冒険者登録、決闘編。

第4話 なりきり師、旅立つ。

「「「ユウキ、成人おめでとう!!!」」」


「皆、ありがとう。」


 家に帰ってきてホークに邪魔されながらも、職業、ステータス、スキル等の確認を終え、今は母さんが作ってくれたご馳走でお別れ会を始めたところだ。



「ユウキ!もういいでしょ!?貰った職業教えてよ!あれからずっと気になってしょうがないんだよ!」


「ったくホークはもっと我慢する事を覚えろよ……まぁ皆揃ったしいっか。おれが貰った職業は…」


「職業は…?」


「【なりきり師】って職業だった。」


「「「なりきり師?」」」


 三人とも当然知らない職業だからキョトンとしている。



「うん、おれの前世の職業の俳優は違う人物になりきって演技をするって仕事だったんだけど、こっちの世界でもなりきるって職業らしい。」


 因みにホークにも以前からおれが転生人だって事は話してある。理解したのか忘れてしまったのかはわからないが、特に転生人の話は出してこない。どちらかと言うと興味がなかったのかな?



「それってどういう事なの?わかるように説明してよ!」


「う〜ん…ホークにもわかりやすく説明すると、おれはどんな職業にもなれるんだ!魔法使いでも剣士でも。条件さえ満たせばらしいけど。プライがそう言ってたし…」


 プライから説明してもらったままを教える。これで理解されなかったらどうやって説明しよう…



「スッゲー!!ユウキ最強じゃん!それが前から言ってたチートって能力?」


 チートには違いないが、これはチート職業なだけだ。チート能力は他に一杯貰っている。



「ちょっと待ってユウキ、プライ様が言ってたってどう言う事?」


「ん?あぁ、成人の儀を受けた時にプライの世界に呼ばれたんだよ。なんか教会は神との繋がりが強い?とか言ってた。あ、母さん達がお礼言ってたって言ったら、僕の方もお礼言っておいてって言ってたよ。」


「本当かユウキ?神が本当にそう言ってたのか?」


「本当だよ!父さん達子供ができない事で教会に祈りに来たって言ってたよ。それでおれを授けたって。だから育ててくれてありがとうって事じゃないかな!?」


「プライ様……うっ…」


 母さんが泣き出してしまった。この世界の人は神を信じている。だが、姿形もわからなければ、実際にあった事がある人などいないだろう。それがおれを通してだが、神の存在と触れ合い、ましてや自分達に欲しかった子供を授けてくれた事に感情が耐えられなかったのだろう。



「プライ様、ありがとうございます。ありがとうございます。」


 父さんは泣きはしなかったが、何度もお礼を言っていた。プライならきっとこの場も見守ってくれているだろう。父さんの言葉も届くはずだ。



「ユ、ユウキ?さっきから言ってるプライ様って創造神のプライ様のこと?もしかしてユウキはプライ様にあったの?」


「そうだよ。あっ、皆今日おれが話す事は全部内緒にしておいてね!」


「あ、当たり前だよ!神に会えたなんて事が知られたら、色んな奴から狙われちゃうぞ!それ位おれでもわかるぞ!」


 多分教会関係や、貴族 王族なんかが、神託のできる人間だ、とか言って自分達に都合のいい事を神に聞き出そうと囲いこんだりしてくるだろう。ホークもそれがわかっているようだ。多分言いふらしはしないだろう。



