次の予定

 無事にエレファント・ボアを討伐した俺達は、エオスが持つ獣車に乗って、ドラグニアに戻ってきた。

 ハイドラゴニアンでも1日に2回竜化するのはキツいそうなんだが、マナと竜響契約を結んだことで魔力が増えたから、エオスは2回なら何とか竜化できるようになったと言っていた。

 だけどいきなりっていうのはさすがに無茶だから、今回の討伐では竜化したままでいてもらうことにして、そのおかげもあってか日が沈む前にドラグニアに戻ってこれたと言えるかな。


「いくらハイドラゴニアンがいるからって、早過ぎないかしら?」


 鑑定室でエレファント・ボアをはじめ、ジャンボノーズ・ボア、ロングノーズ・ボアの死体を出すと、カナメさんに激しく呆れられたが。


「今回って、あたしと大和は何もしてないのよね」

「エオスもだな」


 いつでもフォローできる準備はしていたが、その程度だったからな。


「そうなの?それじゃあエレファント・ボアを倒したのって、いったい誰?」

「マナ、リディア、ルディアの3人ですね。最初は攻めあぐねてたみたいだけど、それでもけっこうあっさり倒してたと思いますよ」

「言う程簡単じゃなかったけどね」


 ルディアのセリフに頷くマナとリディアだが、そこまで苦戦してるようには見えなかったぞ?

 その様子を説明すると、カナメさんだけじゃなく、レミーまで大きな溜息を吐いてたが。


「S-Iランクモンスターを、進化したばかりのハイクラス3人で討伐か。合金のおかげもあるんでしょうけど、それだけじゃない気もするわね」

「しかもマナリース殿下のバトル・ホースが、ウォー・ホースに進化したっていうおまけまでついてますよ?」


 合金のおかげで魔力を制限する必要はなくなってるから、それは間違いなくあると思う。

 スピカのウォー・ホースへの進化は、時間の問題に近かったんだけどな。


 バトル・ホースはCランクモンスターだが、上位種になるB-Uランクにデュエル・ホースっていうのがいるから、ウォー・ホースはS-Rランクモンスターってことになる。

 元々マナと相性が良かったこともあって、スピカはBランクモンスターでも普通に倒せてたんだが、希少種に進化した今じゃ、Gランクモンスターが相手でも力負けはしない気がする。


「そっちも驚いたけど、私が一番驚いたのはラウス君ね。ジャンボノーズ・ボア5匹を1人で狩って、しかもハイウルフィーに進化までしてるなんて……」


 俺、プリム、エオス以外のみんなは、いくつかレベルが上がっている。


 ヤマト・ハイドランシア・ミカミ

 17歳

 Lv.72

 人族・エンシェントヒューマン

 ユニオン:ウイング・クレスト

 ハンターズギルド:アミスター王国 フィール

 ハンターズランク:ミスリル(M)

 オーダーズギルド:アミスター王国 フロート アウトサイド

 オーダーズランク:オリハルコン(O)


 プリムローズ・ハイドランシア・ミカミ

 17歳

 Lv.68

 獣族・エンシェントフォクシー

 ユニオン:ウイング・クレスト

 ハンターズギルド:アミスター王国 フィール

 ハンターズランク:プラチナ(P)


 マナリース・A・ミカミ

 18歳

 Lv.50

 人族・ハイエルフ

 ユニオン:ウイング・クレスト

 ハンターズギルド:アミスター王国 フロート

 ハンターズランク:シルバー(S)


 ユーリアナ・レイナ・アミスター

 14歳

 Lv.22

 人族・ヒューマンハーフ・エルフ

 ヒーラーズギルド:アミスター王国 フロート

 ヒーラーズランク:ゴールド(G)


 フレデリカ・アマティスタ

 19歳

 Lv.29

 人族・エルフ

 ユニオン:ウイング・クレスト

 オーダーズギルド:アミスター王国 メモリア アウトサイド

 オーダーズランク:カッパー(C)


 ミーナ・F・ミカミ

 17歳

 Lv.41

 人族・ヒューマン

 ユニオン:ウイング・クレスト

 オーダーズギルド:アミスター王国 フロート アウトサイド

 オーダーズランク:ブロンズ(B)

 ハンターズギルド:アミスター王国 フィール

 ハンターズランク:ブロンズ(S-B)


 フラム・ミカミ

 18歳

 Lv.39

 妖族・ウンディーネ

 ユニオン:ウイング・クレスト

 ハンターズギルド:アミスター王国 フィール

 ハンターズランク:ブロンズ(B)


