謁見

 突然のグランド・クラフターズマスターの来訪は驚いたが、無事に合金の報告はできたし、エドも結婚の報告をすることができた。

 もっとも、結婚の報告はおざなりになった感もあるんだが。

 それでもマリーナはもちろん、フィーナとの結婚も喜ばれてたから、これはこれで良かったんだろう。


 だけどそのグランド・クラフターズマスター、まだクラフターズギルド総本部には戻っていない。

 陛下に献上するために合金を10本ずつぐらい用意してあるんだが、その中の瑠璃色銀ルリイロカネを虎視眈々と狙っていらっしゃる。

 公表するつもりはないから作り方も極秘なんだが、だからこそ使いたいっていうのが言い分だ。

 クラフター、しかもドワーフだから気持ちは分からんでもないんだが、こっちも瑠璃色銀ルリイロカネの在庫を全部献上するから、残ってないんだよな。

 グランド・クラフターズマスターは陛下の兄弟子ってことだから、そっちは頑張って、弟弟子を説得してくださいとしか言えない。


 そんなわけで昼飯も済ませ、陛下との謁見の時間になった。

 普通なら謁見の間、外交使節との謁見や叙勲式とかに用いられる玉座のある広間に通されるんだが、それは明日の式典でってことで、今回は応接室に通されることになっている。

 報告もあるし、何より明日の式典の打ち合わせもあるからってことなんだが、初対面のハンターとそんなとこで会ってもいいんだろうか?

 なんて疑問は、陛下の命を狙ってる場合、俺がいる時点でどこで謁見しても変わらない、って答えが王子様や王女様方から返ってきた。

 いや、そんなことはしませんよ!?


 あとハイクラスはストレージングが使えるから、武器なんかも預かることはないそうだ。

 なにせハイクラスは、予備も含めると10本近くの武器をストレージに突っ込んでるのが普通だから、預かるのは現実的じゃない。

 その代わりロイヤル・オーダーが、がっちりと陛下の身辺を固めてるそうだが。


「よく来てくれた。アミスター王国国王アイヴァー・レイ・アミスターだ。此度のフィールへの侵略行為、よくぞ未然に防いでくれた。国王として礼を言う」


 応接室に入るなり上座で待っていたアイヴァー陛下が、そう述べた。

 さすがに一国の王だから頭を下げるようなことはなかったが、そんなことされたらこっちとしても困る。


「久しいな、エド、マリーナ。ハーピーの娘とも結婚したと聞いたが、まずは祝いの言葉を贈らせてもらおう」

「ありがとうございます、陛下」

「ありがとうございます」

「あ、ありがとうごじゃいましゅ!」


 フィーナは陛下と初対面だから、さっきの王子様王女様方よりガチガチになってるな。


「そして、よく無事にアミスターに辿り着いてくれた。歓迎する、アプリコット夫人、プリムローズ嬢」

「恐れ入ります、陛下」

「受け入れてくださり、心から感謝致します」


 受け入れる用意はあるって言われていたが、実際に聞くまでは安心できないからな。

 さすがにエンシェントフォクシーを敵に回すなんて、そんな無謀なことはしないだろうが。


「では掛けてくれ」

「失礼します」


 この場に招かれたのは俺達ウイング・クレスト、フレデリカ侯爵、アプリコットさん、フィールのオーダーズマスターのレックスさん、イリスさんだが、陛下達の周りはグランド・オーダーズマスターやアソシエイト・オーダーズマスターはもちろん、しっかりとロイヤル・オーダーで固められている。


「ディアノス、そなたも掛けるがよい」

「で、ですが……」

「そなたの息子と娘が掛けているのだ。父親が立ったままでは、彼らも落ち着くまい?」

「恐れ入ります。では、失礼致します」


 陛下の許可が出たので、ディアノスさんも陛下の隣に腰掛ける。

 反対側には、宰相のラライナさんが既に座っている。

 さらに3人のグランドマスターも陛下の近くに腰掛けているが、突然来たグランド・クラフターズマスターの席もあるって、準備が良いのか予想してたのかどっちなんだ?


