Cパート

「ヌイ、その荷物を運ぶのは大変じゃないか?」


 後日……。

 おれはたまたま通りがかった洗濯場で、洗い立ての洗濯物が山ほど収まったカゴに挑もうとするヌイを見かけそう声をかけた。


 魔人だったかつて……。

 ヌイは人間の姿でも、老婆を軽々と抱え上げる力を見せた。

 しかし、もう人間になったのだし、洗い立ての洗濯物というものは重量がある。

 ここは一つ、おれが助け舟を――、


「ん……全然大丈夫……」


 ひょいっとカゴを持ち上げながら、ヌイが無表情にそう言った。


「あ、うん……全然大丈夫か。

 ――確認するが、魔人の力ってもう消えたのだよな?」


 他に誰もいないので、思い切ってそう尋ねてみる。


「ん……消えた」


「その割に、ずいぶんと力があるようだが……?」


「ん……これは魔人とは、関係ない。

 仕事をして分かったけど……あたし、力持ち」


 むん、という表情を作りながらヌイがそう告げた。


「そうか……仕事の邪魔をしてすまなかったな」


 ヌイに別れを告げ、廊下を歩む。

 あれって、素で怪力だっただけなんだな……。

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