「じゃあ、話を戻すよ。父さんも母さんも大丈夫?」


「ごめんね…嬉しくってつい…。」


「話の腰を折って悪かったな…続けてくれ。」


 両親も落ち着いたようだ。



「なりきり師に関してはそんな感じ。で次にステータスなんだけど、見てもらった方が早いかな?オープンステータス」



ユウキ


15歳


なりきり師


レベル1 


HP100/100

MP100/100

攻撃10

防御10

魔攻10

魔防10

俊敏10

幸運10


スキル


なりきりチェンジ 鑑定 インベントリ マップ 


EXスキル


創造神の加護 無詠唱 鑑定阻害 熟練度10倍 ドロップアップ 生産率上昇


称号


転生人 



「こんな能力なんだ。便利なスキルをあげるよって言ってたんだけど、結構一杯貰えたみたい。」


 スキルの方はゲームなんかでは割と標準装備な物ばかりだが、EXスキルの方は間違いなくチートだな。おれは生身の人間だからこれで足りるのかまだわからないけど…



「ユウキスッゲー!こんなの無敵じゃん!おれスキルなんてダブルスラッシュしかないよ!それになんとかスキル?なんて読むのこれ?でもこれも凄いのばっかりだし!」


「とんでもないな…確かに転生人はレアスキルを持っていると言われているがここまでとは…プライ様の加護まで頂いてるじゃないか!」


「ユウキ、プライ様に感謝するのよ!こんなステータス母さん見たことないわ。」


 やっぱり皆驚いている。使いこなせるかどうかはおれ次第だが…



「魔王を倒さないといけないからね、プライが言ってたんだけど、魔王の復活はもう始まってるそうだよ。だからまずはレベルやステータスを上げないといけないんだ。」


「復活が始まってるって…あとどれ位時間があるんだ?」


「まだ少し時間はかかるみたい。でも神の感覚の少しだから…どの位時間があるのかは正直わからない。」


 あの時もっと詳しく聞いておくんだった…情報量が多くて、大事な事なのに頭が回らなかったな。



「どっちにしたっておれたちのやる事は変わんないよ!魔王討伐は最初から目標だったし、おれはユウキと冒険者になってその手伝いをする。そうでしょ?」


「あぁ、そうだな。ありがとうホーク。」


 ホークを危険な目に合わせてしまうかもしれないが、おれ一人で行くよりずっと心強い。

 何度確認しても一緒に行くって言ってくれたホークをこのチート能力で絶対に守らないと…。



「あんまり危ない事はしないでね…って言っても魔王を倒すんだもんね…母さんも父さんも心配だけど応援するわ。」


「あぁ。プライ様に頼まれたんだもんな…でもこれだけは約束だ!二人共絶対に死ぬな!生きてまたこの村に帰って来いよ!」


「「はい!!!」」


 多分両親は行かせたく無いんだと思う。普通に冒険者になるだけなら、何も言わず送り出してくれるだろうが、おれの相手は魔王だ…いつ死んでもおかしくない死地に息子を送り出す覚悟をしてくれたんだ。絶対にまた帰ってこないと。



「さぁ食べましょう!せっかくのご馳走が冷めてしまうわ。」


「あぁ!さっさと食べてさっさと寝ろよお前ら!」


 この日はご馳走を食べて明日に備えて早く寝た。明日おれたちは冒険者になるんだ!








 翌朝いつもより早く起き、旅の準備の最後の確認をする。



「お金よし、飲み物よし、着替えよし、ホークの荷物よし。」


 一番近いメルメルの街まで徒歩でおよそ6時間。食べ物は母さんが弁当を作ってくれる。自分で用意する物はインベントリに入れてある。あと準備と言えば、職業を変更するだけだ。



「なりきりチェンジ」


【なりきる職業を選んでください】


戦士 剣士 格闘家 魔法使い ヒーラー アーチャー テイマー 鍛冶士 鑑定士 マッパー 空間支配者



「なるほど…こう言う職業か、なりきり師って。」


 ホークが双剣士だからな…前衛を二人でやって力技で行くか、援護職にまわって後衛をやるか…それとも職人職でサポートにまわるかの三択だな。あと最後の空間支配者ってなんだ?