 リディア・ハイウインド

 16歳

 Lv.48

 竜族・ハイドラゴニュート(氷竜)

 ユニオン:ウイング・クレスト

 ハンターズギルド:バレンティア竜国 ドラグニア

 ハンターズランク:シルバー(S)


 ルディア・ハイウインド

 16歳

 Lv.48

 竜族・ハイドラゴニュート(火竜)

 ユニオン:ウイング・クレスト

 ハンターズギルド:バレンティア竜国 ドラグニア

 ハンターズランク:シルバー(S)


 アテナ・ウィルネス・アースライト・トマリ

 84歳

 Lv.36

 竜族・ドラゴニアン

 竜名:アースライトドラゴニアン

 ユニオン:ウイング・クレスト

 ハンターズギルド:バレンティア竜国 ドラグニア

 ハンターズランク:ティン(B-T)


 ラウス

 13歳

 Lv.45

 獣族・ハイウルフィー

 ユニオン:ウイング・クレスト

 ハンターズギルド:アミスター王国 フィール

 ハンターズランク:シルバー(S)


 レベッカ


 13歳

 Lv.39

 妖族・ウンディーネ

 ユニオン:ウイング・クレスト

 ハンターズギルド:アミスター王国 フィール

 ハンターズランク:ブロンズ(B)



 キャロル・ベルンシュタイン

 15歳

 Lv.24

 人族・エルフ

 ユニオン:ウイング・クレスト

 ヒーラーズギルド:アミスター王国 フィエリテ

 ヒーラーズランク:シルバー(S)



 エドワード・アルベルト

 19歳

 Lv.23

 人族・フェアリーハーフ・ドワーフ

 ユニオン:ウイング・クレスト

 クラフターズギルド:アミスター王国 フィール

 クラフターズランク:ゴールド(P-G)


 マリーナ・アルベルト

 19歳

 Lv.24

 竜族・フェアリーハーフ・ドラゴニュート

 ユニオン:ウイング・クレスト

 クラフターズギルド:アミスター王国 フィール

 クラフターズランク:シルバー(S)

 トレーダーズギルド:アミスター王国 フィール

 トレーダーズランク:ブロンズ(B)


 フィーナ・アルベルト

 17歳

 Lv.21

 妖族・ハーピー

 ユニオン:ウイング・クレスト

 クラフターズギルド:アミスター王国 フィール

 クラフターズランク:シルバー(S)


 マリサ

 20歳

 Lv.28

 妖族・ヴァンパイア

 ユニオン:ウイング・クレスト

 バトラーズギルド:アミスター王国 フロート

 バトラーズランク:シルバー(S)


 ヴィオラ

 15歳

 Lv.23

 獣族・タイガリー

 ユニオン:ウイング・クレスト

 バトラーズギルド:アミスター王国 フロート

 バトラーズランク:ブロンズ(B)


 ユリア

 14歳

 Lv.21

 獣族・ラビトリー

 バトラーズギルド:アミスター王国 フロート

 バトラーズランク:カッパー(C)


 エオス・ウィルネス・グリーン

 117歳

 Lv.52

 竜族・ハイドラゴニアン

 竜名:グリーンドラゴニアン

 ユニオン:ウイング・クレスト

 バトラーズギルド:バレンティア竜国 ドラグニア

 バトラーズランク:ゴールド(G)

 ハンターズギルド:バレンティア竜国 ドラグニア

 ハンターズランク:ゴールド(G)


 マナはレベル50になったし、リディアとルディアはレベル48だ。

 ミーナはレベル41、フラムはレベル39、リカさんはレベル29、ユーリはレベル22、アテナはレベル36、レベッカはレベル39、キャロルはレベル24、マリサさんはレベル28、ヴィオラはレベル23、ユリアはレベル21になっているんだが、凄いのはレベル45になって、さらにハイウルフィーに進化したラウスだろう。


「戦闘中に進化したのに、そんなことお構いなしにジャンボノーズ・ボアを狩り続けたって、普通にあり得ませんよ?」


 レミーが呆れたように口を開くが、リディアとルディアが進化した際はラウスも見てたし、マルカ様が進化した時の状況も教えてある。

 だから戦闘中に進化する可能性はしっかりと考えてたし、何よりラウスは一刻も早く進化したがってたから、相手がB-Rランクモンスターだってことも踏まえて、落ち着いて対処してたんだよな。


