竜皇との対面と試練の始まり
「広いですね…それに複雑になっている感じがします。」
『今の竜皇がこんな風に作り替えたらしいわ。
自分が住みにくいからって。
人と話さないようにって。
今の竜皇はよっぽど人と関わりたくないらしいわね』
入り口からここまで歩いてきたが、中は迷路のようになっていた。
侵入者どころか道を知っている者ですら迷ってしまいそうだ。
「どうしますか?」
『大丈夫。任せて。ちょっと離れててね…』
そう言われてリトアから少し離れる。
私が離れたのを確認したリトアは…
『アイス…ブラスター!!!!!!!!!!!』
思いっきり壁をぶち破った。
するとその奥には大きな扉が見えた。
「ここが…竜王の間ですか」
『開けるよ。』
そう言ってリトアが扉を開ける。
『壁を壊して入ってくるとは思わなかった…です。』
目の前の玉座に座る小さな少女は可愛らしい声でそう言った。
恐らく…というか絶対、あれが…竜皇だろう。
ドラゴンを統べる親玉。
まさかこんな小さな女の子だとは…。
いや…ドラゴンは年齢と人化姿は必ず一致するとは限らない。
それにドラゴンは長生きだ。
中身はそれなりに成長したドラゴンなのだろう。
『ああした方が楽だったもの。
それに永遠に迷い続けかねないし。』
『そうです…か。』
「ところで…私達に魔攻大戦に出てもらうという話をイッカさんから聞いたのですが。」
『ええ。あなた達の強さを見込んでのこと…です。
無理なお願いだとは思い…ますが。
他の種族はついに禁忌の異界召喚を使用したとの報告が来た…ので』
「異界召喚…」
人間でいう勇者召喚みたいなやつか…。
ということは召喚されてるのは魔物か…?
もしかしたら人間かもしれない…。
リョウゴのクラスメイトか…それとも…別のクラスか…?
まぁそれは後で考えよう。
「それで私達に協力をしてほしいと。」
「あ、自己紹介がまだ…でしたね。私はルノス…です。」
「知ってるかもだけど、私はアリス。」
『私はリトア。よろしく。』
『リトア、アリス。これからよろしくお願いします。
さっそくで悪いのですが部屋を移動しましょう。
こっちの部屋…です。』
そう言ってルノスは私達を別の部屋へ案内するのだった
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案内されたのはいかにも女の子らしい部屋だった。
恐らくここはルノスの自室なのだろう。
しかしなんで自分の部屋に移動したんだろうか?
他の人に聞かれたくない話があったり?
「それで…協力というのは?具体的に何をすればよろしいのでしょうか?」
『その前に…あなたたちがこの里へ来た理由をお聞かせ願い…ますか?』
「私達がここへ来た理由…
私達は代々竜皇が継承するという巻物を見せてもらいに来たんです。
なにか新しい魔法のヒントになるかと思いまして」
『これが見たいんです…か?』
そう言ってルノスは一つの巻物を手元に出す。
『これは私の家に伝わる竜魔法の巻物…です。
大戦に参加してくれれば差し上げ…ます。
あと一つ…条件がある…です。』
「条件…ですか?」
『私もこの巻物がホイホイと渡していいものじゃないことは承知して…ます。
なのでこの巻物を渡すにふさわしい力があるかどうか試させてほしい…です。』
所謂試練ってやつか…。
なんにせよ巻物が手に入るのなら断る理由はない。
「もちろん受けさせてもらいます。」
『私は留守番してるわ。頑張ってね。』
『ありがとうござい…ます。』
「それで…条件というのは何でしょう?」
『これを見て…ください。』
そう言ってルノスは一枚の地図を広げる。
そこには事細かに国の現状や生息ドラゴンの種類が書かれていた。
その中に一つドクロマークに危険と書かれた場所があった。
『ここには危険なドラゴンが住んでいる…です。
その子とは話し合いをしても解決しなかった…ので
だからそれの退治をお願いしたい…です。』
「そう言うことならお任せください。」
『ありがとうござい…ます。』
ルノスはそう言ってニコリとほほ笑んだ。
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「ここが…目的の場所…洞窟…ですか。」
私はルノスに指定された危険なドラゴンがいるという場所に来ていた。
空に浮かぶ秘境のはずなのになぜこんなところに洞窟が…というのは
考えるだけ無駄なのだろう。
ここは異世界だし。
「お邪魔します…。」
『誰だ?我が領地に足を踏み入れるものは…』
真上からそんな声がして見上げるとそこには大きなドラゴンが私を見下げていた。
「…あなたがこの洞窟の主ですか?」
『いかにも。貴殿は何者だ?』
「私はアリス。竜皇ルノス様からあなたの説得をお願いされてきました。」
本当は討伐の依頼だったんだけど…
まぁ説得できるなら説得の方がだろう。
『あの小娘か…余計なことを…
帰れ。あの一族の遣いに話すことはない。
時間の無駄だ。』
そう言ってドラゴンはそっぽを向く。
話し合いが出来ないっていうのはこういうことか…
このドラゴンはルノスの一族を毛嫌いしてるってことか…。
これは話を聞いてくれる感じがしないな…。
まぁダメもとで聞いてみるか…
「ルノスの先祖が何をしたのか教えてもらえませんか?」
じっと目を見つめるとドラゴンはため息を吐いて
語り始めた。
『…あれはもう100年以上も前のこと。
私がここが住み着いたころの話だ。
ここにはもう一匹ドラゴンがいた。
そのドラゴンは私よりも先にここに住んでいた先輩なんだが
先輩は当時荒れていた私を受け入れてくれた。
先輩との暮らしは楽しかったんだ。
だが…ある日、先輩は国を追い出された。
なんの脈略もなくな。
先輩はそれが必然かのように里を出て行った。
私に何も言わずに…
もちろん私は当時の竜皇に掛け合ったさ。
だが取り合ってすらもらえなかったんだ。
『忙しいから蛮竜とは話してる暇もない』と
だから私は暴れてそして危険な竜と判断され
ここに閉じ込められた。
…これが私がやつらを恨む理由だ。
身勝手なのはわかっている。
あの小娘に罪がないこともな。
だがあの顔を見ると怒りがこみあげてくるのだ。』
「そうですか…」
そんな理由があったとは…
『話は終わりだ。早く帰れ』
「…」
普通に優しいドラゴンなのにどうしてルノスの先祖と対立なんか…?
話し合いとかで済んだはずなのに…。
『どうしても帰らないというのなら…ここで貴殿を倒す。』
…え?
考え事してる間になんかとんでもないことになってるんだけど?
『覚悟するがいいわ!!!』
そう言ってドラゴンは襲い掛かってくるのだった。
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