「どれにしようかな…」


「何をどれにするの?」


「うわぁ!」


 後ろから急に声をかけられ驚いてしまった。ホークが起きて話しかけてきたんだ。さっきまで寝てたからビックリした。



「ホークか…脅かすなよ!」


「ごめんごめん!で、何を迷ってたの?」


「なりきり師のスキルで変わる職業だよ。何がいいかなって…ホークとの連携とか考えてたら迷っちゃって…」


「そんなの好きな職業でいいじゃん!スキルがあったらいつでも職業変えれるんでしょ?」


「まだ検証してないからそこまではわかんないよ。

一度決めたら変えれないかもしれないし、当分なりきりチェンジが使えなくなるかもしれないし…。」


「なら試してみればいいじゃん!ギルドで冒険者登録してもおれらまだレベル1なんだし普通の職業でも受けれる依頼って少ないと思うよ?で、また変えれるならラッキーじゃん!」


 ホークの楽観的な性格はいつもの事だ…後の事は考えず突っ走ってしまう…一緒にダンジョンに入った時罠にかからないか不安だ…でもまぁ一理あるな。

 例えインターバルが必要でも当分一つの職業にするだけだし、プライが条件を満たせばいつでもどの職業にもなれるって言ってたし変われない事はないだろう。



「それもそうだな。ホーク何がいいと思う?おれは前衛なら戦士か剣士。後衛なら魔法使いかアーチャーがいいと思うんだけど…」


「ユウキの職業でしょ!ユウキが決めなよ!ただ戦闘職にしてね。さすがにまだ一人で戦えないと思うから。」


「う〜んそうだな…じゃあ無難に戦士にしとくかな。戦士を選択っと!」


 戦士の職業を選んだら身に付けていた物が変わった。右手には剣を持ち、左手には盾を持っていた。服装もさっきの服の上から革の鎧を装備した状態になった。



「へぇ〜なりきり師って装備品まで変わるんだ?いちいち買いに行かなくていいなんてそれだけでも羨ましいよ。」


「あんまり強そうな装備じゃないけどな…鑑定」


なりきり戦士の剣 攻撃+10

なりきり戦士の盾 防御+10

なりきり戦士の鎧 防御+10



「全部初期装備だな。結局は武器も防具も買わないと駄目みたいだよ。」


「な〜んだ、でも無いよりましじゃん!それより他にも転職してみてよ!」


「わかった、やってみる。なりきりチェンジ」



【なりきる職業を選んでください】


戦士 剣士 格闘家 魔法使い ヒーラー アーチャー テイマー 鍛冶士 鑑定士 マッパー 空間支配者



「おっ、使える!それじゃあ…ヒーラーを選択。」


 今まで来ていた装備から代わり、右手に杖、服は白を基調にした青のラインが入ったローブに変わった。



「おぉ、また変わった!やっぱ便利じゃん!」


「装備が最初からあるって考えるといいけど、買い揃えるってなったらお金がいくらあっても足りないな…」


「鍛冶士に転職して自分で作ったらどう?」


「なるほどその手もあるな、ホークってたまに勘が鋭いよな。」


「でしょ!いつでもアドバイスしてあげるよ!」


「すぐそうやって調子に乗って失敗するけどな!これも鑑定」


なりきりヒーラーのロッド 攻撃+2 魔攻+7

なりきりヒーラーのローブ 防御+6 魔防+4



「二種類のステータスが上がるのか。職業装備によって全然違っておもしろいな。」


「二人共〜、ご飯できたわよ〜」


 そんな確認をしていると、母さんが朝ご飯ができたと声をかけてきたので、職業を戦士に戻し、ホークと一緒に食べに行った。





「父さん、母さんこれを受け取って。」


 朝ご飯を食べ、出発の時…


 お小遣いを貯め、用意していたカーネーションを渡す。日本でも、母の日に渡す花だが、この世界にもカーネーションはあった。

 この世界では、別れと再開を誓う時に渡す花として定番の花だそうだ。



「まぁ綺麗なカーネーション。ありがとう。ユウキが買ってきてくれたの?」


「うん、また帰って来るって約束の印だよ。」


「なら、枯らさないように大事にしないとな。」


「いつも、いつまでもあなたの帰りを待ってるわ。」


「お前の家はここだ絶対に帰って来い!」


 そう言って二人共とも強く抱きしめてくれた。



「父さん…母さん…」


 例えこれで最後の別れになったとしても後悔しないように



「いってきます!」


 笑顔で行こう。


「「いってらっしゃい!」」

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