「エトラダでの騒ぎは、私も聞いているわ。だから気持ちは分からなくもないけど、ラウス君が進化したことを知れば、ドラグニアの貴族達は多少の無理をしてでも、彼を取り込もうとするわよ?」


 それは想定内だな。

 ナールシュタット公爵の例もあるから、今は貴族お断りで通すつもりだ。

 それでもしつこく迫ってくるようなら、物理的に大人しくしてもらってもいいだろう。


「それもどうかと思うけどね。とはいえ、アミスターの貴族と違ってバレンティアの貴族は強引だから、こちらも相応の対応を取らざるを得ないんだけど」


 それでもソレムネやレティセンシアの貴族に比べたら、まだマシって話なんだよな。


「つまりラウス君のレベルと進化は公表するけど、同時にウイング・クレストの対応も明言するってことですか?」

「そうしてくれ。下手をすれば俺が敵に回ることになるんだから、貴族どころかハンターだって二の足を踏むだろうからな」


 バレンティアのライバートさん、アレグリアのヒトミさん、トラレンシアのセルティナさんは、成人前にハイクラスに進化したって話だが、それでも15か16になってからだったらしいし、グランド・ハンターズマスターは20歳を超えてから進化したそうだから、ラウスはその4人より早いことになる。

 しばらくは反動が出るかもしれないから様子を見るが、成人したらエンシェントクラスへの進化も目指すだろうし、それも十分可能だ。

 だから貴族どころか、ハンターだって自分達のレイドやユニオンに取り込みたいって考えるだろう。

 アミスターの伯爵令嬢キャロルがいるからハンターは牽制できるんだが、貴族は強引な手を使ってくることも考えられるから、バレンティアを出るまでは警戒しとかないといけない。


「エレファント・ボア1匹、ジャンボノーズ・ボア5匹、ロングノーズ・ボア23匹、確認したわ。エレファント・ボアは報酬になるけど、ジャンボノーズ・ボアとロングノーズ・ボアはどうするの?」

「ジャンボノーズ・ボアは2匹、ロングノーズ・ボアは10匹引き取って、後は売るつもりですよ」


 ジャンボノーズ・ボアを倒したのはラウス、ロングノーズ・ボアはミーナ達が倒してるが、帰りの道中でどうするかは決めてある。

 ジャンボノーズ・ボアは希少種だから素材もそれなりに希少だし、ロングノーズ・ボアはアミスターにはいないから、これも貴重な素材になる。

 さらに肉も美味いから、ある程度は持って帰るつもりだった。

 これらの買取額は、討伐したみんなの分ってことになって、その半分がユニオン資金に回される。

 エレファント・ボアは討伐の報酬は死体だが、これは俺とプリムの我儘に近いから、マナ、リディア、ルディアには俺のポケットマネーから査定額の半分を渡すことになってるぞ。


「わかったわ。レミー、査定をお願い」

「わかりました」

「それと、アテナ様は初依頼達成になるし、ミーナさんもランクアップの手続きが必要ね」


 アテナはこれがハンターとしての初依頼だったから、B-Iランクに昇格ってことになる。

 ミーナはレベル41になったから、こっちはSランクだな。

 フラムとレベッカはレベル39だから、こっちも近い内に昇格できるだろう。


「これで手続きは終了です。お疲れ様でした」

「ありがとうございます」

「ありがとう!」


 手続きをしてくれたレミーにお礼を言うミーナとアテナ。

 これでミーナもSランクハンターだが、Sランクオーダーへの昇格条件はハイクラスに進化することだから、こっちはもう少し先だな。


「それじゃ大使館に戻りましょうか」

「手紙も頼まないといけないしね」


 すっかり忘れてたが、俺がアテナと婚約したこと、マナがエオスと竜響契約を結んだことを、ラインハルト陛下に直接報告しなきゃならない。

 だけどいきなり行くのも問題らしいから、先に手紙を出しておくことになっている。

 グリーンドラゴニアンになったエオスならフロートまでは1日で着けるらしいが、ワイバーンとかなら2日はかかるから、あと数日はドラグニアに滞在しなきゃだな。


Side・プリム


 大使館に戻ると、フロートからの手紙が届いていた。

 王女の処刑に憤慨したレティセンシアは挙兵しようとしてるらしいんだけど、各ギルドが撤退したこともあって物資が滞り、準備に手間取ってるらしいわ。

 トレーダーズギルドだけは規模を縮小して活動を続けてるけど、こちらも撤退を匂わせることでレティセンシアを牽制してるみたいだから、無理矢理協力させることもできないみたいね。