「話を始める前に、ロイヤル・オーダーに守秘義務を課す。この部屋で話した内容は、一切の他言を禁ずる。此度の報告は、それほど重要度が高いと心得よ。もし他言した者がいた場合、最悪の場合その命を以て償ってもらうこともあり得る。それを忘れるな」


 他言無用は当然だけど、場合によっては命で償えって、それはさすがに重すぎませんかね?

 いや、内容的にはわからんでもないんだけどさ。

 だけどロイヤル・オーダーは、顔色一つ変えずに敬礼してらっしゃる。

 すげえ練度と忠誠心だな。


Side・ユーリアナ


「では最初に、フィール支部オーダーズマスター レックス・フォールハイト、先日アライアンスを行ったと報告を受けたが、その内容を報告せよ」

「報告致します。過日、マナリース殿下の依頼でフィールを訪れたホーリー・グレイブが、マイライト山脈でオーク集落を発見。威力偵察のために攻撃を仕掛けたのですが、そこでG-Iランクモンスター オーク・プリンセスが出現。苦戦するもこれを撃破し、死体を回収致しました。ですがその直後、P-Cランクモンスター オーク・キング、並びにオーク・クイーンの存在を確認したため、即座に撤退し、フィールのハンターズギルドに報告をおこなっています」


 そこまでレックスが報告すると、ロイヤル・オーダーでさえ驚いて声を出しました。

 気持ちはよく分かります。


「馬鹿な……キングとクイーンが同時に、だと?」

「成功したと聞いてはいるが……よくぞ……」

「続けます。そのためハンターズギルドからエンシェントハンター2名、ハイハンター5名が、オーダーズギルドからは私を含むハイオーダー5名を選抜。その際、ユーリアナ殿下のエスコート・オーダーから3名のハイオーダーも参加を希望されたため、総勢15名のアライアンスとなりました。なおアライアンス・リーダーは、規定に従って私が務めさせていただきました」


 ミューズ、リアラ、ダートの3名が参加していなかったら、オーク・クイーン討伐の際に犠牲者が出てたかもしれないという推測は、参加者はもちろん、領代や私達にも共通している意見でしたからね。


「報告から2日後、我々はフィールを出立。現地までの所要時間は7時間強だったため、途中で野営を挟み、目的地のオーク集落へと到達。事前偵察を、エンシェントハンターが契約している従魔ヒポグリフを使って実施しております」

「ヒポグリフだと?」

「はい。そちらのお2人ですが、マイライト山脈でヒポグリフと契約しております。ただ少し特殊な状況だったため、そのヒポグリフは希少種に進化しておりますが」


 私は話に聞いただけですが、本当に特殊な状況だったそうです。

 確かエビル・ドレイクに襲われてるところを助けたそうなのですが、結局従魔にした2匹以外は間に合わなかったと聞いています。


「ヒポグリフの希少種とはな。いや、すまぬ。その話は後程聞くとしよう。続きを」

「はっ。上空からの偵察ではキング、クイーンは確認できませんでしたが、集落の地形は把握することができましたので、それを基に11時30分に突撃を掛けました。その際、クラフターズギルドから提供された新技術の剣を使用したため、かつてない程の戦果を挙げられたことを付け加えさせていただきます」

「その技術は、グランド・クラフターズマスターがここにいることと関係があるわけだな?」

「はっ。後程ご報告させていただきます」

「興味はあるが、今は報告の続きを聞かせてもらおう」


 お父様はPランククラフターですから、興味があるのも無理もありませんね。

 新技術と聞いた瞬間、目の奥が光りましたから。


「集落にいたのはグラン・オーク、ジャイアント・オークですが、それらはクラフターズギルドのおかげで、さほど労せずに相手をすることができております。ですが突入してから10分程で、異常事態が起きました。中央にあった砦から、オーク・プリンス2匹、オーク・プリンセス5匹が現れたのです」

