オーダーの戦い
Side・ラウス
俺とキャロルさんは、残ったアイシクル・タイガーとフリーザス・タイガーの討伐を任された。
残ってるアイシクル・タイガーは7匹、フリーザス・タイガーも5匹いるけど、ハイクラスの人達はアイスクエイク・タイガーを相手してもらわないといけないから、そいつらの相手はノーマルクラスのセイバーやオーダー、ハンターってことになったんだ。
だけどアイシクル・タイガーはGランク、フリーザス・タイガーなんてPランクだから、ハイクラスだって相手にするのは辛い。
だから俺とキャロルさんが速攻で倒す事で、被害を減らす事になったんだ。
獣車の展望席で弓を構えている弓術士も援護してくれるから、俺達が全部を相手取る必要はないんだけど、それでも数が多いし、戦場のあちこちに点在してるから大変だよ。
だから大和さんとプリムさんは、俺にジェイドを、キャロルさんにフロライトを付けてくれたんだ。
ジェイドとフロライトならアバランシュ・ハウル相手でも戦力になると思うんだけど、アイシクル・タイガーやフリーザス・タイガーを放置しておくのも問題だから、アバランシュ・ハウルを受け持っているトライアル・ハーツやセイバー、オーダーも納得してくれている。
だから俺達は、急いでアイシクル・タイガーとフリーザス・タイガーを倒さないといけないんだ。
「たあっ!」
ようやく3匹目のフリーザス・タイガーを、ラピスライト・シールドに内蔵されている
アイシクル・タイガーも4匹倒してあるけど、さっきからずっと走り回ってるから、
あ、弓術士もアイシクル・タイガーを仕留めてくれてるから、残りはフリーザス・タイガー2匹になっているよ。
だけど俺達が間に合わなくて、犠牲になった人も少なくない。
ヒーラーでもあるキャロルさんは、重傷の人には
申し訳なさそうな顔をしているけど、キャロルさんも貴重な戦力だから、魔力が尽きて戦えなくなりました、なんてことは出来ないんだ。
治療中は無防備になるけど、そこはフロライトがしっかりと見張ってくれてるから、キャロルさんも安心して治療が出来るのもありがたいよ。
「キャロルさん、次行くよ!」
「分かりました。申し訳ありません!」
「お気になさらず!」
キャロルさんに声を掛け、ジェイドとフロライトに跨った俺達は、次のフリーザス・タイガーを探す。
どこだ……いた!
って、オーダーが!
「キャロルさん、次はあっちだ!」
「はい!」
アイスクエイク・タイガーと戦っているノーマルオーダーに、フリーザス・タイガーが襲い掛かっている。
そのせいで何人も倒れているし、今も鋭い牙で噛み付かれてしまっているけど、多分あの人はもう……。
まだ少し距離があるけど、俺は構わずヘビーファング・クラウドをけしかけた。
ジェイドとフロライトも、氷の槍や炎のブレスで援護してくれる。
魔獣魔法は、
ヘビーファング・クラウドはその魔獣魔法を組み込んであるから、俺のヘビーファング・クラウドで生み出された風と雷の狼達は、一直線にフリーザス・タイガーに襲い掛かった。
長となる風と雷を纏った巨狼を先頭に、ヘビーファング・クラウドは次々とフリーザス・タイガーに牙や爪を突き立て、オーダーから引き剥がしてくれる。
「たあっ!」
そのフリーザス・タイガーの脳天に、フロライトに跨ったままのキャロルさんが、ラピスライト・ロッドに仕込まれているショートソードを突き立てた。
少し浅い気がするけど、キャロルさんはショートソードに纏わせていた風と炎を送り込んでるから、かなり苦しんでいる。
あ、倒れた。
「大丈夫ですか!?」
すぐにショートソードをラピスライト・ロッドに納刀し、倒れているオーダーに駆け寄るキャロルさん。
息がある事を確認してからハイ・ヒーリングを使い、傷を癒しているけど、倒れてるオーダーの数は多いから、いくらキャロルさんでも癒しきれないよ。
「も、申し訳ありません、キャロル様……」
「気をしっかり持ちなさい!オーダーなのですから、この程度の傷で倒れてはなりませんよ!」
ヒーリングとハイ・ヒーリングを使い分けるキャロルさんだけど、ブラッド・ヒーリングやノーブル・ヒーリングは使っていない。
ノーマルクラスの人相手でも、その2つの魔法は魔力の消耗が大きいそうだから、今回は使えないんだ。