 だんだん寒くなってきてるし冬はレティセンシアも動けないと思うけど、春に一度ぐらいは武力衝突があるんじゃないかってライ兄様は予想しているみたいだわ。


 だけどレティセンシアが挙兵するってことは、アミスターだって挙兵するってこと。

 しかも新装備も行き渡ったそうだから、オーダーズギルドの戦力は増強されている。

 そんなアミスター相手に宣戦布告するなんて、どう考えてもレティセンシアの滅亡しか思い浮かばないわね。


「ということは、春ぐらいまでは余裕があるってことか?」

「多分ね。あと2ヶ月もすれば雪も降り始めるから、そんな状況で行軍なんて、自殺行為と変わらないし」


 レティセンシアは年間を通じて雨が多いけど、アミスターには四季があるから、冬になると雪が降る。

 しかもキャロルによると、ベルンシュタイン伯爵領は毎年けっこうな雪が積もるらしいから、物理的にも行軍が不可能になる。

 そんな状態での行軍なんて、リカさんの言うように自殺行為でしかないわ。


「ってことは、ソルプレッサ連山に行く余裕はあるな」


 ボソッとそんなことを言った大和だけど、あたしとしてもその案には賛成だわ。

 いっそのこと、ソルプレッサ迷宮に行ってもいいかもしれない。


「あのね、ガイア様が仰ってたこと、忘れてない?」

「そうですよ。ソルプレッサ連山の宝樹には、テスカトリポカがいるんですよ?」


 ルディアとフラムがそう言うけど、ごめん、あたしは忘れてたわ。


 ジャガーの終焉種テスカトリポカ。

 100年程前に生まれたらしいんだけど、何代か前の愚竜王がその存在を公にしなかったせいで、先日フォリアス陛下が公表するまでは、誰もソルプレッサ連山に終焉種がいるなんて思ってもいなかった。

 あのナールシュタットでさえ、顔を青ざめさせたらしいわ。

 自分の領地の目と鼻の先なんだから、当たり前の話だけどね。


「石碑のこともあるから、大和としては宝樹に行きたいんでしょうけど、さすがに終焉種がいるとこなんて、私達の手に余るなんて話じゃないわよ?」


 マナも及び腰だけど、これは仕方ないか。

 多分、あたしと大和なら討伐できると思うし、終焉種の素材はすごく魅力的なんだけど、みんなも一緒にってわけにはいかないから、それを言われてしまうと自重するしかない気もする。


「それならソルプレッサ迷宮はどうだ?ナールシュタットのこともあるから、攻略しておくのも悪くないだろ?」


 大和もみんなに無理をさせようとは思ってないけど、高ランクモンスターの素材は手に入れたいって感じね。

 気持ちはよく分かるんだけど。

 それに迷宮核ダンジョンコアは例外なく、迷宮ダンジョンがある国の王家が管理することになっているから、ソルプレッサ迷宮を攻略し、迷宮核ダンジョンコアを手に入れることができれば、ナールシュタットが大きな顔をすることもできなくなる。


 そういえば、ナールシュタットってどうなったのかしら?


「ローザリーさん、ナールシュタットってどうなったんですか?」

「アミスター、ドラゴニアンを侮辱したとして、王位継承権を剥奪されています。妹も継承順位を大きく下げられていますから、間違ってもニズヘーグ公爵家が王位に就くことはないでしょう」


 王位継承権の剥奪か。

 順位の繰下げぐらいだと思ってたんだけど、思い切ったことするわね。

 いや、ドラゴニアンを敵に回せば国が滅ぶ可能性だってないわけじゃないんだから、妥当な処罰になるのかしら?


「王位継承権の剥奪ですか。ですが公爵家当主ということに変わりはないんですよね?」

「そのようです。竜王陛下としては、できれば改易、最低でも蟄居引退ぐらいはさせたかったはずですが、貴族が騒いだため、そこまではできなかったようですね」


 ミーナの疑問に答えるローザリーさんだけど、それはそれで問題ね。

 アミスターやトラレンシアは王家の権勢が強いけど、バレンティアは貴族の権勢が強いから、いくら竜王陛下でもどうすることもできないこともある。

 多分だけどナールシュタットは、こんな時のために迷宮ダンジョンを私物化してたんでしょうね。


「そいつ、ドラゴニアンを奴隷にしろって言ってたんでしょ?なのにそいつを助けるみたいなことをした貴族が多いってことは、バレンティアの貴族ってそいつと同じことを考えてるってことなの?」