「……は?」

「ま、待ってくれ、オーダーズマスター。確かその集落には、キングとクイーンがいたという話じゃなかったのか?」

「はい、ラインハルト殿下の仰る通りです」

「なのにプリンス2匹にプリンセス5匹って……」


 ハンターでもあるラインハルトお兄様、マナリースお姉様はもちろん、オーダーも絶望的な顔を浮かべています。

 ですが私はもちろん、現場にいたレックスやイリスは、多分微妙な顔をしていると思います。

 だってフレデリカ侯爵やウイング・クレストが、ものすごい微妙な顔をしているのですから。

 大和様とプリムお姉様は、別の意味で微妙な顔をなさっていますが。


「確かに絶望的な状況だが……レックスよ、そちらのイリスもだが、なぜそのような顔をしている?」

「失礼ながら陛下、我々はどのような顔をしているのでしょうか?」

「苦笑というか憐れみというか、そんな感じだな。何があった?」

「それはこれからご報告致しますが、これから私がご報告する内容は、全て偽りのない真実にございます。もし疑われるようでしたら、こちらにいるイリス共々、ヒアリングによる尋問を受けることも辞しません」


 レックスもイリスも、ヒアリングでよければ、いつでも、いくらでも受け付けると明言していましたからね。

 それぐらいの覚悟がないと、このような無礼とも受け取られかねない報告はできません、とも言っていましたが、そんな覚悟が必要な報告というのもすごい話です。


「待てレックス。意味がわからんぞ。ヒアリングによる尋問など穏やかではないが、何故そんなことを言い出すのだ?」


 たまらずアソシエイト・オーダーズマスターのディアノスが口を挟みますが、お父様も驚いてるようで止めようとはされていません。

 オーダーがヒアリングを受けてもいいなどと宣言することは、余程の事態が起きてもあり得ないのですから。


「それほどまでに、信じられない内容なのです。私も報告を受けた時は、自分の正気を疑いました」

「フレデリカ侯爵までそんなことを言うのか……」

「なんか、聞くのが怖くなってきたんだけど……」

「実際、そんな内容ですよ、お兄様、お姉様」


 私も報告の内容は全て知っていますから、全てを諦めています。

 なんでしょうね、今なら悟りぐらい開けてしまいそうな気がしてきます。


「……わかった。レックス、頼む」

「はっ。オーク・プリンス、オーク・プリンセスですが、そこにいらっしゃるエンシェントハンターの2名が空から強襲をかけ、炎と風の結界魔法を使い、瞬時に倒してしまったのです。尚お2人の従魔ヒポグリフは、我々の上空から支援攻撃を行ってくれていたため、彼らはヒポグリフには乗っておりません」

「待て待て待て!異常種が7匹だぞ!?それを一瞬で倒した?炎と風の結界魔法を使って?本気で言ってるのか?」

「その通りです、グランド・オーダーズマスター」


 その瞬間、大和様とプリムお姉様に、信じられないようなものを見る視線が突き刺さりました。

 なんで、という顔をされていますけど、これが普通の反応ですよ?


「異常種7匹を一瞬でって……しかも空から?」

「確かにこれは、正気を疑われても仕方がないな……」

「現場にいた我々も、信じられませんでした」

「私は何が起きたのか、最初は理解できませんでした」

「でしょうね……」

「驚いてる所申し訳ありませんが、まだ報告は残っています」


 レックスが無情にもそう告げると、お父様をはじめとして、全員の顔が引き攣っていきます。


「ま、まだあるの?」

「はっきり申しまして、この程度はまだ序の口です」

「申し訳ありませんが、フィールの者ならば、この程度では動じません」


 レックスの言う通り、こんなのはまだ序の口ですし、イリスの言うようにフィールの人達には、この程度は今更です。

 それどころか、やってしまったのが大和様とプリムお姉様と判明した瞬間、即座に納得してしまう程ですから。


「あなた達、いったいフィールで何してたの?」


 お姉様の疑問が、全員の疑惑の視線とともに、再び大和様とプリムお姉様に突き刺さっています。

 そう言いたくなるのが普通ですよね。


「これほどの報告で序の口か……。聞きたくない気もするが、そういうわけにはいかんか」

「覚悟を決めましょう、父上」

「そうだな。続きを頼む」

「はっ。その後、彼らはそれぞれが外周部に沿って飛び、オーク達の討伐を続けました。我々は彼らが打ち漏らした個体の相手が精一杯でしたが、それでも30分もせず、目に見える範囲の一掃に成功しております。ですが肝心のオーク・キング、オーク・クイーンの姿が見えなかったため、我々は一塊となって、集落の奥へ進みました」


