進軍前夜
時は進み、いよいよ明日正午、俺達はグラーディア大陸へ向けて進軍を開始する。
当初の予定だと、俺達はグラーディア大陸が見えるまではフィリアス大陸で待機の予定だったんだが、アバリシア側にもドラゴンという航空戦力があることを鑑みて、最初から同行することになった。
フィリアス大陸の情勢については、オーダーズギルド総本部とウイング・オブ・オーダー号に設置した通信具と、トラベリングによる直接報告の併用だ。
トラベリングはグラーディア大陸近くになると使えなくなるし、通信具に至っては使えるかどうかも確認できていないんだが、グラーディア大陸上陸後は通信具による連絡もできなくなることは想定しているし、万が一の場合は即座に離脱することも考慮されている。
いよいよ決戦に赴くってこともあって、俺の気分も高揚してきている。
ただ今回の行軍は、妊娠中のヒルデ、領主のリカさん、学生のユーリとアリアは同行できないし、同じ理由でラウス達も今回は参加しない。
エド達も同様に不参加で、バトラーもエオス以外は残ってもらう予定だ。
なのでウイング・クレストから参加するのは、俺、プリム、マナ、ミーナ、フラム、アテナ、リディア、ルディア、真子さん、エオスの10人となる。
ルーカスとライラ、ミカルナも参加するが、今回の行軍ではルーカスがセカンダリ・オーダーに任命されているため、オーダーとしての参加となり、士官用の個室が割り振られている。
「いよいよ明日ね。私達は祈ることしかできないけど、無事に帰ってきてね?」
奥さんやお妾さん全員と本殿5階の露天風呂に浸かりながら、リカさんが俺達の無事を願いながら声をかけてくれた。
「もちろん。あの時の借りも返さなきゃだし、そもそもグラーディア大陸に長居するつもりはないよ」
「ええ。支配者を打倒しておきながら何もせずなんて褒められたことじゃないけど、今回の遠征の目的は神帝を打倒することで、グラーディア大陸を支配下に置きたいワケじゃないわ」
「無責任ではあるけど、神帝を倒したら全員グラーディア大陸から撤退する予定よ。何年か前に、そういった感じの神託も下されているし」
マナとプリムの言う通り、神帝を打倒した後は、すぐに撤退する予定になっている。
アミスター・フィリアス連邦天帝国としてもアバリシアを支配したい訳じゃないし、そんなつもりもない。
神帝が生きている以上、ヘリオスオーブは滅亡に向かって突き進んでいるから、あいつは倒すしかない存在だ。
ただ神帝は、アバリシアという国を200年もの長きにわたって支配している絶対君主でもあるから、打倒後にアバリシア国内が混乱することになるのは容易に分かる。
にもかかわらず、それらの後始末を一切無視して撤退することになった理由は、数年前に下った神託にある。
その神託によれば、アバリシア国内の軍人は全て魔族と化しており、一般人の魔化結晶の使用も開始されているそうだ。
魔族も神帝同様許されない存在だから、俺達からしたら倒すしかないんだが、神託によればその必要はないらしい。
というより、神帝を倒すことができれば、その問題は解決すると神託で言われている。
「神託か。確か真子さんの推測だと、グラーディア大陸そのものが別の世界から転移してきたのよね?」
「荒唐無稽な推測なんですけどね。ただ私達みたいな
真子さんの推測は確かに荒唐無稽ではあるが、別の世界から転移してきた
物語ではあるが、そんな感じの話もけっこうあった。
現実に起こり得るかどうかは微妙だが、それを言ったら異世界転移だって荒唐無稽な話だしな。
それに加えてグラーディア大陸の魔法体系や生態系の違いも、別世界からの転移説を後押ししているだろう。
その説が正しいとすると、もしかしたら神帝を倒したら、グラーディア大陸はヘリオスオーブから元の世界に戻ることになるのかもしれない。
こればっかりはその時になってみないと分からないが、グラーディア大陸の統治問題が解決するとなると、その可能性はゼロじゃないと思う。
「その話、言われるまで全く考えなかったわよね」
「というより、思いつくことがあり得ませんでした」
「まあ私からしても、荒唐無稽というかフィクションというか、ともかく物語のお話でしかないからねぇ。自分で言っておきながら、話半分が関の山だったわよ」
まあ、それについては俺も同じだけど。