「キャロル様、我々には構わず、ご自身の成すべきことを……」
「私はヒーラーです。怪我人を放っておく事など出来ません。このような事態ですが、最低限の事はしておくつもりです」
キャロルさんに限らず、ヒーラーってそう言う人が少なくないからね。
おっと、フリーザス・タイガーはあと1匹残ってるから、俺はそれを探しておかないと。
「いた。あ、終わった」
「はい?」
キャロルさんが何を言ってるんだっていう顔してるけど、見つけたと思ったら矢が何本も刺さって倒れたんだよ。
しかもその矢は、俺も見覚えがあった。
「タイダル・ブラスターとサンダースケイル・レイン、フラム姉さんとレベッカが倒したみたいだ」
「なるほど、さすがはフラムお姉様とレベッカですね」
「これでアイシクル・タイガーとフリーザス・タイガーは全部終わったはずだから、俺はオーダーの援護をするよ」
「では私は、このまま治療を続けます」
そうして下さい。
俺はヘビーファング・クラウドを再展開させて、アイスクエイク・タイガーと戦っているデルフィナさんに駆け寄った。
「デルフィナさん!」
「ラウス君?何故ここに?」
声を掛けられて驚いた顔をしたデルフィナさんだけど、俺に視線を向けたのはほんの一瞬で、すぐにアイスクエイク・タイガーを睨み返す。
というかデルフィナさん、右手の手首から先が無くなってる?
「アイシクル・タイガーとフリーザス・タイガーは倒しました!俺も援護します!」
「頼む!」
「はい!」
デルフィナさんの許可を得た俺は、そのままヘビーファング・クラウドをアイスクエイク・タイガーにけしかけた。
配下の狼達は普通の狼と大差ない大きさだから簡単に蹴散らされちゃったけど、長は5メートル近い巨体だし、風と雷の体を持ってるから、アイスクエイク・タイガーの爪もほとんど効果が無い。
だけどアイスクエイク・タイガーもさるもので、
理由は分からないけど、ヘビーファング・クラウドの長の雷が弱くなってきてる?
いや、今はその理由を考えてる場合じゃない。
「そのまま首に噛み付け!」
雷が弱くなっても、風が遮られても、長は俺の命令に従って、アイスクエイク・タイガーの首筋に噛み付いた。
首筋から体内に雷が流し込まれたせいで、アイスクエイク・タイガーが悲鳴を上げ苦しんでいる。
俺はラピスライト・ソードを構え、スカファルディングを使って突っ込んだ。
「総員、ラウス君に続け!」
デルフィナさんの指示で、オーダー達もスカファルディングやフライングを使って接近し、次々と攻撃を繰り出した。
俺もラピスライト・ソードとラピスライト・シールドを振るって、アイスクエイク・タイガーの頭部を傷つけ、耳を突き刺した。
本当は脳天に突き刺すつもりだったんだけどね。
「そこだああああっ!」
だけどアイスクエイク・タイガーの脳天には、デルフィナさんの剣が突き刺さっている。
「このまま倒れてしまえっ!」
デルフィナさんは
アイスクエイク・タイガーは弱々しい鳴き声を上げると、そのまま倒れ、動かなくなった。
「ふう……。さすがにM-Iランク2匹を相手取るのは、かなり大変だな」
なんてことを口にするデルフィナさんだけど、既に1匹倒してたのか。
「まだアイスクエイク・タイガーは残っている。第7分隊は残っているアイスクエイク・タイガーの下へ行くぞ!」
重傷者を後方に下げると、デルフィナさんはすぐにそう命じた。
「ラウス君はここに残って、万が一に備えてくれる?怪我人の護衛も必要だからね」
「わかりました」
俺もアイスクエイク・タイガーやアバランシュ・ハウルの援護に行きたかったけど、ここにはキャロルさんもいるし、怪我人だって多いんだから、確かに護衛は必要だよね。
ポーションで怪我を癒したデルフィナさん達は、すぐに次のアイスクエイク・タイガーに向かって駆け出していく。
デルフィナさんは右手首断裂の重傷なのに、率先して駆け出していく姿を見て、俺はデルフィナさんが無事に帰ってくる事を祈るしか出来なかった。
Side・レックス
「ジェネラル・オーダー!」
「分かっている!」
タイガリーのルーカスとともにシールディングを使い、アイスクエイク・タイガーの攻撃を受け流した私は、そのまま剣を振るい、右前脚を斬り落とした。