 オーク達を倒し続けてれば、どちらかは出てくると思われていた、と報告されていますし、私達もそのように予想していたんです。

 その予想は、最悪の形で外れてしまいましたが。


「最奥にあった砦の奥に、大きな洞窟を発見。その中にいると判断した我々は、木材を洞窟に投げ込み、火を付け、風属性魔法ウインドマジックで煙を送り込むことで、オークを燻り出すことにしました。そして約5分後、目論見通りオーク達は出てきました。内訳はグラン・オーク8匹、ジャイアント・オーク3匹、オーク・キング2匹、オーク・クイーン3匹、オーク・エンペラー1匹、オーク・エンプレス1匹です」

「……すまんがレックス、もう一度内訳を説明してくれんか?」


 ご自分の耳がおかしくなったのかと思うお父様。

 ご安心ください、お体は健康そのものですから。


「はっ。内訳はグラン・オーク8匹、ジャイアント・オーク3匹、オーク・キング2匹、オーク・クイーン3匹、オーク・エンペラー1匹、オーク・エンプレス1匹です」


 突然何かが倒れたような音が聞こえたと思うと、宰相のラライナが倒れていました。

 それだけじゃなく、グランド・クラフターズマスターの奥様の1人、エドワードさんの実のお母様でフェアリーのエアリス様も倒れてらっしゃいますね。

 私も倒れる寸前でしたし、フレデリカ侯爵は実際に倒れてしまいましたから、お気持ちは心から分かります。


「な、何よ、それ……」

「なんで……生きてるんだ?」


 お兄様の言葉通りの視線が、レックス達に向けられました。

 相手が終焉種ともなると、生還者すら稀です。

 この場にいるロイヤル・オーダーの中にもアライアンスへの参加経験者はいますから、いかに今回のアライアンスが絶望的だったか、イヤでも理解できてしまっているんです。


「正直に申し上げまして、私も生きて帰って来れるとは思いませんでした」

「私も同様です。心の中で夫や同妻に、フィールに帰れないことを詫びたぐらいです」


 同妻というのは、同じ夫を持つ妻のことです。

 実際イリスだけではなくエレナも同じことをしていたそうですし、カルディナなんてフィールに残してきた娘さんや生まれたばかりのお孫さんの身を案じながら、最期の特攻を仕掛けようとすら思っていたとか。


「それは……そうでしょう……」

「だが君達は、無事に帰ってきている。いったい何があったんだ?」

「はい。我々も逃げられないと悟ったため、またフィールへの危険を少しでも排除するため、戦う覚悟を決めました。ですがそこで大和殿から提案があり、我々はオーク・クイーンの内1匹を受け持つことになったのです」

「クイーン1匹だけ?いくら2人がエンシェントハンターだとしても、さすがにそれは戦力を偏らせすぎじゃない?」

「普通であれば、マナリース殿下の仰る通りです。ですが彼らには、そんな常識は通用しません」

「だ、断言したわね……」


 実際、レックスの言う通りですから。


「切り札を使うとのことでしたが、驚いたことに大和殿はオーク・エンペラーに、プリムローズ様はオーク・エンプレスに向かっていきました。途中にいたグラン・オーク、ジャイアント・オーク、オーク・キング、オーク・クイーンは、すれ違いざまに倒されています」

「待ってくれ。一体何を言っているんだ?」

「意味が解らんぞ」


 そう思うのも、無理もありません。

 現場で直接見ていても、意味が解らなかったと報告されているぐらいですから。


「お気持ちはよく解りますが、言葉通りです。お2人がエンペラー、エンプレスに向かう際、それらの間を駆け抜けたのですが、気が付いたらP-Cランクモンスターのキングとクイーンが、グラン・オークやジャイアント・オークと同じように絶命していたのです」


