魔法学校入学試験編

開幕!魔法学校入学試験!

「今から筆記試験を行う。監督は私…ロン=グレムリーが行う。」


長い黒髪をなびかせ、眼帯をした男がそう告げる。


あの男は資料で見たことがある。


ロン=グレムリー


確か世界を支配しようとした魔王軍を初代勇者と共に打ち倒した男だ。


男なのに髪が異様に長く、背中に背負った大きな太い杖が特徴だとかなんだとか。


「…そんな英雄が試験官だなんて」


すごいこともあったものだ。


シェリルじゃなくてもこれは戦ってみたくなるね。


そう感心しながら配られた答案用紙を見る。


そこには大きく問題が三つだけ書かれていた。


え?三つだけ?


他の問題は?


…まぁとりあえず問題を見てみよう。


問一,水の魔法の詠唱呪文を答えよ。


一言一句間違えてはならない。


問二,初代勇者が最期に遺した遺品を一つ書け


問三,自分の得意な魔法を書け


…うん。絶対適当に書いたよね。この問題作った人。


水魔法の詠唱は


『母なる大地に抱かれし水の魔力よ。我に力を与えよ』


これは楽勝だ。


なんたってうちは水の魔法を得意とする家系だからね。


流石にこれは間違えないでしょ。


初代勇者が最期に遺したもの…


なんだろ?


勇者の剣…かな。


自分の得意な魔法…


私、そもそも魔法は使えないんだけど…。


まぁここは水魔法…って書いておこう。


「…これでよさそうですね」


答案を見直して間違ってないことを確認する。


そもそも三問しかないから見直しも何もないけど。


「やめ!筆をおけ!その場に用紙を置いて次は実技試験だ!


速やかに外へ移動しろ!私は先に行って待っている!」


そう言ってすっとロン先生は消えた。


恐らく転移魔法の類だろう。


伝説の人ともなるといとも簡単に使えてしまうわけか。


まぁ私も使えるんですけどね。


転移魔法は


こんなとこで使ったら騒ぎになるから流石に使わないけど。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「よーし!全員集まったな!これから実技試験を行う。


ルールは簡単だ!生き残れ!ただそれだけだ!」


そう言うとロン先生は何かの魔法を発動する。


その魔法の効果で周りに檻が現れた。


「これは…殺し合い…というわけですか」


「その通りだが違うぞ!受験番号20番!」


私の呟きにロン試験官は答える。


なんでこんな小さい声に反応できるの…?


地獄耳かよ…。


「生き残った者だけがこの学校に入学できる…と


そういう意味ではないんですか?」


言葉だけ聞いたらそういう風に聞こえるんですけど?


「頭が固いな。


この試験で私は人間性も見ている。


ということだ。


受験生同同士の協力も可だ。」


つまり…殺さずに城外に出せ。


他人と協力しても構わない…ってことか?


「まぁ生き残れといっても殺せというわけではない。貴様らの中には貴族のやつもいるだろう。


流石にそんなのを殺しでもしたら俺の首が飛ぶ。それは勘弁だ。


相手を気絶、もしく場外に落とせ。それだけだ。」


なるほど。要するにここにいる全員でバトルロワイヤルして


気絶したら脱落…と。


急所に当てれば楽そうだね。


リリンさんの時は相手がやばすぎて出来なかったけど。


今回の相手は学生だ。


きっと何とかなるだろう。


「殺さないなんて甘いのよ!」


ゴングが鳴った瞬間、そう言って受験者の一人がいきなり襲い掛かってきた。


両手には炎が出ている。


炎魔法の使い手か…。


私とは相性のいい相手だね。


「あなたがどんな思いでこの試験に挑んでいるのかは存じ上げませんが…


私は負けませんよ?


水刀」


初級水魔法の応用で水の刀を作り出す。


「っ!水の魔法の使い手だったのね…!」


「不利属性だから逃げますか?私はそれでもよろしいですけど。」


「だれが逃げるもんか!私は…負けるわけにはいかないの!」


そう言って炎の初級魔法であるファイアショットを連発してくる。


負けるわけにはいかない?


それは私だって同じだ。


私だってこの試験で合格しなければならない。


そのためには絶対にここで勝たなければならない。


「手加減は致しません。一閃」


「っ!速い…!」


素早いスピードで動きながら攻撃していく。


相手は驚いているがもちろんそれだけじゃない。


「重量調整」


《スキル:重量調整を発動します。》


切るたびに水の刀に重量調整を掛け重い一撃を叩きこむ。


「ファイアショット!ファイアショット!」


相手はファイアショットをずっと打ち続けてくる。


しかしさっきより精度が落ちている。


「魔力が切れて切れてきましたか?」


「まだ…まだ…ファイアショット!」


「ではとっておきをお見せしましょうか」


「消滅」


≪スキル:消滅を発動します。≫


消滅のスキルで相手の魔法を跡形もなく消して見せる。


相手も何が起こっているか理解出来ていないようだ。


「魔法が…消えた?いったい何を…」


「ちょっとしたマジックですよ」


「まじ…何?」


「ありゃ。通じませんでしたか」


この世界にはマジックって言葉は存在しないんだった。


失敗失敗。


世界の壁って難しい。


「ふ、ふん!どんだけあんたがすごかろうが私には敵わな…」


「あ、そこ危ないですよ」


「へ?きゃあああああああああああ…チーン」


私が注意したすぐ後にはもう既に女の子は吹っ飛んだ後だった。


「アリス!勝負ですわ!」


いきなりすっ飛んできたシェリルに吹き飛ばされて逆さに地面に埋まっている。


あーあ。だから言ったのに…危ないって…


「シェリル。とりあえずその人を引っこ抜いてください。勝負はそのあとです」


「分かりましたわ!」


そう言ってシェリルはさっきの子を引っこ抜いて…投げた。


投げた!?


やばい!?地面にぶつかる!


【ウォータークッション】


すれすれのところでスキルを使って受け止める。


「もう…シェリル。投げちゃダメですよ。そっとおいてあげないと」


完全にさっきの子は目を回しちゃってる。


完全に気絶だね。こりゃ。


部屋の隅に移動しといてあげよう。


「さぁ安全は確保しましたし…やりましょうか。」


「今日こそファイトですの!」


私とシェリルの一騎打ちが始まるのだった。







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