龍焔の機械神99(仮)設定資料集

ヤマギシミキヤ

用語事典

(注・後続作品のネタバレも含みます)


用語事典


【星舟】

 星舟とは、空間跳躍という技術を使い移動距離を短縮し、黒き星の海を航行する船。

 元々が空間跳躍とは、星の光が地上へ届く時間を超える――光速を突発する方法として開発されていた。

 力学や相対論において実数や要素が、実数有向量で表される質量や速度を負にしたり、複素数にすることによって、数式上は既存の物理理論と整合性を保ったまま、光速を越えることが可能であることが理論的には示される。

 しかし「負の質量」や「複素数の速度」を持った物質の存在を検証する方法が分からず開発は頓挫した。光速を越えることを考えると因果律に反したことが起こる可能性もあった。

 だが、一つの世界の中で光でも進むのが困難な距離を跳躍するのは不可能でも、隣接する二つの世界を結んで跳躍する技術は既にあったのである。神の悪戯か悪魔の囁きか。

 我々の住む世界とは並行して別の世界が存在している事実。そのもう一つの世界――異世界へ渡る方法は歴史の表には出てこない、何時の間にか完成された技術となっており、一定数の人間が二つの世界を往復していた。

 しかし、完成されたとは言っても危険を伴うのは解消出来ず、その為に一部の人間だけが知る技術に留まっていた。

 人々が地上を飛び出し黒き星の海へ進出するに連れて、航行に使う星舟の移動速度にも限界が生じ始めた時、異世界に渡るこの技術を応用すれば移動距離を劇的に稼げるのでは、という考えが出る。

 一旦並行する世界へ跳躍し僅かに角度を変えて元の世界へ戻る。そうすれば星と星の間を瞬時に移動できる。

 だが、この「僅かに角度を変える」というのが非常に困難であり、厳密な測定と計算が必要であるばかりか、少しでもズレれば目的地に到達不可能であり、失敗すれば異世界に取り残される事になる。

 しかし黒き星の海を迅速に移動する方法は他には遂ぞ作れなかったので、この方法を具現化させた機材を積んだ星舟が多く建造され、人は活動範囲を広げることになる。これが異世界へ渡る技術の流用であるとは混乱を招くので公には伏せられていた。

 その後、空間跳躍での事故で多くの星舟が失われ、異世界に取り残されたか、現世界に戻れても帰還不可能な距離まで角度を間違えたか、その行方は不明のままが殆ど。それでも人々は星舟を作り黒き星の海の航海を続けた。

 現世界にも残る星舟は、黒き星の海の大航海時代後期に作られた物が殆ど。制御に関しては高度なものが施されているので、空間跳躍を失敗することはないと考えられている。もし失敗することになれば星舟という高度な存在が二つの世界の狭間――界層で滞留することになり、その影響は計り知れない。それで発生した歪みに世界の半分くらいは飲み込まれるかも知れない。世界の半分とは我々が住まうこの星の半分ではない、黒き星の海の半分である。

 星舟の研究開発が行われていた最後期には、通常の状態とズレた状態を数瞬で繰り返すことにより界層の間に潜航を可能とした星舟が建造されていた。

 それは更に高度な操作技術が必要なので少数しか生産されていない、黒き星の海に潜れる潜水艦の様なもの。

 その特殊能力を秘めた数少ない星舟の一隻こそ魔女の創造主クリストフが所有する星舟であり、その能力を以て黒ノ欠片を回収できたとされる。


【封印炉】

 機械神が標準で四基搭載する炉は封印炉と呼ばれ、内部に黒孔ブラックホールを封じた縮退機関である。

 黒孔は周囲の質量を吸収することによって成長する。

 一方、熱的放射によって質量をエネルギーに変換しながら蒸発しており、黒孔の質量が小さければ小さいほど蒸発速度の等号の力の放出速度は大きくなる。

 したがって極小の黒孔に適切な量の質量を投入し続ければ、黒孔の成長と蒸発が平衡状態となり、黒孔を一定の大きさに維持することができる。

 黒孔の生成(および保持)に必要な力を黒孔が蒸発するときに放出される力よりも小さくすることができれば、極短時間で直接的に質量を力へと変換する極めて効率の高い動力源として利用することができる。

 しかも、理論的には投入された質量が十割になり、核分裂や核融合と違って廃棄物が全く残らない上に質量さえあれば何でも燃料にできるという利点がある。

 弦理論・膜宇宙理論の進展から、大型強粒子衝突型加速器程度のかつて予想されていたよりは低力(それでも過去最大級であり、陽子数千個分の質量に相当する)の加速器で極小黒孔を産み出せる可能性が論じられ、実験論題の一つに選ばれた。

 実際に大型強粒子衝突型加速器程度で黒孔が生成されたとしても投入される力に対してあまりにも小さすぎるが、遠未来の技術と考えられていた縮退炉の予想外に早い実用化につながり、機械神の創造主は主炉として採用した。

 一方、天体級の質量を持つ黒孔では熱的放射は無視できるほど小さくなるが、その周囲に形成された降着円盤から莫大な力が放出されている。

 一説には黒孔に吸い込まれた質量の三割が力として放出されるとも言う。

 この力を何らかの形で取り出すことができればこれも縮退機関の一種となりえ、これが黒孔生命体という黒き星の海最強の生命体の正体とされるが、どのような過程で生み出されのか不明である。


【黒孔生命体】

 黒き星の海で最強とされる生命体。黒孔ブラックホールに生命が吹き込まれたものとされるが詳細は不明。

 意思はなく感情の赴くままに行動する。

 その行動原理はどことなく自動人形に似ている。

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