 何度目かも分かりませんが、人外の者を見る目が大和様とプリムお姉様に突き刺さりました。

 この部分は、私達も未だによく理解できていませんからね。


「その後、我々は残ったオーク・クイーンとの戦闘に突入しました」


 ホーリー・グレイブとオーダーによるオーク・クイーン討伐戦は、フィールのお披露目でも大盛り上がりでした。

 臨場感もありましたし、1人1人が自分のするべきことをしっかりと理解し、連携し、そしてたった13人で、ついにはオーク・クイーンの討伐を成功させたのですから、盛り上がらないわけがありません。

 怪我や装備の破損なども、現実味があって良かったですね。


「なるほど、オーダー、そしてホーリー・グレイブによるオーク・クイーン討伐は、新技術による剣が大きな役割を果たしていたのか」

「はっ。本音を申せば盾も欲しかったところですが、そこまで贅沢は申せませんでした」

「そなたのシールディングによる魔力疲労、そしてクイーンの攻撃に耐えきれず破損か。だが結果から見れば、その程度で済んだのは僥倖だな」

「ですな。ミューズをはじめ、ほとんどの者が怪我を負ったとのことですが、最も重い怪我が肋骨骨折とのことですから、盾の破損も含め、その程度の被害でP-Cランクモンスターの討伐を成功させたことは奇跡に近い」


 それは実際に戦った者達が、一番そう思っています。

 最後はイリスが心臓を突き、レックスが首を刎ねたそうですが、誰か1人が欠けただけでも、別の結果になっていたことは想像に難くありません。


「すごく聞き応えがあったんだけど、肝心のエンペラーとエンプレスはどうなったの?あなた達が満身創痍になってたってことは、戦力にならなかったってことなんでしょう?」


 お姉様の仰る通り、オーダーもホーリー・グレイブも、クイーンとの戦いで全てを出し切っていたため、あれ以上の継戦は不可能でした。

 オークを全て倒し終わった後だったことは、アライアンスとしても幸運だったと口々に言っていましたから。


「エンペラーとエンプレスですが、私達はクイーンと戦っていたため、全てを見ていたわけではありません。ですが最期は目撃していますので、報告はそこからとなります」


 オーク・クイーンと戦っていたのですから、他のことを気に掛ける余裕がないのも当然です。


「それは仕方あるまい。だが最期とは……まさか彼らは、終焉種すら倒したというのか?」

「はっ。彼らはそれぞれが単独で、オーク・エンペラーとオーク・エンプレスを倒しております。オーク・エンペラーは大和殿が、方法は不明ですが腕も上がらないほどまでに弱らせ首を刎ね、オーク・エンプレスはプリムローズ嬢が自身を炎で包み込み、体ごと貫いております」


 皆様、絶句していらっしゃいますね。

 終焉種なんて一度も討伐されたことはないというのに、それを討伐成功、しかも単独でなど、常識知らずや常識外れなどではなく、頭の中身を疑われても文句の言えない内容です。

 実際、この報告をしているレックスも、ヒアリングを受けることも含め、その程度の覚悟は決めているのですから。


「追記事項としまして、彼らはエンペラーとエンプレスを、キングとクイーンのWランクだと判断していました。そのため戦っても何とかなると判断したそうです」


 終焉種はO-Aランクですが、WランクだったとしてもP-Wランク以上になるのですから、単独で倒そうなどと考えるハンターやオーダーは皆無、絶無、存在すらしません。

 バラさないでという顔をしていますけど、エンペラーとエンプレスに攻撃を仕掛けた理由の説明は必要なんですから、これは仕方ありませんよ?

 私達だって、そんな理由で攻撃を仕掛けたなんて、露程も思っていなかったのですから。


「フィールでのお披露目ですが、様々な問題を含むと判断された領代の指示により、終焉種、異常種の存在は伏せられ、キングとクイーンも1匹ずつとなりました。クイーンは我々が、キングはお2人が倒したとして説明してあります」


 2人の戦果からしたら、控えめも良いところです。

 簡単に倒してしまったキングを、お披露目のために戦いの内容を考え直したのですから。

 それでもたった2人でP-Cランクモンスターを倒したことになっていますから、常識外れには間違いありません。

 フィールの人達は、全く驚いてくれませんでしたが。

 今までのことを考えると、当然ですけどね。

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