此度のスリュム・ロード討伐戦に参加しているオーダーは第1分隊と第7分隊、そして第6分隊のハイオーダーのみだ。
第6分隊のハイオーダーは10名なので臨時的に第1分隊に編入させ、それぞれの分隊でスリュム・ロードの相手を行っている。
既に私達第1分隊もデルフィナさん率いる第7分隊も、アイスクエイク・タイガーを1匹ずつ倒しているが、今回の討伐戦はそれだけで済む話ではない。
事実、今私達第1分隊が戦っているアイスクエイク・タイガーは、2匹目になる。
「もらいっ!」
大きな悲鳴を上げたアイスクエイク・タイガーに、ハイハーピーのライラがフライングを使って接近し、長い尾を斬り落とした。
アイスクエイク・タイガーは長い尾に
もちろん爪や牙を無視するわけにはいかないが。
尾まで斬り落とされたアイスクエイク・タイガーは、再び悲鳴を上げた。
だが自らの尾を斬り落としたライラに憎悪の視線を向けると、
「ライラ!」
「『シールディング』!って、ちょっと!数が多いよ!きゃっ!」
ライラはその氷の槍を、シールディングとフライング、スカファルディングを使い防いでいるが、全てを防ぐことなど出来ない。
事実ライラの体には、いくつもの氷の槍が突き刺さっている。
「はああああっ!」
「たああああっ!」
「ギャウンッ!」
だが突然、氷の槍が止まった。
私の妻でもあるセカンダリ・オーダーのローズマリーとミューズが息の合った連携を仕掛け、アイスクエイク・タイガーを吹き飛ばしたからだ。
「無事か、ライラ?」
「な、何とか……。あ~痛い……」
「『エイディング』。そんなことを言えるようなら、まだまだ大丈夫ですね」
どうやらライラは、重傷というわけではないが軽傷というわけでもないようだ。
いや、M-Iランクモンスターの攻撃を受けているのだから、軽傷の訳がないか。
だが
「っの野郎!」
恋人でもあるライラを傷付けられたことに怒ったルーカスは、剣に
ルーカスとライラの剣は、大和君が出した依頼の報酬だと聞いているが、随分と太っ腹なことだと思う。
私もルーカスの後に続き、剣を振るう。
マリーやミューズも、援護のために
そしてルーカスの剣で頭を貫かれたアイスクエイク・タイガーは、ゆっくりと倒れていった。
「思っていたより楽に倒せたな」
「そうね。やはり合金のおかげで、魔力を十全に使えるようになったことが大きいわ」
「同感だ。恐らくオーク・クイーンの時は、無意識に魔力を制限していたんだろう」
オーダーズギルド・トラレンシア派遣部隊の中で、直接終焉種と相対した経験を持つのは、私とミューズだけになる。
その際にP-Cランクモンスター オーク・クイーンの討伐も行っているが、あの時より楽に感じたというミューズの意見には、私も同意出来た。
「私も同感だが、その話は終わってからにしよう。ライラ、傷は?」
「自前のハイ・ヒーリングを使いましたから、問題無いですよ」
「分かった。では回復魔法や
2匹もいたA-Cランクモンスターのアバランシュ・ハウルだが、1匹は既にプリムさんが倒している。
もう1匹はトライアル・ハーツが受け持ってくれていたのだが、彼らだけでは荷が重いと感じた私とアライアンス・リーダーを務めているアルベルト卿は、数名のハイオーダー、ハイセイバーも援護に向かわせた。
だが今、そのアバランシュ・ハウルの相手をしているのは我が国の第二王女マナリース殿下と、ホーリー・グレイブのリーダー ファリスさんだ。
遠目だから確認し辛いが、驚いたことにマナリース殿下とファリスさんは、アバランシュ・ハウルが相手だというのに互角以上に渡り合っているように見える。
お2人のレベルは60代中ほどのはずだから、もしかしたらプリムさんの援護でアバランシュ・ハウルの相手をしていた際に、エンシェントクラスに進化したのかもしれない。
だがだからといって、援護をしないという選択肢はあり得ない。
だから私は部隊を3つに分け、負傷者の治療、アイスクエイク・タイガーの討伐、そしてマナリース殿下の援護に向かうことにした。
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