だけど真子さんの仮説は、
「とはいえ無視するには大きな話だし、神託と合致する点もあるから、おそらくグラーディア大陸が別世界から転移してきた大陸だというのは、ほぼ間違いないんじゃないかしら?」
「ですけど人と大陸とでは、規模が違いすぎますよ。そもそも地球からヘリオスオーブへの転移だって、4つの刻印神器を使い、大和さんの魔力を辿ることでようやくだったそうですし」
「それもお義父さんとお義母さんの2人だけしか来れなかったそうだしね。刻印神器の力がどんなものかは知ってるけど、その刻印神器を4つ使って2人がやっとなんだから、大陸1つを転移させるなんて、どれほどの力が必要なのかわかったもんじゃないよ」
リディアとルディアの言うこともわかる。
父さんと母さんが俺を探すためにヘリオスオーブに来たことがあるが、ヘリオスオーブに移動するために2つ、帰るための灯台みたいな役割を果たすためにも2つの刻印神器が必要となり、その上で俺の魔力とヘリオスオーブに通じているであろう白蛇という触媒を使っていた。
俺も帰ることを前提にしていたから、多分3人までならなんとかなったんだろうけど、それでもカラドボルグ、フェイルノート、エクスカリバー、カリスという4つの刻印神器を使って数人しか異世界転移させられないってことは、大陸1つを転移させるとなると、本当にどれほどのエネルギーが必要なのか見当もつかない。
「確かにそうなんだが、神託を信じるなら神帝さえ倒せば解決するみたいだし、今はそれに頼るしかないんじゃないかな?」
「今回の進軍も、神託を前提にしてるところがあるしね。グラーディア大陸全土の統治なんて、どう考えても人手が足りないもの」
「行きたがる人もいないでしょうしね」
だろうな。
正直に言えば、俺も嫌だ。
それは俺だけじゃなく、グラーディア大陸に領地を与えるとか言われても、罰ゲームとしか思えないだろうな。
「それについては、神託を信じるしかないだろう」
「私の仮説が正しいかどうかも、そこで分かるでしょうしね。それはそれとして、大和君」
「はい?」
「今日はこの後、けっこう大変なことになるけど、体調は大丈夫?」
「ありがたいことに健康体ですねぇ」
「ですって」
真子さんがそういった瞬間、俺の両隣に陣取っていたプリムとアプリコットさんが同時に胸を押し付けてきた。
はい、今日はそうなんです。
明日の行軍に同行できない奥さんお妾さん達のお相手を、朝までしなきゃいけないんです。
もちろん同行する奥さん達も参戦してきますが、だから真子さんは俺の体調を確認してきなはったんです。
さらに恐ろしいことに、アプリコットさんも数ヶ月前にハイフォクシーに進化してしまったことで、全員がハイクラス以上になってしまい、皆さん体力はもちろん性欲もすごいんですよ。
本気で助けてくださいと言いたいけど、皆さん私の奥さんお妾さんなので、そんなことは口が裂けても言えません。
「大変なのはわかるけど、これが夫の務めよ」
「世間一般より数は全然多いけどね。あんっ」
「それでも手を出したのは俺だし、ちゃんと責任は取るよ」
大変なのは事実だが、それを承知の上で手を出したのは俺だから、言った通り責任は取らないとだ。
その証拠、となるかは分からないが、俺は両サイドのプリム、アプリコットさん母娘の胸を軽く揉みしだいた。
「あら、もう開始?それなら私も、今日は羽目を外させてもらおうかしら」
「わたくしも、と言いたいのですが、まだ安定期に入っていませんから、残念ですが今日は皆様のお手伝いに徹しましょう」
ネージュさんが俺の正面に跨り、ヒルデがそのネージュさんの胸に手を当てる。
よく見たらヒルデだけじゃなく、マリサもネージュさんの太ももに手を入れてるな。
ってことは、今日のトップはネージュさんになるか。
「言っとくけど、今日は俺も気分が高揚してるから、あんまり加減できないよ?」
「あたし達だって同じよ。早々にダウンしないでよね?」
「望むところだ」
なんか分が悪そうだが、俺だって嫌いじゃないし、気分が高揚してるのも間違いない。
集合時間までまだ20時間近くあるから、全員満足させるまでやってろうじゃないか。
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