦ったんでステータスの変化も気付けました。
ただ倒すのには癖のあるモンスターだとは思いましたね。」
「なるほどな初見の敵でもしっかり観察できてるじゃないか。
気付いてると思うがビュートレオンははっきり言うとそこまで強い敵ではないんだ。
ただ、モンスターマップや気配察知スキルを持っていなければほぼ先制攻撃を受けてしまうなかなか厄介な敵でもあるんだ。」
確かにおれも先制攻撃されたな…。
モンスターマップを持っていても知らなかったら敵の攻撃の間合いに入っちゃうもんな…。
「それにビュートレオンは一撃で倒さないといけない。
上級冒険者ともなれば無属性の透明の内に倒してしまうか気配を察知しながら戦わずにやりすごす様な敵だ。
下手な反撃をしてしまうと自分にとって不利な属性へと変化してしまう…それこそユウキ、さっきのお前の時の様にな…。」
透明の内は無属性なのか…素手で殴ったから毒属性になって魔法を使えばその属性に変化するってか?
「じゃあさおれが剣で攻撃したらどうなんの?」
「剣で攻撃した場合はビュートレオンの身体は金属になる。
斬撃で戦いにくく防御、攻撃が高いステータスになるんだ。」
アイアンスコーピオンの劣化版みたいな感じか?確かに今のホークじゃワンパンはキツイかな…。
「危ないからってそう言う事か…でもそれならそうと最初から教えてくれてもよかったじゃないですか!」
「さっきも言ったろ!何でも教えてもらえると思うな。
全部が全部情報があるわけじゃねぇんだ!これから未知の存在と出会った時の予行演習だよ。
未熟な内に覚えた事は今後も忘れねぇだろ。」
「そのせいでおれ窒息死しそうになったんですけど…」
「それは油断するなっつったのに油断したお前が悪い!」
はっ?油断した?してないよ!むしろ最初は慎重にやってたよ!
まさか透明の敵が相手なんて思わないだろ普通…
「はぁ…もういいです。
それより初心者でも倒せる方法を教えて下さい。当然あるんでしょ?」
「ユウキ、お前はもう少し可愛げを持った方がいいぞ。特におれにな。」
「ギルマスがおれに優しくなればその問題は簡単に解決しますよ。
15歳特有の反抗期の時期だと思ってください…。」
「ったく口の減らねぇヤローだ!まぁいい…
ビュートレオンの簡単な倒し方だったな…。それは回復魔法を使うんだ。」
「回復魔法?」
「そうだ。ヒールでもハイヒールでもメガヒールでもなんでもいい。
とにかく回復魔法をアイツに当てればHPが22になるんだ。
防御力は77になっちまうがちゃんとパーティーを組んでる奴なら問題ないだろう。
しかも相手の攻撃でこっちが回復するって素敵効果のオプション付きだ。
まぁさっきみたいに首を締められれば話は別だがな…。」
そうか回復魔法を使って相手を回復属性にすればいいのか。…って回復属性ってなんだ?
あの毒や水が舌にまとわりついていたみたいに舌にヒールがついてるみたいなものかな?
「そんな方法があったんですね…敵に回復を使うなんて教えてくれなきゃ絶対やらないじゃないですか!」
「そうだろうな。これはたまたま新人ヒーラーの誤発射で見つかったような戦法だからな。
冒険者間で噂が広まり今じゃ定番になったって言う珍しいパターンだ。
だがそのおかげでこの階層の突破率は格段に上がったんだぞ。」
「そんな攻略法があるならそりゃ簡単に突破率は上がりますよね…。その方法使わなくても実際弱かったですし。
今までの階層の方が攻略は面倒でしたし…。」
「何言ってんだ?言っておくが今までのダンジョンがおかしいだけで普段はこの階層はちゃんと適正をもったパーティーで無いと攻略許可はださないぞ。
勿論今までの階層についても鎮静剤を使って落ち着くまでは許可したパーティーだけが立ち入りできるようにするがな。」
あっ、そうだった今ダンジョン全体が強化されてるんだった……
上位種やボスや能力が変化している今は普通のダンジョンじゃなかったんだ…
「そうですよね…今までがおかしかったんですよね。はぁ…自分の感覚までおかしくなってきましたよ…」
「はっはっはっ、そりゃこの現状で戦えてるお前なら普通の敵が弱く感じてもおかしくねぇのかも知れねぇな。だが何度も言うがその油断が命取りになる。死にたくなければモンスター相手に気を抜くなよ。」
「何度も聞いたんでちゃんとわかってますよ。」
その後おれたちはまた最短距離で階段を目指し歩き始めヒールを使いHP最弱状態のビュートレオンをホークが倒せるかなど、色んな事を試しながらボスに出会う事なく階段へと辿り着き一旦長めの休憩をとった。
「七階層が一番楽だったな。急いでなかったら熟練度上げしたかった位だよ。」
「ユウキのモンスターマップがあれば見えなくてもいる場所がわかったもんね。
ヒールした後ならおれでも倒せたし帰りはレベル上げしちゃおうよ!」
「それもいいかもな!帰る時はシルバさんもいるしもしボスに出会っても倒してもらおうぜ。」
「君達、あんまり僕をあてにされても困るんだけど…
ビュートレオンの上位種やボスなんて僕だって聞いた事はないんだからね…。」
「でもシルバさんならこの辺の階層は余裕なんでしょ?」
「いつ何時何が起こるかわからないんだ。僕が敵わない敵がボスだって可能性もある。
それに今は帰りの事じゃなくて進むことを考えよう。
この先そんな風に笑える余裕が残ってたら帰りにまた決めればいいしね…。」
「それもそうですね。じゃあ八階層に行きましょう!」
六階層、七階層でボスが出なかったのでアイテムを使わなくても体力は自然に回復できた。
ダンジョンに来てからどの位時間がたったのかわからないがこの七階層の階段前で少し寝れたのでまだ身体は元気だ。
意気揚々と八階層へと降りたのだが降りて早々目の前の光景に嫌な予感しかしなかった。
「…このフロアのボスって間違いなくあれですよね…?」
「あれだろうな。」
「…あんなの倒せるの?」
「う〜ん…鑑定してみないとわからないけど流石にここからは遠すぎてできないかな。」
「殴りがいがありそうねぇ〜!キャハッ♪」
階段を降りてすぐ目の前にはいつも通りの森が広がっているのだが明らかに一本だけが太く、長く、他の木より何倍も大きい木が立っていた…。
「モンスターマップ…。うわぁ〜…」
七階層で楽をしたつけが回って来たかのように八階層はモンスターに埋め尽くされている…。
まだスタート地点から50メートルの範囲しか見えていないが数えるのも面倒な程に今までで一番モンスターマップに赤い点がついていた。
「ユウキどうしたの?」
「現実逃避したくなってきたよ。あれ2本に1本はモンスターだよ…。」
「何?そんなに多いのか?って事はこのフロアは正真正銘の大繁殖か!?」
「普段の状態を知らないので正確に大繁殖かどうかはわからないですけどモンスターの反応は今までで一番です。
このフロアのモンスターってトレントであってますよね?」
「そうだよ。でも普段は2本に1体じゃなくて大体20本に1体位の割合なんだけどね…。」
次はモンスター10倍フロアか…行きたくねぇ〜!!!
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