 アテナが不愉快そうな、それでいて不安そうな顔をしている。

 ナールシュタットがドラゴニアンを見下し、隷属させたいって考えてることはそれなりに有名だけど、そのナールシュタットの処分について貴族が騒いだってことは、ナールシュタットと同じような考えをしている貴族が少なからずいるってことになるんじゃないかって心配しているのよ。


「それもないとは言わないけど、次は自分達じゃないかって思ってるんじゃないかしら?アミスターやトラレンシアと違ってバレンティアの貴族は自分の領地じゃ好き勝手してるから、そっちの悪事が露見した場合のことを考えてるんだと思うわ。そんな貴族、潰れちゃえばいいのに」


 自分の国だっていうのに、リディアが辛辣なことを言う。

 だけどアミスターはオーダーズギルドが、治安維持だけじゃなく監視役も担っているし、何よりそんなことをする領主はほとんどいない。

 トラレンシアも監査役が年に数回やってくるそうだから、不正はすぐに露見する。

 しかもその監査役、ハンターやトレーダーが指名されることもあるらしいし、何より貴族には一切非公開だから、買収も難しいのよね。


 だけどバレンティアは、監査そのものがない。

 時折王家が巡行することはあるけど、しっかりと予定を立ててから動くから、貴族からすればやりやすいことこの上ない。

 代々の竜王陛下も何とかしたいと考えてたそうだけど、その度に貴族から止められたり、酷い時には税が目に見えて減ったりとか、王政国家とは思えない仕打ちを受けたこともあるらしいわ。

 特に迷宮ダンジョンを抱える領主は露骨で、迷宮核ダンジョンコアを献上しようともしなかったって話だから問題だわ。

 露見してからは渋々ながら献上してきたそうだけど、まだ未攻略の迷宮ダンジョンもあるから、竜王家としては早急に攻略したいって考えてるのよ。


「あと、これは俺の個人的な理由になるんだが、レティセンシアとの戦争が始まる前に、出来る限りの力はつけておきたいんだ。ガイア様の予知夢じゃ俺は助かるみたいだけど、できることならその予知は覆したいからな」


 ああ、そっちの理由もあるのか。

 レティセンシアとの戦争がいつになるのかは分からないけど、ガイア様の予知夢通りなら数年以内に起こることになる。

 だけどその戦争で、大和は追い詰められることにもなっている。

 あたしやリカさん、フラムは妊娠中、マナは出産した直後ってことだから、大和を助けることはできないっていうのも問題よ。

 いや、もちろん嬉しいんだけど、その嬉しさも半減ってとこかしら。


「そう言われちゃ、私達も断りにくいわね」

「そうですね。ですがソルプレッサ迷宮の迷宮核ダンジョンコアを献上することができれば、ある意味じゃ後顧の憂いを断つことはできるんじゃないでしょうか?」

「でしょうね」


 ミーナの疑問に答えるマナだけど、あたしもその通りだと思う。

 ナールシュタットはドラゴニアンだけじゃなく、アミスターに対しても良い感情を持っていないから、いざって時に何かをしてくる可能性は否定できない。

 だけどニズヘーグ公爵領の財政はソルプレッサ迷宮に大きく依存しているから、その迷宮核ダンジョンコアを抑えることができれば、ナールシュタットの影響力を削ぐことはもちろん、迷宮ダンジョンを抱える貴族達だって抑えやすくなる。

 なにせ迷宮核ダンジョンコアを破壊すれば、迷宮ダンジョンは消滅するんだからね。

 重要な資源を失うだけじゃなく資金源まで無くなっちゃうんだから、貴族からすれば大事よ。

 もっともそれをやっちゃったら、貴族からの反感も凄いことになるんだけど。


「では次は、ソルプレッサ迷宮に行くということで?」

「そうしましょう。エド達はどうする?」

「せっかくだし、着いていきますよ。中の移動は獣車でできるって話だし、俺達も少しはレベルを上げておいた方がいいと思ってるんで」


 エド達も参加か。

 後は母様だけど、さすがに母様だけを残していくわけにはいかないから、無理矢理でも着いてきてもらうしかない気がするわ。

 あとはできるだけ早く攻略すれば、母様だけじゃなく、エド達の負担も減るでしょう。


 だけど迷宮ダンジョンに潜るのはあたしも初めてだから、けっこう楽しみだわ。

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