イシガミケイタ12歳。理由あって、世界を救うことになりました。

みらい さつき

第1話 プロローグ。

 ボクの家は片田舎にある。

 東京でも、大阪でも、名古屋でもなくて。地方の、それも都市ではなく町と呼ばれるような場所。そんな田舎に住む何の変哲もない少年が、ある日、世界を救わなければいけなくなる。

 そんなことになれば、どうなるのか。考えなくても普通はわかる。そう……。パニックだ。

 そういうわけで、ボクは今、とても混乱している。

 何から話せばいいのか、わからないほど。




 まずはボクの家族を紹介しよう。

 地方公務員の父がいて、電車で離れた地方都市まで通う会社員の母がいて、年の離れた姉がいる。

 姉はとてもちゃんとした人だ。

 どのくらいちゃんとしているか、一つ、例を挙げてみよう。


 ここにAという宿題がある。

 この宿題の締め切りは明後日、3日後だ。つまり、この課題は今日やっても明日やっても構わない。

 この場合、ボクなら明日やる。しかも、宿題があることを忘れて、寝る直前に思い出し、慌ててやるタイプだ。見かねた姉はきっと手伝ってくれるだろう。

 だが姉は宿題を今日やる。それも、“今”だ。宿題をさっさと終わらせる。

「今日やっても明日やってもいいなら、明日やればいいんじゃない?」

 ボクは姉にそう言ったことがある。

「でもね、ケイちゃん」

 姉は静かな口調でボクを見ながら小さく笑った。

「宿題が終わってなかったら、気になってしかたなくない? 何をしていも、頭の片隅に『ああ、宿題をやらなきゃ』って思いがちらつく。それがわたしは嫌なの。今日やっても明日やってもいいなら、今日やればいいじゃない。それに、必ず明日出来るという保証もどこにもない。もしかしたら、何かイレギュラーなことが発生して急に忙しくなるかもしれない。とても宿題なんて出来る状況ではなくなるかもしれない。今日と同じ明日が来るかなんて誰にもわからないのだから」

 そう説明する姉の言葉を聞いて、ボクはちゃんとしている人だなあと感心した。思っただけで、ボクの性格が変わったわけではないけれど。

 だが今、ボクはその姉の言葉を実感している。


 明日という日が来るとは限らない。

 “今日”という時間の中に世界は閉じ込められていた。

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